80. 真面目に任務をこなします!
メルストロムと名乗った河原の人魚メルちゃんは、結局のところ……ただ泳いでたら、河に入っちゃったというだけだったみたいで。
カーラさんに伝えたら、少し呆れていました。
ただ、
「幻獣の行動など、我々では予想もつかないのだろうな……」
と、もらしていたのは少し印象的でした。
確かに、私……メルちゃんに散々好き放題されちゃって……
もうわけわかんなかったもん。
リトはリトで、
「危険そうな力の流れとか全然なかったし、ユウナなら大丈夫かなって……」
とか言ってたし……
まぁ、大丈夫だったんだけど! 待っててって言ったのも私だけど!
あんなにスリスリちゅっちゅされるなんて思ってなかったもん。
うん。まぁ、メルちゃん、女の子だと思うし……別にいいんですけど!
そんなメルちゃんも……
「ユウナちゃ~ん。楽しかったわぁ~。またねぇ~」
と、言い残して、河の中にぽちゃんと入って行ったんだよね。
またね、って……私哨戒任務くらいでしか街の外出ないんだけどな……
いつか、自由に色々出来るようになれるといいけど……
だから、もっともっと強くならないとね!
そうそう。
私と同じようにメルちゃんに可愛がられてたエメはというと……
「キュキュイッ!」
と、なんだか満足そうだった。お仲間に会えてやっぱり嬉しかったのかなぁ?
そして、休憩終わりのスレイフ部隊は、帰り道は草原側まわりのルート。
日帰りでの河原ルートは、河はまだまだ海まで続くから、この辺りが限界なんだって。
そんな感じで、草原の方を走っていく私たち。
スレイフ部隊も、ルクにはみんな騎乗してるんですけど、ゲイル部隊みたいに、騎乗戦術はあまり得意じゃないらしいので、早期の敵発見が大事だってカーラさんが言ってました。
それで耳のいい私が先頭付近に配置ってことだったみたいです。
でも、確かに剣は槍よりかなり短いので、剣だと降りて戦う方がいいのかもしれませんねー。
「あ! カーラさん! 血の臭いがします!」
「む……総員警戒! ユウナ姫、どの辺りが分かるかい?」
「ん、と……」
臭いの先に耳をすませると……
カサカサという草と何かが擦れる音と、くちゃくちゃという音がした。
だいたい……
「結構近いです。」
「そうか、わかった。 総員、攻撃態勢!」
「「はっ!」」
カーラさんの号令で、全員がルクから降りました。
私とリトも降ります。
「ムク。ロラとエメと、他のルクさんたちと、ここにいてね?」
「クエーッ!」
いいこいいこと、ムクを撫でました。
「ロラ……ちゃんとここにいるんだよ?」
「クエッ!」
リトもロラを撫でていました。
ルクは頭のいい生き物なので、だいたい言うことは分かってくれるのです。
「総員、警戒しつつ、徐々に距離を詰めろ。抜剣!」
「「はっ!」」
「これよりは、音をなるべく立てるな。」
カーラさんのその言葉に、みんな静かにうなずきました。
そろりそろりと近付いて……
だんだん濃くなる血の臭い……
うう……事件の予感です……!
――バサササッ!
目標まであと少しという距離、10mといったところで……
気付かれてしまったのか、草むらから何かが羽ばたいて飛び出しました。
……!?
「ギレースモーデルだぞ! 気をつけろ!」
カーラさんが叫びました。
それは、巨大なイナゴみたいな虫でした……。
人間よりも大きな顔、身体も多分……2mくらいありそう……。
巨大な目、血に汚れた口……
うあああ……! 虫のアップってこんなに気持ち悪いのぉ?!
やだやだやだやだやだやだ……?!
ひーっ!!?
やめてやめて……! ムリムリムリムリ……!
「来るぞ!」
はっ?!
カーラさんの冷静な言葉が耳に刺さりました。
それは、私に正気を取り戻してくれました。
ああ、やっぱりカーラさんも、頼れる部隊長!
さぁて、どうしようかな。
ダーインスレイヴを――
――ボワッ!
「……こ、来ないでぇぇぇぇ!!」
私がダーインスレイヴを抜こうとしたその時。
リトが、炎をイナゴにぶつけていました。
「おお……?! 総員! トドメだっ!」
「「はっ!」」
リトの炎で翅を失って墜落したイナゴに、スレイフ部隊のみんなは、一斉に斬りかかっていきました。
虫だからか、断末魔的なものはありません。
一件落着!
……かと、思ったのですが。
「カーラさん! 遠巻きに囲まれてます!」
「何っ?!」
「この感じだと、多分狼です!」
「草原狼か! マズイな……。総員、ルクを囲み円陣を組め!」
「「はっ!」」
急いでムクたちのところへ戻ります。
多分、虫が食べていた獲物の血の臭いに気付いて狼が寄ってきたんだと思います。
カサカサと草が擦れる音。
じわじわと狼たちが包囲網を狭めてくる音だ。
意識を耳に集中……
左手側が、1番近い位置だ。
「リト、あっちの方向、草むらに向かって風の刃を……」
「あ、うん。あっちだね。」
ビュアッと吹いた風は、草を鋭く刈りながら……
ギャイン! と、狼の断末魔を作り出した。
それを合図に……
「グルル……」
姿を見せ始めた狼たち。
「リト、多分みんな接近戦だから、風とかみんなに当てないように気をつけてね!」
「うん。水にしようかな……」
「あ、そうだね。とりあえず、突破されてもいいように、リトはここでムクたちを守ってて?」
「うん。分かった。任せて。」
「来るぞ! 迎え打て!」
「「はっ!」」
その日は、中々1日中忙しかったです。
でも、私は真面目に任務をこなすのです!
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