お城でパーティー? 初めまして!
前回のお話:ナッビさんです!
廃村での戦闘が終わり、私とリトを含めたゲイル部隊の皆は、捕らえたスヴァルト族たちを輸送車に乗せ、王都へ向かいました。
道中は平穏そのもので、さっきまでの激しい戦闘が嘘のようでした。
ただ、柔らかく香る草の匂いの中に、"死"の香りが混じってしまっていたことが印象的でした。
助からなかったスヴァルト族たちは、王都の一角にある共同墓地のような場所に埋葬するようです。
私たちエルフは、アルヴもスヴァルトも死んでしまえば自然に還るのは早いとのことでした。
力 (多分、神力や精力) が強い者は、冥界ニヴルヘイムに渡るという話もありましたが、私にはそんな力はないので……
すぐにこの星の一部になるんだろうな。
前世よりはだいぶ長い寿命があって、それなりに時間はあるみたいだけれど……
前世の家族にはもう会えないんだろうし、お母さんは母様を捜しに旅に出ちゃったし、ナイはフェアランドで寝てるみたいだし、ミュルク村には帰れないけれど……
リトもエメも一緒にいてくれるし、ゲイル部隊のみんなも良くしてくれるから、わりと毎日楽しくやれてるんだよね。
でもやっぱりこんな事があると、色々考えちゃうな。
――――
――
翌日のことでした。
「えぇー?! わ、私がー?!」
戦勝の慰労会という名目で、ゲイル部隊のみんなと一緒に、お城でパーティーが開かれることとなりました。
和風のお城の大広間、なんですが。
床が板になってて土足で大丈夫な感じの部屋があったのです。
主にアルヴ族との交流に使われる場所らしいのですが、今日はその部屋で立食パーティー!
私もリトも招待されてて、なんと衣装まで借りちゃってます!
しかも!
なんとなんと! ドレスなのかなぁと思ったら、着物風なのです!
着物風の装いとか初めて着ました!
これはこれで可愛くていいですね!
……なのは……いいんですけど……
1つ……大きな問題が立ち塞がったのです!
「ああ、もちろんだ、ユウナ殿。部下たちを救ってくれたのだ。讃えられるべきだろう。今回の武勲第一位だ。さぁ、胸を張って挨拶を。」
なんといきなり大役を振られてしまったのです! なんということでしょう!
「ヒ……ヒルドルさぁ〜ん……。ヒルドルさんの方がたくさん相手にしてたじゃないですかぁ〜……! なんで私なんですかぁ〜……。」
もうびっくりしすぎて、ちょっと泣きそうになりました。
「いや、私一人では皆を救う事は出来なかった。それに私は隊長だ。あれしきの働きなぞ……最低限でしかない。そもそも、奇襲を見破れなかった時点で罰すらありえる事だ。そういう意味では、私もユウナ殿に救われたのさ。」
「えぇ……そんなぁ……」
それを言うなら私だって、まさか敵が潜んでるなんて考えてもなかったから、すごく油断しちゃってたのにぃ……。
あんな壇上で……あ、あ、あ、あいさつ? こ、こんにちは? で、いいわけないよね?!
えぇぇ……ほんとに私がやるのぉ〜?!
うぅぅぅ……
ど、ど、ど、どうしよぅ……
うぅぅぅ…… 。緊張でちょっと吐きそう……
お母さ〜ん……! た、たすけ……
……あ。お母さんかぁ。
お母さんなら平気でカッコよくこなしそうだなぁ……。
絶対そうだよー。カッコいいだろうなぁー。
んー。お母さんならなんて言うかなぁ?
あ。ふふ。
お兄ちゃんもこういうの嫌がりそうだなぁ。ふふ。
うん。私、前世では何も出来なかったけど、大事にしてくれた家族はいたし、こっちに来てからだって、大事にしてもらってる。
うん。そうだね。頑張らないとね!
「わかりました! やってみますね!」
「あ、ああ……。なにやら百面相のようになっていたが……ユウナ殿、大丈夫か?」
「え?! だ、大丈夫です!」
か、顔に出ちゃってたのぉ〜? 恥ずかし……。
続々と人が集まりだして、会場がざわつき始めてきました。
あ、ゲイル部隊の皆も揃ってきてるようですね。
普段は甲冑か訓練着ですけど、今日は皆着物風の衣装を綺麗に着こなしています。素敵ですね!
「ユウナ、大丈夫?」
ヒルドルさんとのやり取りを見ていたリトが、覗き込むように心配してくれていました。
「うん、大丈夫! 私頑張るね!」
「そ、そう……? すごくたくさん集まってるけど……。」
確かに5、60人くらいはいそうです。すごく集まってます。
学校の学年集会みたいな……
あれ? じゃあ100人くらいいるのかも……?
「キュキュイッ?」
エメもリトの腕の中でなんだか言いたげな感じで首を傾げていました。
うんうん。私、頑張るからね。
と、エメを撫で……
……あれ?
そういえば、パーティーにペットって連れてきていいんだっけ?
うーん……。
パーティーって生涯通じて初めましてだからわかんないなぁ。
でも、エメも廃村では走り回って色々お知らせしてくれてたからいいはずだよね?
それに、ヒルドルさんもなんにも言ってなかったし、大丈夫だよね!
「ラーズ王、ご入場!!」
和風だけどホールのようになっている部屋の一番奥側、ステージのような壇上舞台袖には、どうやら階段があるようで……
その階段からラーズ王が降りてきていました。
相変わらずの威風堂々とした佇まいですね。
強そうです。今日は高級そうな着物風の衣装ですね。
舞台中央に立ったラーズ王は、王様! って感じで、威厳? がある立ち姿でした。
「皆、よく集まった! 」
よく通る声でした。
先ほどまでのざわつきはピタッとやんで……
まるで世界に王様だけがいるような……そんな空気。
「本日は、慰労の宴である! だが、余が開会の挨拶をするわけにはいかぬ。それに相応しき者がおるゆえな! ユウナ姫! 前へ! 」
「は、はい!」
い、いよいよ始まります……
私の新たな戦いがっ……!!
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