83. うきうき訓練波乱の幕開け?!
いつものように早朝。
肺の中まで洗われるような、爽やかな朝の空気。
白み始めた空。
新たな1日の始まりを告げる太陽が、和風の街並みを照らし、瓦屋根を白く染めています。
おはようございます。ユウナです。爽やかな朝ですね!
今日からいよいよ楯部隊での訓練です。
そんなわけで訓練場に向かっているのです。
もちろん、隣を歩いてるのはリト。
ムクとロラがお家にきてからは、エメはついてきたりこなかったりで、今日はお留守番ですね。
すっかり仲良しみたいで、なにやら一緒に遊んでいるのです。
ムクやロラも、お家は快適だけど、運動もしないとですからね。
あの子たちにしたら、お庭……狭いんだろうけど、せめてしっかり遊んでくれてたら、お散歩だけでもギリギリなんとかなる……? かな?
「やあ、ユウナじゃあないか。奇遇だな。どこへ行くんだ?」
そうそう、昨日ちゃんと楯も出来上がったんですよ!
「こんな朝早くから、精が出るではないか。どうだ? せっかく会ったのだ。茶会など……」
私がこうしたいああしたいというのにさらに!
なんとブロックルさんが、ギミック付けてくれたんですよ!
「お、おい? ユウナ? 俺様話しておるぞ?」
リトのも、ナッビさんの異能も使って、すごくいい感じになってました!
「ね、ねぇ、ユウナ。」
「ん? なぁに?」
「き、今日は早いよね……。たまにあるけど……。」
「え? 新しい装備だしね! 少し早起きだったかな?」
「いや……それはそうなんだけど……そうじゃなくて……」
リトはなんだかもじもじとしています。そして時々チラッと横に視線を持っていこうとしたりします。
ダメだよー? リト。見てはダメなものってたくさんあるってお兄ちゃん言ってたから!
「お、おいユウナ? いい茶葉があるんだ! あ、今なら王宮料理も間に合うはずだぞ? な、どうだ?」
「あ、私のはリトのみたいに大きさは変わらないけど、ブロックルさんがいい感じにギミック付けてくれてるから! んふふ〜。楽しみだよねー!」
「え、あ、う、うん。」
「早くいこ!」
リトの手を取って、走り出します。
「あ、ユ……ユウナ……!」
リトの手はちっちゃくてやわらかくて、可愛いです! 控えめに言って、最高ですね!
「お、おい……ユウナ? 茶会……」
早朝のランニングは気持ちいいですね! 多分この後も走るんでしょうけど!
「ユウナ、リーグ王子、いいの? 今日もまたいたけど……」
「え? そんな人知らないよ! 知らない人だと思う!」
「ふふ。ユウナっていつもそう……。」
リトは何だか笑っていました。可愛い笑顔です。いつも笑ってて欲しいなぁ。
――――
――
訓練場……いつもの裏手……と、キョロキョロしながら探して、ここかなぁってところに入りました。
すると……
「おお! ユウナ姫、リト殿!」
ヴィスナさんがでーんと仁王立ちで待っててくれました? 多分、そうなんだよね?
「ヴィスナさん! おはようございます!」
「お、おはようございます……」
「おお、いい挨拶だ! 2人ともおはよう! いやぁよく来てくれた! 楽しみにしてたんだよ! はははっ!」
ヴィスナさんは、ものすごく上機嫌な感じでした。
「そうなんですねー」
「もちろんさ! なんと言っても、あのヒルドルにもカーラにも勝ったっていう実力者だよ? そんな猛者、国中探したってそうそうお目にかかれないよ!」
「いや、私は格闘術だったし、2人とも馴染みがなかったというか……」
「それに噂のリト殿だよ! すんごい言法使うらしいじゃないか?」
「あ……いや、わたしのは増言法……」
「はははっ! 楽しみだねぇー! お? 2人とも楯持ってるじゃないか?」
「はい! 昨日ブロックルさんのところで造ってもらいました!」
「なんだって? ブロックル謹製なのか?!」
ヴィスナさんはとっても驚いていました。目がまん丸です。なんか、可愛いな。
「そうですよ? ブロックルさんってやっぱり有名なんですか?」
「有名……というか、本人は目立ちたいわけではないらしいけどなぁ。なんと言ってもドワーフだし、腕はいいしで、ウチらみたいな兵士には自然に知れ渡ってるなぁ……」
「そうなんですねー」
まぁ、それはそうかもですねー。いい武器防具は大事です。
私も何度も装備には生命を救われてますからねー。
「いや、まさか知り合いとはな……。ユウナ姫は、スヴァルトに来てからまだ日が浅いだろう? どうやって知り合ったんだい? あの職人……腕は立つが、偏屈だろ?」
ん? ブロックルさん、いいひとだけどな……?
「えっと、たまたま……迷惑なひとから逃げてて、それで何か音がするなぁ……って思って見に行ったんですよ。そしたら鍛冶屋さんで。すごく綺麗だったから、窓から見てたんですよねー。それで、だんだん話すようになって……」
「迷惑なひとぉ?」
あ、そこなんだ? と、思ったら。
「おい! ユウナ!」
「そうそう。迷惑なひとです。」
背後から張本人の声が……。
「俺様を無視してこんな所で何をしておる!」
もう私はとても大きなため息をつくしかありませんでした。
「はぁ〜〜〜〜っ……。ね? ヴィスナさん。迷惑なひとでしょ?」
「あっはっははははは! そりゃそうだ!」
ヴィスナさんは、手を叩いて大笑いしていました。やっぱりなんだか豪快な感じのひとですね。
つられてか、リトもクスクスと笑っています。可愛いなぁ!
「な、なんだ貴様ら、何を笑っておるか! ヴィスナ! 楯なぞ持って、スヴァルトのなんたるかも知らずに恥を振り撒いておるクセに! 愚弄するかっ!」
で、褐色肌を真っ赤にして騒いでるひとは邪魔でしかないので早く帰って欲しいなぁ……
と、思ってたんですけど。
「チッ……王子だと思って下手に出てりゃ……ずいぶんと高いところからモノ申してくださりやがりますねぇ……?」
「なんだとぉ……貴様! 無礼であるぞ!」
「はっ! そういうことは礼のなんたるかを弁えてから言ってくださいや。お・う・じ・サ・マ! ……とっとと出て行きなぁ!」
「く……ゆ、許さんぞ、ヴィスナ! 決闘だ!」
「おーおー? おサボり色ボケ王子が、ずいぶん威勢のよろしいこった。いいよー? 受けて立とうじゃない!」
た、大変なことにっ!?
私はリトと顔を見合わせました。
リトも小さくため息をついていました。うん。わかる。だよね。
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