78. 河の歌声
スレイフ部隊での早朝練習に参加しだして、1週間ほど経ちました!
剣は、お母さんにも習ってはいましたが、やはりアルヴでは主流の武器ではないからか……
スヴァルトの剣術とはだいぶ違いました。
私の今の剣術は、どちらかというと、受け……
みたいな感覚で、相手の動きを見て、合わせて動いて隙をついて斬る!
みたいな感じなんですが……(やわらか格闘術と同じ感じですね!)
スヴァルト流は、もっともっと激しくて、一振りに気迫を込めて、叩き斬る!
みたいな感じでした。とても攻撃的な感じですね。
とはいえ当たり前ですが、はずしたら終わり! とはならないように、キチンと繋ぎの動きや、切り返しなどもあって……
体得出来たら幅が広がる! そんな未来が見えました!
なので、私はうきうきなのです!
が……
「ユウナはやっぱりすごいよね……。私、細剣……全然ダメかも……」
と、リトはなんだか毎日落ち込んでいるのです。
急に出来るようになんてなるわけないんですけど……
なんだか……リトはずっと焦ってるみたいな感じで。
だから、毎日毎日お家では、お風呂でもご飯作りながらでも、ギュッとしてくっついています!
リトはやわらかくて可愛いので、とても癒されます! 役得です!
リトも、少しは元気になってくれるといいんですが……
私はおかげで元気です!
そーしーてー?
なんと! 今日は、ムクとロラもいますよ!
「キュアーッ!」 「クェッ!」 「キュイッ!」
あ、ムクとロラがいるので、エメはお留守番してくれませんでした。
だからエメもついてきちゃってます。
空は今日も快晴! いい哨戒任務日和ですね!
そう! 今日はスレイフ部隊での哨戒任務デビューなのです!
というわけで、訓練場に向けて出発進行ー!
「ユウナ、朝からなんか、にこにこだね?」
「うん! 今日はほら、哨戒任務だからさぁ、どこ行くのかなって! ほら、あんまり色んなところ行けないから、なんだか楽しみで!」
「うん……そっか。そうだね。旅人になるって言って、結局出来てないもんね……。」
ふっとリトの表情に陰がさしました。
「あ……ごめんね、リト。巻き込んじゃって……」
そうだった。リトは旅人になる夢があって。でも、私の事情に巻き込んじゃったんだ……。
「あ、あ……! 違う! 違うよ! ユウナはなにも悪くないよ! 悪いのは新しい王妃様だよ! わ、わたしは……ユウナと一緒にいたいだけだから……ご、ごめんね、変な言い方だったよね?」
「リトぉ〜。ごめんね〜。」
「あ、まって! ほんとに! 違うから! お願い! 泣かないで! あ、あ〜……ね、ほら、耳……」
そう言ってリトは、耳にキスをしてくれました。
優しい……。
「リト〜! 大好き〜!」
「あ、あ、わ……わたしも……大好き……だよ。」
出発前からちょっと泣いてしまいました。
でも、ほんとに……リトがいてくれてよかった……。
――――
――
朝日が宿舎の屋根を白く染めている、早朝の訓練場。
カーラさんの声が響きます。
「よし、皆揃ったな!」
今日はなんと! 早朝練習はなくて、集合したらすぐ出発といった感じだったのです。
「もう一度確認するぞ。今日の哨戒はスヴァルト河のエリアだ。」
「「はっ!」」
「各自警戒を怠るな! ゲイル部隊の例もある!」
「「はっ!」」
「ユウナ姫、リト殿」
「「はい!」」
「2人は私の後ろ、先頭付近にいてもらう。よろしく頼む。」
「「はい!」」
なんと! いきなり前方での警戒ポジションということです!
これはしっかりやらないとですね……!
リトと少し見つめ合ってこくりと頷き合いました。真剣な顔がとっても可愛いですね!
――
スヴァルト河は、城の裏手側を流れている河です。
結構長いみたいで、ちゃんと海まで繋がっているそうです。
でも、さすがに今日は海までは行かないみたいで、ちょっと残念ですねー。
海……まだ見たことないなぁー。
まぁそれもしかたないのです。
一部隊しか動けないので、日帰り可能な範囲を……ということみたいですね。
普段はゲイル部隊と手分けして哨戒をこなしていたみたいですが、ゲイル部隊の再始動まで、多分1ヶ月くらいかな?
その間は、スレイフ部隊だけで全域カバーなので……忙しい忙しいなのです。
そんなこんなの私とリトの応援なのですね!
だからじっくり訓練が出来るのは、哨戒範囲が狭い日だけになりそうですね。
「キュッ! キュイッ!」
「ん? エメどうしたの……わぁ……! きれー! ね、ほら! リト見て見て!」
「わぁ……河……! すごいね!」
河は、思ってたよりも大きくて、かなり川幅がありそうでした。
ゆったりとした流れのようで、水面が少し揺れ動いてるみたいで、キラキラと光を反射していました。
それに、なんだか……水の匂いが……ほんのりミントのようなレモンのような……爽やかな感じの匂いがします。
向こう岸は、河川敷みたいなごろごろの石場があって、その奥には色とりどりの花が咲いている木々があって、小さな森みたいになっていました。
こちら側は、草原……からの河川敷……みたいになっているので、降りようと思ったら降りれそうですね! 今日は行かないですけどね。
「ははは。ユウナ姫、河川は初めてかい?」
カーラさんは、兜をすっぽりかぶっていたので、表情は分かりませんが、声は弾んでいるようでした。
「スヴァルトに来る時に、ヴィルム川なら歩いて渡りましたけど……こんなに大きくはなかったんで!」
「ヴィルム川? あんな方向から来たのか……ということは、山越えも?」
「あ、はい。トゥレイア山ですよね? そこでエメと出会ったんですよ。」
「ほう……。やはりユウナ姫は面白い。トゥレイア山といえば凶暴な幻獣などもいるというに……。
ああ、そうだ。スヴァルト河も、時折精霊や妖精、幻獣などが現れては悪戯をしたり、暴れたりする。今日の哨戒も、その被害確認の意味もあるからな。注意していてくれるかい。」
「なるほどー。妖精や精霊や幻獣……トゥレイア山だけにいるわけじゃないんですねー。」
「そうだな。奴らは皆フェアランドの出身のはずなんだが……。何故か我が国にも時折いるのだ。何故だろうなぁ。」
「旅、したかったんですかね?」
ブロックルさんは旅してたって言ってたもんね。妖精でもなくて、ドワーフだけど。
「ははは。そうなのかもしれないな。」
カーラさんがまた、楽しそうに笑ったとき……
なにかが聞こえました。
「あ。カーラさん! あの歌……なんですかね?」
歌……なんだと思いました。
音の波の……集まりみたいな。不思議な旋律でした。
「歌……だと? いや、何も聞こえないが……」
「えっと……河沿いの、もう少し下流ですね!」
「そうなのか……。ユウナ姫は耳までいいのだね……。そんな場所に、村などはない。行ってみよう。全体! 警戒態勢!」
「「はっ!」」
「これより、不審な声の調査確認に赴く! 」
「「はっ!」」
なんだか私の一言で、大変なことになりそうです?!
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