79. 河原のなんだか人魚
私が謎の歌声を聞いて、カーラさんに伝えて……
その正体を確認するということになり、隊の速度が上がりました。
「む……本当だな……歌かはわからないが、何か……」
ついにカーラさんにも聞こえたみたいです。
「ユウナ、大丈夫かな……?」
リトにも聞こえたみたいで、不安そうな顔をしていました。
「キュッ! キュキュイッ! キュキュキュイッ!」
でも、なんだかエメは、リズムよく鳴いています。
「クークークークェッ!」
なんだか、ムクまでエメみたいな……?
「む……あれは……!」
カーラさんの目にも映ったようです。
私にも、それが見えていました。最初は、女の人だなぁーって思ったんですけど……
「全体停止! 不味い……人魚だ……! なぜこんな場所に……!」
ザッと、全員その場に止まりました。
でも……人魚さんだと、まずいの? なんでだろ。
「人魚さんだとまずいんですか?」
「ん? なんだ、ユウナ姫は知らないのか……」
えっ……だって、まだ2歳だし? アルヴは森しかなかったし? 人魚さんとかいるとかすら知らなかったというか……
えー? リト知ってたー? と、思ってリトを見たけど、リトもはてなマークの顔をしていました。
アルヴは海なし国ですからね! やっぱりしかたなかった!
「海沿いの村では、時々被害が出るんだ。あの歌に聞こえる音は……何やら幻惑を起こす効果があるようでな。海に招かれるようにして……何人も行方不明になったそうだ。」
「えー? 行方不明ですかー?」
「そうだ……。この付近には村はない……僥倖だ。撤退……」
「キュッ! キュイッ!」
「あっ?! エメ?」
エメがぴょーんと飛び降りて走り出してしまいました。
あーもーまたやんちゃしてー!
「カーラさん、ごめんなさい! エメ捕まえなきゃ!」
「な……お、おいユウナ姫……!」
「ユウナ……?!」
「ムク、リト、ごめん、ちょっと待ってて!」
私もムクから飛び降りて、エメを追いかけます!
エメはすばしっこいんですけど、私だって負けてないんです!
「キュキュイッ!」
エメは機嫌よさそうに走っています。
もしかして……これが幻惑……? だったら早く捕まえないと!
風になれ私!
と、思ってたんですけど……
「あらぁ〜? もしかして〜、カーバンクルかなぁ〜?」
「キュキュイッ!」
「うふふ〜 珍しいわねぇ〜 あらぁ〜 なでなでさせてくれるのぉ〜?」
私が追いつきそうになったころには、人魚さんのすぐ背後。
エメは、ぴょんっと人魚さんの膝……膝? 膝なのかなぁ……? うろこにおおわれてるところに飛び乗ってました。
「あ、あのう……その子ウチの子で……エメって言うんですけどぉ……ごめんなさい。」
「えぇ〜? あらぁ〜? エルフさんかしらぁ〜? 初めて見たわぁ〜 今日はたくさん珍しいもの見ちゃう日ねぇ〜 うふふ〜」
えー? 私的には人魚さんの方が珍しいんだけどなぁ……?
あ! 私がアルヴ族だからかな? スヴァルトにしか海、ないもんね!
……あれ? ここ、河だよね? なんで人魚さんが? こんなところに?
「えっとー? 人魚さん……ですか?」
「うふふ〜 なんだかそんなふうに呼ばれたりするわねぇ〜 ねぇねぇ〜 そんなところに立ってないで、ここに座って〜」
人魚さんは、ちょいちょいと人魚さんの座ってる場所を指差します。
うーん。悪いひとじゃなさそう……?
なんだかエメも懐いてる? みたいだし……。
とりあえず言われた通りに座ってみました。
「うふふ〜 エルフさんエルフさん、可愛いわぁ〜 ふわふわねぇ〜 綺麗な色だわ〜 マザーみたいねぇ〜 うふふ〜」
「えっ……なっ……」
なんだか、すごく頭を撫でられています……!
「あぁ〜 可愛いわねぇ〜 お名前はなんて言うのかなぁ〜」
な、なんか、頬ずりされています……!
「ユ……ユウナです……!」
「ユウナちゃんねぇ〜 ちょっと変わってるけど、可愛い名前だわぁ〜 ん〜ちゅ」
……! ほっぺにキスされてしまいました……!
えぇ〜? これが人魚さん……?! えぇ〜?!
わ……私……ど、ど、ど、どうしたらいいんだろ?!
なんだか、やっつけるのは違う感じだしぃ〜……
はぅー。
「あ! に、人魚さんのお名前は? な、なんでこんな河にいるんですか?!」
「あらあらぁ〜? わたしに興味あるのかなぁ〜? うふふ〜 」
はわわー……! ついにギュッてされてしまいましたぁ……! 胸が……ぱつんと弾力がすごいです……!
「ユウナ姫! 大丈夫か!?」
その時ついに? カーラさんが駆けつけてきました。
「あらぁ〜 またお客さんかしらぁ〜 今日はほんとにたくさんねぇ〜」
「あ、カーラさん。えっとー……とりあえず大丈夫そうです……?」
「いや、捕まっているように……見えたのでな……。それは……な、なにをしているのだ?」
「えぇ〜? とっても可愛いからぁ〜 愛でているわぁ〜」
「めで……」
なんだかカーラさんは目を白黒とでもいうんですかね。
パチくりパチくりしながら、口をパクパクさせていました。
そして、がっくり肩を落として……
「はぁー。リト殿の言う通りだったか……。まぁ……我々はあちらで休憩でもしているから、早く戻るんだぞ……」
とぼとぼと戻っていってしまいました!
え?! あれ? 行っちゃうの? え?! みんなご飯?! うそ?! 私は?!
「うふふ〜 行っちゃったわねぇ〜 わたしの名前はねぇ〜 メルストロムっていうのよ〜 メルちゃんって呼んでねぇ〜 」
「メルちゃん……」
「は〜い。うふふ〜」
「メルちゃんはここで何をしてたんですか?」
「え〜? 泳いでたらぁ〜 疲れちゃったからぁ〜 日向ぼっこしてたのよ〜 うふふ〜 いい天気ねぇ〜」
「いい天気……ですねー……」
なんというか……これが異文化というやつなのですね。
アルヴに転生して、スヴァルトにやってきて、色々異文化に触れたはずなんですけど……
メルちゃんはなんというか、本当につかみどころがない感じで……
私は、メルちゃんに好き放題されながらしばらくボーッとしていました。
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