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91. 会食は美味しそうなんですけどね



 新しく運ばれてきた鮮魚の料理は、お刺身に美味しいソースがかかってる料理ですね!


 あれに似た料理がパーティにあったんですけど、美味しかったんですよねぇ……。


 

 「して、今後あのレーナ妃をどうしていくつもりなのだ?」


 ラーズ王がお箸でお魚を持ち上げながら、落ち着いた感じの声で聞きました。


 

 「そうですな……本日の失態であれば……追放刑が妥当というところではあるが……」


 渋い顔のままお魚をフォークで口に運ぶお父さんは、やっぱり歯切れが悪い感じの言葉ですね。


 でも、あのお魚は歯がなくても大丈夫なくらいのとろけ具合だと思います!


 

 「結局、それも国を割ることになるでしょうな……」


 「ふむ。だが、世継ぎが誕生したのであろう? それもあの王妃の子だ。時間稼ぎにはちょうど良いのではないか?」


 ラーズ王の言葉に、お父さんは少し考えこんだようでした。



 「……確かに、そうかもしれませんな。ヴェイグ。」


 「はっ」


 「兵団の分裂状態を、今一度探ってくれ。」


 「はっ」


 何かを思いついたのか、ヴェイグさんに短く指示をしていました。



 「フォルセ様。マリーカとユウナ姫の件はよろしいので?」


 ヴェイグさんは、なんか余計なことを言い出したようです。


 「捜索隊を組織する余裕はあるまいよ。」


 「それは、確かにそうなのですが……マリーカのあの時の表情、並々ならぬ決意を感じました。おそらくは、ルーナ様とユウナ姫をお戻しにならねば、このまま帰らぬかと思います。せっかくの外交の場なのですから、正式にスヴァルト国への共同捜索依頼を要請されてはと存じます。」


 ヴェイグさんは、やっぱり余計なことを言っているようです。探さないでください。私は元気です。


 ……ああ、でもお母さんたちは……お母さんは大丈夫だろうけど、かあさまはどうなんだろう……。探してもらった方がいいのかなぁ〜……?

 

 でも、国がどうとかは嫌だなぁ……。


 「ふむ。しかし、時期尚早だ。レーナのあの態度が反意なのかどうか……そして、派閥を抑え、国を整えてからであろうよ。」


 「はっ。差し出がましいことを申し上げました。」


 「いや、よい。」



 「はっはっ。この場でずいぶんと内情を明かしてしまうものよな。」


 ラーズ王が2人のやり取りをみて、そんなことを言って笑いました。



 「ははは。今更でしょう。この辺りのことなど、ラーズ王のことだ。把握ぐらいされておるのでしょう。」


 お父さんも、なんだか乾いた笑いでした。



 「うむ。アルヴからの移民もおる故な。ある程度は把握しておったわ。はっはっはっ!」


 今度はラーズ王らしい感じの笑い声でした。移民、ナッビさんのことですかね。



 「どういうことですかな?」


 お父さんが、ピクリと反応していました。たぶん、移民にひっかかったんでしょうねぇ。



 「肉料理にございます」


 そして運ばれてきました肉料理。


 ……あれは!


 鹿のステーキみたいなやつだ!


 半生みたいに赤みが残った仕上がりなんですけど、柔らかくって、するっと入るんですけど、なんだか濃厚な美味しさがあるんですよ!


 香草で仕上げられてるからスパイシーで、ものすごく食欲をそそるし、とんでもないのです! 私はパーティーで一切れだけ食べたのです!



 「うむ。せっかくだ。種明かしでもしようか。」


 心なしかラーズ王の声が弾んでいるようでした。お肉好きなのかな? それとも種明かしにうきうきしてるのかなぁ?



 「先日、我が国で野盗どもを捕らえたのだがな。その中にアルヴの者が混ざっておった。尋問したところ、ルーナ妃付きの兵だったとの情報を得たのだ。粛清されかけて逃げてきたそうだぞ。それで、そやつの知りうる情報を全て吐いてもらったのだ。」


 「……な、なんと!レーナからはルーナ付き護衛兵は暇を出した、中にはルーナに従って行った者もおると聞いておったが……まさか……そのようなことが……!」



 「はっはっは。フォルセ王よ。自国を護り抜くには、情報は重要だぞ。」


 「くっ……。ご忠告、痛み入ります。……ヴェイグ。把握しておったのか?」


 「いえ……申し訳ございません。おそらく、ファーブニル辺りが中心となって秘密裏に遂行したのでしょう。私も、おそらくミーミルにも気付かれまいとしたのでは、と……」


 「……ずいぶんと好き放題させてしまったようだ。」


 お父さんは悔しそうに顔を歪めていました。



 「そもそも、ルーナ妃を追放したからと、護衛にまで暇を出すとはおかしかろう。兵力が減るのだからな。」


 「あてもないルーナに従っていったのであれば、それはそれでよいかと思いましてな……」


 

 「ならば自身で差配すべきであろう。」

 

 「……全くもって。不甲斐ない。」


 お父さんは、やっぱり悔しそうに、テーブルの上でナイフとフォークを握りしめていました。


 

 「穀料理にございます」


 あれは……?!


 お米みたいな感じの穀物だ!それをリゾットみたいにして、両面を焦がした……ものすごくクリーミーで香ばしい料理ですね……!あれも美味しかったんだよね……。



 「ふむ。国が割れる、ではなかったか。もう既に割れておるようだな。」


 サクッ、と音を立て、パリパリのリゾットを切りながら、ラーズ王はそう言いました。



 「……返す言葉もございませんな……」


 そしてお父さんもリゾットにパリッとナイフを入れました。



 「して、今一度我が国の考えを伝えよう。マリーカ殿、ユウナ姫、そしてルーナ妃。もし我が国で暮らしたいとの要望で訪れるならば、我が国はそれを尊重し、自国民として受け入れるだろう。と、いうことだ。」


 「いや、しかし……それは……」



 「その際、樹への手出しは無用に願うぞ?」


 「希望の樹ですか?それは祖への冒涜となる行為……極刑を超えるもの。反乱を起こし国を揺らすなどの余程の場合でもない限りは……」


 「フォルセ王よ。気付かぬか?」


 「……そういうことですか。」


 どういうことですか?


 私ちょっと分かってませんけど……?


 2人はなんだか、真剣なトーンでアイコンタクトでもしているようです。



 「デザートにございます」


 あ、あれは……!


 平原と森と畑の果物盛り合わせ!


 そこに特製の爽やかな甘さのソースと、クリーミーなソースをかけた、スペシャルなデザートだ!


 せ……せめてひとくち……。


 

 それにしても美味しそうな料理ばかりでしたけど……


 お父さんはあんまりいい顔してなかったな。

 

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