66. 新たな戦いの幕開けです?!
前回のお話:あ、あ、挨拶……?!
ラーズ王に呼ばれた私は、会場奥へと進み……階段を登ります。
会場に人はたくさんいるのですが、声1つなく、誰もいないようでした。
頭の中で、心臓の音だけが大きく響いています。
「はっはっ。ユウナ姫よ。そう怖い顔をするな。それではまるで戦の前ではないか。」
ラーズ王の前に着いた時、そんなふうに言われました。
ふぅーっ……。
ひとつ大きく息を吐きました。
ラーズ王は慣れているのかもしれませんが! これは私にとっては戦いなのです!
「どうした? 余の前で啖呵をきった時のようにすればよいぞ。」
「……はい。」
ラーズ王に返事をして、くるりと振り向くと……
ああああ……上から見るとほんとにたくさんいるぅ……
どうやら隊ごととかのグループでかたまっているようで、隙間なくビッチリということもないのですが……
こんなにたくさんの人を上から一度に見たのは初めてでした。
呑まれないように、もう一度小さく深呼吸。
「では! 昨日の戦い、武勲第一位ユウナ姫より挨拶! 清聴!」
ラーズ王の大きく通る声が響き渡りました。
「みっ……みなさん、こんばんは! ただ今ご紹介にあずかりました、ユウナです! 」
ああっ……ちょっとどもっちゃった……
おちつけー……おちつけー……
「えっと……2ヶ月くらい前から、スヴァルト国でお世話になってます! とくに、ゲイル部隊ではずっと訓練に参加させてもらってて……」
あ、あれ……なに言うんだっけ……
んと……えっと……
「あ、それで! 昨日初めて哨戒任務に同行させてもらったんですけど! なんだかいきなり戦いになってしまって! それで……ゲイル部隊のみんなが、大好きだから! 私、がんばりました! みんなで一緒に帰ってこれてよかった! 」
……あぁぁ……なんかぐるぐるしてきたぁ……
「こ……こんなパーティーに呼んでもらえるなんて、すごく嬉しいです! みんなと一緒に楽しみたいです! ご清聴、ありがとうございました!」
もうなんて言ってたんだかもわからないくらいなんですけど……
ぺこりとお辞儀をして……
顔を上げると……
――パチパチパチパチ
「あはは!ユウナちゃんらしいや!」
「いいぞー」「はっはっはっ」
拍手の雨と、大歓声……笑い声……
はぁぁぁ〜〜……。
あんなのでよかったのかなぁ〜?
なんだか急に膝の力が抜けそうになりました。
「うむ! では、みな存分に楽しむが良い!」
ラーズ王が、しっかり締めてくれました。
「「「はっ!」」」
「さて、ユウナ姫よ。後ほど褒美を取らすゆえな。考えておくが良い。はっはっ!」
ラーズ王は、舞台の奥にある玉座に座りました。
あ……リーグ王子もいる……
早く下に……ん? 隣の人、誰だろ?
王子の横に知らない人が座っていたのですが、リーグ王子に話しかけられたくなかったので、急いで階段を降り……
ているつもりだったのですが、着物だし、脚に力入らないしで……すごくとぼとぼした感じになってしまいました。
階段を降りきると、リトが待っててくれました。
「ユウナ! がんばったね!」
「うぅ〜……リトぉ〜……。」
力が抜けたからなのか、ほっとしたからなのか、ちょっと泣きそうになりました。
とりあえず、リトにギュッと抱きつきます。
「あ、ちょっと、ユウナ……? パーティー会場でそれはまずいんじゃ……」
「はうぅー。だってぇー。」
「か、帰ってから! 帰ってからね! あ、ほら、エメ! エメ、ほら!」
リトが抱いてたエメをずいっと渡してきました。
「キュイッ? キュッ!」
エメは一瞬首を傾げて……ぴょんと飛びついてきました。
まぁ、エメも可愛いからいいんだけど……。
「はっはっはっ! ユウナちゃーん! 面白い挨拶だったねぇー!」
「あ、ロタさん! 怪我は大丈夫?」
「いや、それがさぁ。リトちゃんの治癒術がすごくてさぁ……びっくりだよ。もうほとんど治ってる! いやぁ、リトちゃん、ありがとね!」
「あ、いえ……全然……。わたし、戦いでは全然役に立てなかったから……。」
「いや、確かにスヴァルト的な常識だとさ、戦ってなんぼ! なわけだけどさ。正直……リトちゃんの治癒術があるだけで、戦いの常識が変わるよ……。まぁあんまり大声では言えないけどさ! 他の隊に取られたら大変だ!」
なんて。ロタさんはとてもいい笑顔でした。
「ほー。他の隊がどうしたって?」
「うげ……カーラ隊長じゃないっすか……。」
「うげとはなんだ、うげとは。相変わらずだな、ロタは。もう副隊長になってずいぶん経つだろうに。」
ロタさんの背後から、銀髪を肩あたりで切りそろえた、すらりとした人が現れました。とても綺麗な人です。
ロタさんはなんだかバツの悪そうな顔をしています。
「ユウナ姫。私は、カーラ。スレイフ隊の隊長をしている。そちらは、リト殿かな? お二人とも、以後お見知りおきを。」
カーラさんは、胸に右手を当てて、なんだかカッコいい感じのお辞儀をしました。
「あ、ユウナです! 姫ではないです! 村人で狩人です! よろしくお願いします!」
「……リトです。よ、よろしくお願いします……。」
「ははは。お噂はかねがねというやつさ。やっと挨拶出来た。あのヒルドルに土を付けたって話を聞いた時は驚いたよ。しかも素手だと。アルヴの姫ってのは、ずいぶんスヴァルト的であられるようだとな! ははは!」
「え、えぇ……? そんなに噂になってたんですかぁ?」
「あぁ、もちろんだとも。ゲイル部隊とスレイフ部隊は、全員が女性ではある。だが、私もヒルドルも、他部隊の男共にも引けは取らん。と、いうことはだ。ユウナ姫は、この国の強者どもに勝てる人物だという事だ。驚かないはずがないさ。」
「えぇー……?」
あの時は確かに頑張ったけど……
そんなに噂になってただなんてぇー……聞いてないよー!
「それに……リト殿。貴殿の言法は普通ではないらしいな。ずいぶんと強力で、言葉いらずと聞いた。」
「あ、は……はい。そ、そうですね。」
「……正直、よくそれでアルヴ国を出たものだと思うよ。アルヴ国内なら、出世も楽だったろうに。」
「……いえ、そんな……」
リトは慣れてない人が相手だからか、少し伏し目がちでした。
「ま! 我が国にしたら、僥倖この上ないがな! ははは! 2人とも、ゲイル部隊に飽きたら、我が隊に来るがいい!」
スレイフ部隊って確か剣だったよね。
色々習ってみたくはあったから、いい話なのかも。
「え、ちょっと! カーラ隊長! 引き抜きっすか!?」
ロタさんは、目を真ん丸にしていました。
「いやなに。我が隊も新たな刺激が欲しくてな。こんな逸材がいれば、否応にも皆身が引き締まろうというものさ。そうだろ? ロタ。」
「ぐ……そ、そうっすよ! 真面目な2人なんでね! 毎朝の訓練に身も入って……確かに今回も全員生き残れましたよ!」
「ははは。ゲイル部隊ばっかり得をする……ではな、我々としてもあまり愉快ではないからな……」
「ちょーっと待ったー!」
その時……カーラさんのセリフの途中で、また誰かが現れました。
どれだけくるんですかぁー?!
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