63. アルヴの逃亡者
前回のお話:光になれ!私!
さっき私が倒したスヴァルト族の人たちは、全員生きてたので、リトと2人、拘束して回ります。
全部で9人……? だったかな? あれ? 10人……?
ロタさんと一緒に倒した2人は任せちゃお。
「……っと、6人目。あとはー……あっちだった!」
「……ユウナは、やっぱりすごいよね。」
次の3人組のところに向かっていたら、リトが口を開きました。
「え?」
リトはうつむき加減でした。
「わたし、やっぱりダメだな……。」
「えー? でもリト、ヴィヨン倒してたし、あんなの私もお母さんもヒルドルさんも無理だよ? 得意不得意の話なんじゃないかなぁ……?」
そもそも私だって毎日、ご飯の準備だってお風呂の準備だって、リトの象言法に助けられてるわけですしね。
「でも……ユウナが来てくれなかったら、わたし……どうなってたか……」
「間に合ってほんとによかったよ! リトに何かあったら、私嫌だもん。そんなひどい事する人……許せないと思うし……。」
私、お兄ちゃんが昔言ってた事、少しわかった。
身内に手を出されたら、絶対に許さないってやつ。
私も……想像するだけで許せないって思えてしまう。
こんな風に思うのも、よくないことなのかな……?
「そんな風に言ってもらえるのは……嬉しいけど……
わたしも、ちゃんとユウナを護れるようになりたいのに……」
「えー? 私はいつもリトに助けてもらってるけどなぁ……?
水出してもらったりとか……。あ! そうだよ! 水だよ!」
「え……? 水……? がどうかした?」
「うんうん! 怖い人がさぁ、ひどいことしてきたら、水の球の中に閉じ込めちゃえばいいんだよ! 気絶するでしょ?」
「あ……そ、そっか。」
「火とか風だと危ないし、水なら加減出来るんじゃない?」
「うん、そうかも。今度……そうしてみるね!」
「うん。リトは強いんだから! 大丈夫だよ! あ、いた! あの3人組だよ。」
私が指差しながら、倒れている3人組に近づいた時でした。
「……うっぐっ! くそっ……」
1人、目を覚ましていたのです。
「うおぉぉ!」 男は叫びながら勢いよく立ち上がり……
「あ」
私に掴みかかろうとして……
――バシャッ! 「ガボボッ……!」
「……ふう。こうだよね?」
リトの水球に捕まっていました。
「あ、うん。リト……すぐ出来ちゃうんだねぇ。」
言ったそばから出来ちゃうリトには驚きを隠せないのですが……
とりあえず、他の2人は目覚める前にちゃんと拘束しておかないとですね。
「……! ……!……。」
ロープでくるくるして……
あ、暴れてた人、大人しくなってきてますね。
よし! 出来上がり! っと。
「…………」
あ、眠ったみたいですね。
「リト、もういいと思う!」
「あ、うん。じゃあ解除するね。」
男を覆っていた水球は、ぱあっと跡形もなく消えていきます。
「うんうん。じゃあ縛っちゃうね!」
うーん。やっぱり、リトの象言法すごいなぁ……。
そうしてその後、ロラを捕まえようとしていた男を拘束している最中……
「あ!」 私は思い出したのです。
「ん? どうしたの?」
「お掃除しようと思った建物に、アルヴ族の人がいたんだった!」
「え……アルヴ族……? も、この人たちといたんだ……?」
リトは、考え込んでいるような仕草でした。
真剣な顔付きで、顎に指を当てています。可愛いなぁー。
――
「ほら、ここだよ。」
ガラリと引き戸を開けると、ムクがお出迎えしてくれました。
「キュアーッ!」
「あ、ムク。おりこうさんで待っててくれたんだね! えらいえらい!」
「クゥーッ……」 撫でてあげたら喜んでいました。
「ユウナ……結構離れたところにいたんだね。」
「うん、そうみたいだね。」
確かにリトのいた建物からは、少し離れていました。
1人1軒がお掃除ノルマでしたからね、そういうこともあるでしょうね。
「あ、起きてるみたい。」
「――!――!?」
アルヴ族の人は、気が付いていたみたいで、何かを言ってるようでした。
「じゃあ、先に水出しておくね。」
リトはそう言って空中にコポポッと大きな水球を創り出しました。
「――?!」 アルヴ族の人はそれを見て、顔が青ざめました。
「じゃあ、口の布取りますけど、言法使ったりしないでくださいね?」
と、私が言うと、アルヴ族の人はコクコクコクコクしました。
首の動きがすごく早いですね。
「――ぷはっ……!! アルヴ族が、2人? スヴァルト軍が攻めてきたんじゃなかったのか……? 君たちは……誰なん…………あれ……?」
その人は、急に話だしたと思ったら、私をじーっと見て……
「まさか……ユウナ様?!」 と、大きい声を上げました。
「え……そうですけど……? なんで知ってるんですか? どこかで会いましたっけ……?」
うーん……。正直全然覚えがなくて……。
「リト、知ってる?」 と、聞いてみるも……
「……ううん。ミュルク村の人じゃないよ。」
「だよね。」
私も2年間とはいえ、ミュルクの村人だったし……
顔くらいは皆知ってるはずなんだけどなぁ……?
えぇー。誰だろ?
「……あっ! 私は、以前王館勤めでして! ルーナ様の護衛兵の1人、ナッビと申します!」
「えっ?! 母様の?! ……え、その兵士さんが、なんでここに?」
「はい……! 我々のようなルーナ様に連なる者たちは皆……ルーナ様追放から程なくして……粛清や追放の憂き目に……」
ナッビさんは、肩を震わせながら……涙を零しました。
「まさか……逃亡生活の最中……ユウナ様とお会い出来るとは……!」
「え……でも私、ナッビさん? のこと、全然覚えてないんだけど……」
「それは……ユウナ様は王館で過ごされた期間が短く……我々も直接ご挨拶は出来ておりませんでしたので……
ですが、私は、2度ほどユウナ様をお見掛けしておりましたので。その髪色……記憶にございます。」
ああー。そっか。私の髪色目立つもんね。
それに一応はお姫様として生まれたわけだし、兵士の人なら見てても変じゃないよね。
「そっか。わかりました。リト。大丈夫だと思う。」
「……うん。」
リトが出していた水球は、その場でぱあっと消えていきます。
「き……キミ……それは、なんなんだ? 言法……じゃないのか……?!」
リトは、ナッビさんに質問されましたが、サッと視線を逸らせてしまいました。
でも、そんなナッビさんも、やっぱり顔色を青くしています。
「ナッビさん。えっと、とりあえずお話聞かせてください。」
「は……はい。もちろんです。」
そうして私たちは、ナッビさんからお話を聞くことになりました。
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