リーグ王子vsヴィスナさん
訓練場の真ん中で、どんと胸を張るヴィスナさん。
そして、その前には、リーグ王子。
今日はリーグ王子……訓練前に絡んできちゃって、まいたはずがついてきちゃってたみたいで。
こんなことになっちゃったんですよね。
あぁ〜。しっかり眠ってもらってた方がよかったかなぁ……。
でも、極力触りたくないんですよね……。なんだか気持ち悪くて。
「ねぇ……ユウナ。ヴィスナさん大丈夫かな? リーグ王子、大きな斧だけど……」
リトは、少し不安そうな顔をしていました。
「あー。王子、斧なんだよねぇ。楯で防げるかなぁ? うーん。でも、ヴィスナさん隊長なわけだし、多分ヒルドルさんとかカーラさん並に強いんじゃないかな?」
ヴィスナさんの楯は、湾曲してて、それなりの大きさの楯でした。
小型でもなく、大型ほどまでは大きくない感じですね。
どうやって使うんだろ?
「そっか……。そうだよね。ユウナはリーグ王子と決闘してたけど、やっぱり隊長さんたちの方が強かった?」
う……。それはあんまり思い出したくない話……。
「うーん。種類が違うけど……あと、リーグ王子のは思い出したくないんだけど……。技の完成度っていうのかな? リーグ王子は力任せって感じだったけど、やっぱりヒルドルさんもカーラさんもすごかったよ。ものすごい精度。」
「そうなんだ……。ユウナ、よく勝てたね……?」
「うーん。たまたま2人とも、格闘術を知らなかったしね。隙をついて……って感じだよねー。その、高い精度を逆に読んで……みたいな。」
「そっかぁ……」
そもそも私のやわらか格闘術の極意? お母さんからの教えは、そんな感じなので。
「さぁてと! 準備はいいのかい? 色ボケ王子!」
「くっ……貴様! 俺様をバカにしおって……!」
「はははっ! ちょっと前まで"余"とか言ってたくせにさぁ? 俺様ぁ? なんの影響なんだっつの! 俺様……っ! あはは!」
ヴィスナさん……リーグ王子嫌いなのかな? ものすごく煽り散らかしてる……。
それとも作戦かな? わざと怒らせるとかいう作戦。
ちょっと高度だから、私には出来ないと思うけど。そういうことも、出来た方がいいんだろうなぁ……。
「く……こ、この……! 俺様系はモテるのだ!」
王子はそう言い放つと、一気にヴィスナさんに詰め寄り……
「あはは! モテるやつがこんなことしてるかっての!」
――ドォン!
上段から重く鋭い一撃を放ちました。
「はははっ! 甘いんだよぉ! 勘違い色ボケ王子様よぉ!」
でも、ヴィスナさんは、楯を構えてたなぁと思ったら、斧に触れた瞬間、するりと滑らせて……
――ゴッ!
「ぐうっ……?!」
王子の斧が地面に突立ったと同時に、楯で顔面をバコンと叩きました。
なるほど! あれがブロックルさんの言ってた受け流し!
ものすごく流麗な動きでした。
ヴィスナさんの豪快な性格だと、受け止める型なのかと思ってましたけど、違ったみたいです。
全く無駄のない、洗練された美しい動きです!
「うおおおおぉ!」
――ブォン!
再び王子は、刺さった斧を勢いよく振り上げて逆袈裟の軌道を描いた……はずなんでしょうが。
――カシュッ!
「……んなっ?!」
ヴィスナさんの楯に阻まれて、軌道をそらされてしまいます。
――バカァン!
「ぐぉっ……」
「あっははは! 頭がお悪いご様子だからねぇ……叩いて直さないとねー!」
ヴィスナさんの楯が、王子の脳天を捉えました。
……叩いて直すって、昭和のテレビみたい。
あ、でも、テレビないし、鍛冶屋さんかな?
んー。
でもそれなら、もう王子は溶かした方が早い気がしますねぇ。
素材に戻して打ち直しですね!
「くそ……くそ……くそがぁ! 楯なぞは臆病者の象徴! 俺様が負けるはずが……! ないっ!」
――ブォン!!
王子の渾身の一振。
――カシュッ……
でも、ヴィスナさんの楯に触れると、王子の斧は空を斬り、宙に舞いました。
――バゴッ! ドガッ! ゴスッ!
「ぐっ……がっ……こっ……んのっ……」
ヴィスナさんは、容赦なく王子を楯で殴りつけています。
「どーかなー? ちょっとは直ってきたかぁ? んー……もっとかぁー? よっ! ほい! そら! どうだー?」
なんだか、ヴィスナさん……すごく楽しそうです。
「……ぐっ……な……なにをするか?!」
「あれー? おかしいなー? もっとかー。ほいっ!」
――ガッ!
ひときわ鈍〜い音が響いたなぁーと思ったら、王子はふらふらと1、2歩あるいて、バッタリと倒れました。
やっぱりヴィスナさん、めちゃくちゃ強いですね。受け流す技術がすごいです。
うーん。なんであんなにすごい技がバカにされてるんですかね?
やっぱり、スヴァルトは攻撃! って感じなんですかねぇ?
パーティ会場でヴィスナさんが自己紹介してくれた時の言葉……
楯術は、最先端! という話。これを見れば納得ですね。
これ、楯を使うか使わないかは置いておいて、技術は学んだ方が、元の武術もかなりレベルアップすると思うんだけどな……?
なんだかもったいないなぁ……と、私は思いました。
「おーい! 誰かー」
「はっ!」
「コレ、城に届けといて。」
「承知!」
ヴィスナさんに呼ばれた隊員さんが、王子を抱えて行き……引きずって行きました。
さようなら、王子。もうこないでね。
「よー、ユウナ姫、リト殿。どうだった? 楯術。」
「か……かっこよかったです……!」
リトは目をキラキラさせていました。
「すごい技術でした! ヴィスナさんが言ってた言葉、ほんとだったんだなって」
「はははっ! 2人にいいとこ見せれてよかったよ! そういう意味ではあのバカ王子も役に立ってくれたな!」
そう言ってヴィスナさんはからからと笑っていました。
うーん。ヴィスナさんも、すごくかっこいいなぁ……。
これは、訓練が楽しみですね!
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