95. お出かけしよっかな!
何とか無事に我が家にたどり着いて。
「あ、みんなただいまー」
「ただいま」
もちろん出迎えてくれるのは……
「キュッ! キュイッ!」 「キュアーッ!」 「クゥー!」
エメ、ムク、ロラです。
今日も元気にお庭で遊んでいたようですねー。
なんだかすっかり仲良しで、エメも訓練についてくるより、遊んでる方がいいみたいなんですよね。
まぁ、エメは武器持てませんからねー。ムクやロラも運動しなきゃなんで、ちょうどいいんですよね。
みんなまだ遊んでるみたいだし。
さてさて。
お風呂の準備しよーっと。
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リトとお風呂の準備をして、ちゃぷっと浸かります。
お湯はリトがやってくれるので、私はお掃除とお花の準備が担当なのです。
リトの象言法は、やっぱりすごいですよねー。お湯が一瞬でちゃぷんなんですよ。
毎日大助かりですね。
今日もヒノキみたいな匂いとお花の匂いがスッキリ爽やかで、とっても気持ちいいですね!
ん~~~! と、湯船で伸びをひとつ。訓練で張った身体も、ふやーっとほぐれていくようです。
肺の中までスッキリ爽やかに洗われた気分ですねー。朝の空気も好きですけど、このお風呂の香りも最高です!
今日のお花の香りは、ちょっと柑橘系みたいな感じで、リラックスしつつもやる気も回復ですね!
「ユウナ。今日はどっちの方向いこっか?」
リトもちょっと疲れが取れてきたのか、やわらかい笑顔でした。
リトってどうしてこんなに可愛いんでしょうか。今日も私は幸せです。
「んー。どうしよっかなー。道具があったら釣りとかしてみたいよねー」
「あ、釣りかぁー。やったことないね」
リトは湯船に浸かりながら、ちょっと見上げながら話していました。
リトはちっちゃくて細くて、肌も白くて、とてもきれいで可愛らしい体つきをしています。
とても守ってあげたくなる感じなのです。
でも実際は、毎日いろいろと助けてもらってるんですよね。
そんなリトがあんまり無理のない範囲で、探検……となると。
釣りなんていいかなぁーと思ったんですけど……
ウチには釣り道具がないんですよねー。
狩りはあんまり勝手に出来ないんですけど、釣りは趣味みたいな感じでやるひともいるんですよねー。
そんなわけで釣りはまた今度ですね。ブロックルさんに釣り道具の作り方をきいてみよっかなぁ……。
「でもまだ道具ないからねー。今日はいままで行ったことがないほう行こっかー」
「んー行ったことない……門の逆方向だね」
ということで、探検らしく、行ったことのないほうへ行ってみることにします!
お風呂を上がったら、ご飯を食べてお出かけですよ!
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そんなわけで。
美味しいご飯も食べましたので。
お出かけしたいと思います!
アルヴ国のミュルク村でも、昼からお出かけって結構行ってましたけど、森の中に行くって感じでした。
スヴァルト国は、草原が大半らしいので、大きな森は少し遠いんですよね。
今度遠出ができそうな日は、久しぶりに森林浴もいいかもですね!
スヴァルトの森には何があるのかなー? あのグミみたいな木の実とかあるかなぁ? リトが好きなんだよね。
「ユウナ。ちょっと遅くなってもいいように、なにか用意してく?」
「ん? あ、お弁当?」
「うん。お芋とかならバッグに入れるだけだし……」
「あ、そうだね! もってこっか。エメたちも食べるかもだしねー」
「うん。むしろあの子たちのというか……ね。」
リトはクスクス笑いながら、バッグにお芋を入れていました。
あのお芋、焼くとクロワッサンみたいになるお芋で、アルヴ国でもよく食べたんですけど、スヴァルトでも一般的みたいで、けっこう頻繁に食卓に並ぶのです。
お庭に出ると……
「キュッ!」 「キュアーッ!」 「クエッ!」
エメとムクとロラは、なんだか整列していました。
今日は任務の日じゃないけどな……? なんだかやる気のようでした。
「ん。いいこだねー。」 「キュアッ! クゥー……」
ムクを撫でてあげたら、喜んだみたいでした。
「あ、ロラ、まってるんだ……ふふ」
「クエッ!」
リトもロラを撫でていました。
「キュッ! キュイッ!」
エメも撫でて欲しかったのか、ぴょんぴょんしていたので、ひょいっと抱き上げていいこいいこすると……
「キュッ! キュイーッ!」
と、うれしそうに鳴いていたので、たぶん満足したとおもいます。
「じゃ、いこっかー」
そんなこんなで、いざ出発なのです!
一応街の外に出るまでは、ルク騎乗は軍の任務でもない限りは、あんまり好ましく思われないので、みんなでてくてくあるくのです。
ルクは速いので、ぶつかると危ないですからね。
我が家はスヴァルト王都の西区にあります。門があるのは、訓練場とかがある南区です。
ゆっくり歩くと30分ぐらいですね。けっこう広い街なので、この星では都会って感じなんだろうなぁ。
アルヴの王館のあるヴァルの地とか、ふつうに森だし。
ミュルク村ももちろん森の中の村だったし。
こんな感じの街並み……は、たぶんアルヴ国にはないとおもいます。
都会って言っても、和風建築ですけど。実物はしらないですけど、江戸の町ってこんなふうだったのかなー? という感じです。
すごくきれいに整えられてるから、これはこれで私は大好きです。
街の真ん中には、十字の大きな道があります。東西の区画を繋ぎつつ、北側の王城や南側の門に続く道ですね。
訓練に行くときには必ず通る道です。今日は2度目ですね!
十字の交差点を目指して……とことこ歩いて、やっと交差点というところで――
「ほあー! すっごいのだー!」
「お待ちください!」
なんて声が、北側から聞こえて――
「あ」 「え?」
振り向いた時には、すぐそばに小さい子がいて。
あ、どうしよ――と、思った時には、つい……スイッと避けてしまっていました。
――ズザァーッ!
そして、その小さい子は、走る勢いのまま盛大にヘッドスライディングをしていました。
あああ、ついクセで避けちゃったぁー!




