表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/101

87. 父きたる


 私のこの世界での実のお父さん、フォルセ・アルヴ・ヴァルコイネン。アルヴ国の王様です。


 そのフォルセ王がこの国に来るということで、楯部隊長ヴィスナさんと私が王城に呼ばれて、お仕事の依頼を受けることになったのです。


 何をしに来るのかなぁという感じなのですが、時々国内で大きなことがあるとお知らせがてら、交流しているそうです。前回は、私の実のお母さんとの結婚報告だったそうです。

 

 ラーズ王の予想としては、新王妃の挨拶と、生まれた子のお披露目ではないか、とのことでした。


 もし私が王館を追い出されていなかったら、そういう形でこのお城にきていたのかもしれませんね。


 そう考えると、なんだか不思議ですねぇ。運命とでもいうのかな?


 障害持ちの残念エルフとして生まれちゃったから、色々あったけど……


 でも、お(マリーカ)さんとのミュルク村での暮らしも幸せだったし、リトとも出会えたわけだし、ナイだって、エメだって、それにスヴァルト国のみんなだって大好きだし、むしろよかったかもなぁって思いますね。


 

 そういえば、生まれた子? って、一応妹ってことになるのかな? 私、前世でお兄ちゃんはいたけど、弟や妹はいなかったなぁ。どんな感じなんだろ? と、言っても……関わることはないと思いますけどね!


 そもそも、新王妃は私の生命を狙ってるみたいだし、近寄らない方が絶対いいと思います!




そうそう。警護の計画に関しては、あまり大人数は会見場に配置出来ないそうで、ヴィスナさんと副長のベローナさんだけがラーズ王の横に立つみたいです。


私は、いくつかある隠し間で様子を見ていたらいいそうです。ベテランの隊員さんたちも何人か、別の隠し間にいるそうでが、今回はリトはお休みなのです。


というか、外交上不利になることは避けたいから、私も前に出ないようにと言われています。リトもアルヴ族なので、そういうことかもしれませんね。


 

私が話を聞けるようにする、というのは恩賞のひとつだとラーズ王は言っていました。だったらリトが一緒でもいい気がするんだけどなぁー。変なところでケチなんだから。


 

「ユウナ……ほんとに大丈夫?」


「大丈夫だよ! 隠れて話聞いてるだけみたいだし!」


当日の朝、リトはすごく心配そうにしていました。実際に危ない目にあったし、あの時のこと思い出してるのかな……?


リトが可愛いので、ギュッとしておきました。



――――

――


そんなわけで、今日の私は正装です。


ハーナルさんの防具、ブロックルさんの楯、ダーインスレイヴと、抜かりはないです! 気合い十分です!


と、言っても、ファーヴニル副長? だっけ? あんなふうなのが相手だと、どうにもならないと思いますけどね……。


さすがに外交の場所にあんな凶暴なひとは来ない……はず。え……? 来ない……よね?


「んじゃユウナ姫は……この隠し間で待機な? いいかい? 絶対に出てきたらダメだかんね?」


「はーい!」


ヴィスナさんは、今日会った時からずーーっと出たらダメ出たらダメって言ってました。私、別にお父さんに会いたくないけどな……?


お父さーん! 会いたかったよー! とはならないけどな……。前世のお父さんなら会いたいけど。



 


 そんなわけで。ヴィスナさんに指示された隠し間に入ります。


ひとりでいるにはわりと広いですね。多分武器を持ってる前提なんだろうなー。


今日は、覗き穴の前に、ちょうどいい高さの椅子があります。背もたれのないタイプですね。


 ここに腰を掛けると、ちょうど向こう側からは見えないぐらいの穴の隙間から、うまいぐあいに覗くことができるというスンポーなのです!


 スパイごっこみたいですね! といっても、任務なのでしっかりやらないとなんですけどね。


 たしか、まずは会談をしてから、会食という予定だったはずです。いつ始まるのかなぁー。




――コンコンコン


 部屋をじーっと見ていたら、ノックが響きました。


 和風のお城ですが、ここの部屋は少し洋風です。扉も開き戸ですね。

 

 

 「ラーズ王。アルヴ国ご一行、ご到着されました。お通しいたしますか?」


 案内係のひとが入ってきました。


 ラーズ王は、ヴィスナさんとベローナさんを交互に見て返事をしました。

 

 「うむ。通せ。」


 「承知いたしました。」

 

 ささっと音もなく案内係のひとは部屋を出て行きました。


 やはりスヴァルト国です、ただものではない感じですね……。



 しばらくすると。



――コンコンコン



 「ラーズ王。アルヴ国ご一行、お連れいたしました。」


 「うむ。ご苦労。」


 ガチャリと重々しい音を立てながら扉が開かれました。


 「ラーズ王。相変わらず壮健そうだ。」


 お父さん……ああ、そうだ、あんな感じの顔だったかも? でも笑顔なんて見たことなかったな……。あんな風に笑うんだ……?


 「失礼いたしますわ、スヴァルトの君。」


 そして、隣にいる女のひとが、多分新王妃……私を殺そうとしたひと……。


 あんな感じの人なんだぁ……。すっごい気の強そうな顔ですね。美形だけど、悪そうな感じです。


 あと、なんかギラギラしていますね。グニパの宝飾かなぁ? たーくさんつけてます。あんなにつけてたら、可愛くないですね。もっとこう、バランスよく色の配置とか……した方がいいのでは……?


 なんだか、もったいないですねぇ。

 

 「うむ、遠路ご足労であったな、フォルセ王よ。して、ルーナ王妃の姿が見えぬようだが……?」


 ラーズ王、分かっててあんなこと言ってますね……。ここからだと顔は見えないけど、にやーっとしてるんだろうなぁー。


 「ルーナか……。今日はその件もある。」


 ラーズ王の言葉に、お父さんは一瞬、少しだけ苦々しい顔をしました。


 そして、隣の新王妃は明らかにピクピクしていますね。そしてプルプルしています。

 

 「そうか。まぁ、座ってくれ。」


 そんな2人に、ラーズ王は落ち着いたトーンで声を掛けました。


 うーん。やっぱり、ただのおかしな王様じゃないみたいですね。


 これが外交ということなんですかね……? やっぱり私には無理そうですね! 姫じゃなくなってよかったな。

 

 「ああ、失礼するよ。レーナ。」


 「はい。失礼いたしますわ。」


 豪華なソファーに腰を下ろす2人。隣にそれぞれ護衛が立ちました。


 ……ファーブニル副長じゃない!


 よかったぁ~~~。あんなひとがきたら、国がめちゃくちゃになるもんね。

 


 とはいえ、片方の鋭い眼光のひと……かなり強そうですね……。勝てるかな……?


 私、あの王館に3日しかいなかったから、王家まわりのひとたち全然知らないんだよね……。

 

 お母(マリーカ)さんは、昔お供で来たときは、外で待ってたって言ってたっけ。


 ということは、あの護衛の2人……お母さんよりも強いのかな。


 「ふむ。では、先触れにあった挨拶とやらを聞かせてもらおうじゃないか。」


 ラーズ王の言葉で、いよいよ会談が始まるようです……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ