82. つくるとはいきることなのかも
楯の制作始まります!
ブロックルさんの工房で始まった私たちの楯造り。
ブロックルさんが持ってきてくれた素材は、とても不思議な色をしていました。
「ブロックルさん。これ、なんですか? すごい綺麗な色ですねー。」
ほわほわと淡く光っているような、薄い青い色。とても綺麗です。
「これか? これは神銀鋼だな。鉄鋼なんかと違って、"力"を込めやすいモンだな。神力溜まりの鉱床なんかで採れるモンだな。」
「ほえー。そうなんですねぇー。」
なるほどー。
ナッビさんの異能とかが使いやすい素材ってことですかぁ。
ブロックルさんは、神銀鋼を炉に入れると、少し色が変わったところで取り出して、広い金床でころころして丸くしました。
「おう、ナッビ。これ、なましたら封入だ。」
「はい!」
ナッビさんが丸くなった神銀鋼を火箸で掴み、作業台に移動させました。
「リトちゃん。拡張と収縮のイメージは出来るかい?」
「あ、多分……大丈夫です。」
「よし、じゃあこれはそうしようか。起動は精力でいいかな。」
「は、はい。」
「じゃあしっかりイメージして、力を浮かせて……」
「は、はい。」
「よーし。じゃあそれをそのまま素材に……」
「は……はい……」
ナッビさんとリトは、いいコンビみたいですね。
リトの象言法は、やっぱりすごいよなぁ。
「おう、嬢ちゃん。」
「はい。」
「楯と一口に言っても、色々と用途がある。」
「用途?」
「ああ。楯は攻撃を防ぐもの、という事実は変わりゃしないが、どう防ぐかという方法論が違う。」
「どう防ぐか……」
「嬢ちゃんは、神力……精力が使えんだろ? 今、アイツらがやってる起動型楯の扱いは出来んだろ。」
「あ、そっか。たしかに。」
神力で起動する楯とか、起動出来ずに使うしかなくなっちゃうなぁ……。
そんなのすごくもったいない感じ。
「じゃあどうするか、だな。儂にはアルヴのような異能はない。ダーインやハーナルのような真似は出来ん。儂は叩き、鍛える。それのみよ。」
私の声に反応して形を変えるダーインスレイヴ。
身体の成長にに合わせて勝手にフィットするハーナルさんの防具。
これらは、あの人たちの異能でその能力を持たせているから、私にも使えるようになってる。
ドワーフのスゴウデ鍛冶師のブロックルさんでも、やっぱりそういうことは出来ないんだ。
うーん。やっぱり、ダーインさんもハーナルさんもすごいなぁ……。
楯、かぁ。
防御するんだよね? むむむむむ〜……
「なんだ……難しい顔しよって。楯はな、主に二通りだ。受け流す楯と受け止める楯だ。」
「受け流す楯と受け止める楯……」
「そうだ。受け流し型は小型で湾曲、丸型が主だ。
受け止め型は、大型で板状のものが主流だ。」
ふむふむ……。小さい……丸い……大きい……平たい……
「嬢ちゃんがどうしたいかは知らんが、儂としては小型を薦める。」
「小型……」
私が、どうしたいか……
「どうする?」
「あ、じゃあ……こんな感じの大きさで、こんなふうなデザインで、ここがこう……」
絵を描いたり、字を書いたりは禁止なので、精一杯身振り手振りで伝えます。
「くかか……! あるんじゃねぇか! 戦の方法論がよ!」
ブロックルさんは、そう言って豪快に笑いました。
「中々面白ぇこと考えるじゃねぇか! 伊達に暴れ回ってるわけじゃなさそうだ。くかか……!」
「ええ〜?! 私、暴れてなんか……」
ないと思うけどなぁ……?
「くかか……! あのバカ王子ノシたり、部隊長2人に勝ったんだろ?」
「え、いや……それはぁ〜……」
「それに、任務じゃ派手に狩りしてるらしいじゃねぇか。」
「狩りは得意なので!」
なんと言っても村ではいつもやってましたからね!
「何より、こないだの武勲1等だな。なぁ、ナッビよ。」
「ははは……。そうですね。あの時は……私は本当に僥倖というものでした。その後もユウナ様は、ずいぶんとご活躍されておるようで。」
「え? いや……に、任務ならリトだって……ねぇ? リト?」
「え? いや……わたしは、どうかなぁ?」
「えー?! いや、リトだってたくさん狩りしてるのに!」
「んー。わたしは、ほら、異能頼りだしね。肉体的に鍛えるだけで頑張ってるみんなとは違うからさ……」
えー? リト、そんなふうに思ってたんだ。だからあんなに焦って……。
「リト……。リトはすごいんだよ? みんな、リトがたくさん助けてくれてよかったって言ってるよ。」
「え……で、でも……」
「リト嬢よ。」
「は、はい。」
「儂はな、ダーインやハーナル、そしてナッビに技術を教えとる。いわゆる師匠というやつだ。
だがな、儂には、コイツらみたいな異能なんざぁない。同じ職人ではあるがな、得意分野が違うという話だ。劣ると思う部分にばかり囚われるな。得意を活かせ。
儂にはコイツらと同じモンは造れんがな、コイツらにも儂と同じモンは造れんさ。儂はそう、毎日槌を振るっとる。」
「……は、はい! あ、ありがとうございます!」
なんか……ブロックルさんってかっこいいですね。大人って感じです。
私じゃ上手く話せないから、いっつもリトに抱きついてるだけだもんなぁ。
「くかか……。うっし! じゃあやるか!」
「はい!」
ブロックルさんの号令で、いよいよ私の楯造りです!
ダーインスレイヴも、ハーナルさんに創ってもらった防具も、全部お任せでした。
頼んだら出来てた感じです。
2人は、職人技と異能を使って、この世に2つとないものを作ってくれました。
それはそれですごく感謝してるし、大事にしてもらってたんだなって思います。
でも……
今、こうしてお手伝いしか出来ないけれど、自分のものを自分で作る感覚を味わえるのは、本当に楽しいですね!
ちゃんと生きてる! って感じがします。
お兄ちゃんが高校の特別授業で、陶芸をやったとかで、不格好な湯のみを持って帰ってきてた時、すごく羨ましかったけれど……
私、この身体になれて、みんなと出会えて、よかったな。
前世の家族には会いたいけれど……
でも、今すごく充実してる!
「おっし、嬢ちゃん。そこを押さえとけ。動かすなよ?」
「はい!」
――カァン! キンッ! カァン! キンッ!
真っ赤に輝く塊が、綺麗な小さい花火を上げながら、少しずつその形を変えていく。
あ、もしかしたら……成長ってこういうことなのかも。
その日、私はなんだかそんなふうに思いました。
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