86. お呼び出しは突然に
楯部隊に異動になって、ひと月ほど経った頃でした。
私とヴィスナさんで、なぜか王城に呼ばれたのです。そんなわけで今、ヴィスナさんと2人てくてくと歩いているのです。
訓練場から出て、お城の方向に進むと、黒っぽい瓦屋根の建物が次第に立派な姿になっていきます。でも、我が家のハイテクさは負けていませんよ!
そんなことよりも、です。隊長であるヴィスナさんはまだしも、なんで私まで呼ばれたんですかね……?
「ヴィスナさーん。なんで私まで王城に行くんですかー?」
そんなお城へ向かう途上。ヴィスナさんに事情を聞いてみました。
「さぁなぁ……? アタシだってこんな急に呼ばれることなんか珍しいからなぁ……」
でも、ヴィスナさんも用件までは知らなかったみたいです。なんなんですかねぇ?
私とヴィスナさんが揃ってだなんて……
うーん。
「あ! もしかして王子をやっつけちゃった件ですかね?」
私もヴィスナさんもリーグ王子をやっつけちゃったことがありますからね。それかもしれません。あんな感じでも王子だし……ついに私も怒られちゃうのかも。
「いや、あんな事で呼び出される事なんかないよ。決闘だしね。弱い方が悪い。」
「あ、そうなんですね……」
ヴィスナさんはすごく意外そうな顔でそんなふうに言っていました。あれは、"あんなこと"らしいです。
やっぱりスヴァルトって変わってますよねぇ。脳筋っていうんでしたっけ。力こそパワーみたいな。
どちらかというとたぶん私もそうなので、居心地がいいのかもしれませんねー。
うーん。でも、王家の感じはすごく嫌な感じだったしなぁ……? たまたま軍のひとたちが優しかっただけかも?
「まぁ、全然わかんないけどさ。王が来いって言うなら行くしかないしね。ほんと、なんなんだろなぁ? ゲイル部隊に続いて、スレイフ部隊も出動不可とかにでもなったのか? ウチらもついに哨戒任務か……? だったらチャンスなんだが……」
ヴィスナさんは小声でブツブツそんなことを言っていました。
楯部隊、扱いがあんまりよくないそうだから、がんばってる、ちゃんとやれるって、認めて欲しいのかもしれませんね。
でも、ひと月すごした楯部隊……みなさんとても努力家って感じで、 ゲイル部隊やスレイフ部隊に全然負けてない訓練だったし、ホント……なんでそんなにバカにされたり見下されたりするのか、全然わかりません。
ちなみにですね! 私の成果はというと、流す技術に関してはもうほぼマスターしたと言っても過言ではないかなって!
と、いうのも……うすうす感じていた通り、流す所作に関しては、やわらか格闘術の動きに楯を入れるだけだった……というか、そんな感じだったので、すぐに慣れることができたんです。
なので、そんなにたいしたことではないんですけどね……(笑)
「さぁてと。どんな話かねぇ。ユウナ姫。今日は謁見の間じゃなくて執務室らしいからさ。こっちだよ。」
「あ、はい。」
そうして案内してくれるヴィスナさんについていきました。
――――
――
コンコンコンと、扉をノックするヴィスナさん。
「王よ。お呼び立てと聞き、馳せ参じました。」
なんだか言い回しが普段と違ってかっこいいのです。
「来たか。入るがよい。」
「はっ。失礼いたします。」 「失礼しまーす……。」
ヴィスナさんの後についてソロリと部屋に入りました。
パーティの日に呼び出された部屋ですね、ここ。
ラーズ王は、大きなソファにどっかりと座っていました。いつもながら威圧感のあるひとです。
「うむ。2人とも来たか。まぁ、そこに座るがいい。」
「はっ。」 「はい。」
ラーズ王に促されて座る私たち。それを見届けた頃、王は口を開きました。
「……さて、今日は何故呼ばれたか、分かるか?」
何と言うか、真意の分からない顔で、あまり抑揚のない声でそんなふうに聞かれました。
うーん。ほんとに思い当たることがないんだけどな……?
ちらっとヴィスナさんを見てみても、悩んでいるみたいで額に汗がにじんでいました。
「……分からぬか?」
少しジトっとした感じで、ラーズ王はヴィスナさんと私を交互に見やりました。
「はっ。私にはわかりかねます。ご説明願えますでしょうか。」
ヴィスナさんは少し緊張した感じの声で答えていました。
ラーズ王は、じぃーっと私たちを見ています。
何なんでしょうか……? クイズ番組かなにかですかね……?
なんか……ラーズ王……めちゃくちゃ溜めてませんか……? 圧が……
ヴィスナさんがゴクリと喉を鳴らす音が……聞こえました。
そして無言の時間が流れる中……
「……くっ……くははははは!」
とたんに、ラーズ王が爆笑しました。ど、どうしたんでしょうか……? おかしな王様だとは思ってましたけど、そういうおかしいじゃなかったはず……。
「いや、少しからかっただけだ。許せ! はっはっは!」
なんということでしょう! 王様がからかってきました!
ヴィスナさんなんて、すっかり固まってしまいました。
「うむ。お主らのリーグに勝ったという実力を見込んでな、ひとつ仕事を頼もうと思うてな。」
「し、仕事ですか?! 哨戒任務でしょうか?!」
「いや、哨戒ではない。だが……重要な任務だ。」
「重要……ですか?!」
ヴィスナさんは立ち上がりそうな勢いで驚き、そして嬉しそうな顔をしていました。
「ああ、警護任務だ。外交がある。」
「外交? ってまさか……」
「ああ。だからユウナ姫にも来てもらった。」
……私?
「どういうことですか?」
「フォルセ王が来る。せっかくだ。隠れ間で警護がてら聞いておるといい。」
ラーズ王はそう言ってニヤリと不敵に笑いました。
フォルセ王って……あ! お父さんだ!?
どうやら……とんでもないニュースだったみたいです。
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