85. ヴィスナさんの講習
リーグ王子を鮮やかに退けたヴィスナさん。とてもかっこよかったです。
「さぁて。訓練始めっかねぇ!」
ちょっと口の悪い感じも、なんだかかっこよく思えてきますね。真剣な顔も素敵です。
「「はっ!」」
楯隊のみなさんは、とてもキビキビしていました。ささっと隊列を作って、まずは軽い走り込みからみたいですねー。
「ユウナ姫、リト殿、こっちへ。とりあえず最初は説明しようか!」
「「はい!」」
私とリトは初心者なので、ヴィスナさんから直接教えてもらえるみたいです! ありがたいですね!
「さて、じゃあ質問だ。楯って何だと思う?」
ヴィスナさんは、にこーっとしながらそんな風に質問しました。
「んー……」 「……え? 防具なんじゃ……」
「ふふふ……難しいかなぁ?」
私たちが考え込んでいると、ヴィスナさんはニヤニヤとしていました。
むむむ……。さっきのヴィスナさんは……
「攻撃の起点……攻撃への転機?」
「お、さすがユウナ姫! そうなんだよ。どうにもスヴァルトでは分かってもらいにくいんだけどさ。相手の攻撃を防ぐことで、こちらの攻撃を通しやすくすんだよ。当たり前だけどさ、防いでるだけじゃ勝てないだろ? で、受け流して崩して一撃を喰らわせる! って寸法さ!」
ヴィスナさんはニイッと決め顔でした。
でも、とても納得できるお話でした。私のやわらか格闘術……お母さんの教えと同じ感じだし。スキを突く、なければ作る。それを楯を使うかどうかという話なだけとも言えますね。
「元々の楯術は、術と呼べるようなもんでもなかったんだよ。」
「そうなんですか?」
「ああ。矢とか飛び道具とか、言法を防ぐための大楯部隊って感じでさ。攻撃に参加ってふうでもなくってね。まぁ、集団戦の捨て駒みたいな使い方もされてたわけだよ。必要だから居るはずの楯部隊なのによ、そんなのはなぁ……。戦うことは名誉のはずだが、当時の楯部隊には名誉なんてなかった。ただ消耗するだけだった。同じスヴァルトとして、それはナシだろってな。」
集団戦……戦争ってこと……?
「で、色々考えたんだ。その結果生まれたのが、今の楯術さ!」
「ヴィスナさんが創ったんですか?!」
「いんや、さすがにアタシひとりじゃあないよ。もちろん色々と協力、助力はあったさ。んで、この中型楯だ。この構造は、個人戦でも集団戦でも使えるんだよ。」
ほぇー。だからその大きさなんだぁ……。
「今の楯部隊の標準装備はこれに統一してんだ。ばらけて戦う時はさっき見せた通り……。んで、集団戦は、楯を固めるように密集陣形を取るんだ。……んで……」
ヴィスナさんは私たちの楯をまじまじと見ていました。
「2人の楯は……小型の個人用って感じだなぁ」
「あ、わたしのは……こう……」
リトは楯に力を込めたようで、一瞬光った楯が大きくなりました。
「うお?! な、なん……ま、マジか……いや、すごいな……ソレ。」
「精力で起動して大きさが変わるんです。小さいほうが普段は楽なので……」
「そりゃそうだな。んで、ユウナ姫のも大きさが変わるのか?」
「あー……私のは、完全に個人用というか……大きさは変わらないんです。」
「ほぉ? 変わった形してるけど……どう使うんだい?」
私の楯は、楯というよりは小手というか、アームアーマーというか、そんな大きさです。腕に沿って付いていて、緩衝材が入ってて、身体側は逆反りに、反対側はゆったりと湾曲しています。
「えっと、防ぐと弾くと流すをやりやすくしながら、軽さと動きやすさを追求してもらいました!」
なんと言っても、私の一番の得意は"やわらかさ"。柔軟性ですからね! 素早さも攻撃力も回避も、全部やわらかさでがんばってますからね! 動きにくいのはダメなのです。
「ほぉー。なるほどねぇー。で、その中央の出っ張りはなんだい?」
「あ、これは……ギミックですね!」
「ギミック?」
「はい! ブロックルさんが付けてくれました! 武器破壊の装置らしいです!」
「な、なんだってぇ?! ……うーん。なるほどなぁ。あの男ならやりかねんかぁ。」
ヴィスナさんはブツブツとなにかを言っていました。
「んじゃ、ちょっと試してみっか!」
「えっ?」
「ユウナ姫! 剣で攻撃すっからさ、その楯で防いでみて!」
「ええぇ?! は、はい!」
ビュッ! と迫る剣先を、左腕に装着した楯で受け止めるように防ぐと……
――ガッ! バキッ!
楯が衝撃を受けた瞬間に、楯からヒュッとギザギザの金属が数本出てきて、刃を挟み折りました。
「……うぉぉ、マジか! こりゃ……確かに個人用だが、破格の性能だなぁ。流石はブロックル謹製かぁ」
ヴィスナさんはとても感心したような声色でした。
「これって、発動条件はなんだい?」
「強い衝撃を受けた時って感じみたいです。あ、一応起動ボタン的なのもありますけど……」
「うーん。衝撃かぁ……小型楯には向いたギミックだが、中型や大型には向かないか……? 矢を防ぐだけでいちいち反応されてもなぁ……」
ヴィスナさんはまた顎に手を当てながらブツブツと何かを言っていました。
「リト殿のは、精力起動なんだっけ?」
「あ、はい。そうですね。」
「うーん。それじゃスヴァルトで使えるやつはいないしなぁ……」
どうもヴィスナさんは、私たちの楯が気になっているみたいでした。
「あ、そうだ。ユウナ姫。矢なんかはその楯でどう防ぐつもりなんだ?」
「あ、矢ですか? 矢は……」
腰に差してあったダーインスレイヴを抜きます。
「"拡"!」
ダーインスレイヴは、私の声に反応して形を変える武器なので、大きい楯代わりにもなるのです!
「あー、そいつが噂の何にでもなる武器かぁ……なるほどぉ……」
ヴィスナさんは少しぽかーんとしていました。そういう感じだと勇ましさというより、可愛らしい感じですね!
「うん、まあ、2人の装備については把握した。じゃ、訓練に移ろうかね!」
「「はい!」」
こうして私たちの新しい訓練が始まりました。しっかりがんばらないとね!
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