61. ユウナ走る
前回のお話:お掃除……?
ヒルドルさんの号令が聞こえて――
建物の外に飛び出た私。
目の前に広がっていた、初めての"戦場"の光景。
呆気にとられて、思考停止しかけたけれど……
ムクの声で我に返り、とりあえず1人撃破しました。
襲ってきた人……スヴァルト族のように見えます。
お腹を押さえながら、激しくバタバタしていましたが、今は眠りについたようですね。
あ、早くリトを探さないと……!
「キュッ! キュイッ!」
――ててててっ
「あっ! エメ! 危ないから、ダメだよ!」
エメが走って行ってしまいました。
あー……こんな時にやんちゃするなんて……!
「ムク! 危ないから中に入ってて!」
「クェッ!」
私はエメを追って、走ります!
――ギィン! ゴッ!
「おらおらおら! 槍持ってるってこたぁ、ゲイル部隊だろ? 大した事ねぇな?」
「くっ……3対1なんだ、そんな好き勝手言わないで欲しいもんだな!」
ロタさんが、3人に襲われてる!
ロタさんは、3人の剣撃を器用に槍1本で捌いていました。
「棍!」
――ビュッ! ガコッ!
3人のうち1人目掛け、棒を打ち付けました。
「……うっ!」 ドサッ……
フラリとして、バッタリ倒れ込みました。
「なっ……?!」「誰だっ……?!」
残る2人がこちらに振り返った隙――
「ロタさん!」
「ユウナちゃん!助かる……!」
アイコンタクト。
「ロタさん!」
「あいよ!」
――ビュアッ! ゴッ! ブシュッ!
「……ごアッ!」「ぎゃ……っ」
残る2人を交差するように私とロタさんで倒しました。
ロタさんの槍に貫かれた方は……
助からないんでしょうね……。
「ロタさん! 私、エメと……リトが……!」
「ああ、いいから! 行きな! アタシは他の隊員助けて回るからさ!」
私は、エメの後を追いました。
エメが走っていった方向は、リトが向かった建物の方角な気がしました。
エメは分かってるのかも。
――ギィン! カァン! ビシャッ! ガギンッ!
「うおぉぉ!」「いけっ!」「おらぁっ!」
「いっいてぇ……っくそ!」「ぎゃあああッ!」
部隊の皆はそれぞれ散開してしまっているけれど、何とか頑張っているようです。
そこら中に響き渡る甲高い金属音と、怒号と悲鳴の中を、風のように走り抜け……
「キュイッ! キュイッ!」
いた! エメだ!
建物の扉の前です。扉は閉まっていました。
まさか……中にリトが?
走る勢いのまま
――バァン!
勢いよく、建物の扉を蹴破って中に飛び込みます。
「リト!? いる?!」
「ああん?」「なんだぁ? また獲物かぁ?」
2人の男の声。
「……あ、ユ、ユウナ……」
「リト!!」
部屋の隅に男たちに追い詰められるようにして、リトがいました。
――ビュッ! グザッ!
咄嗟にダーインスレイヴを投げ……リトと男の間に突き立てます。
「てめぇ! 何しやがる!」
「何って……そっちこそ……リトに……!」
ダーインスレイヴを投げた勢いのまま、一跳び。
スッと音も無く、左側の男の前まで……
「んなっ……!?」
即座にしゃがみ、シュッと足払い――
ダァン! と、男が倒れた隙に……
「クソがっ!」
振り向いたもう1人の背後へ……
「ぐぇっ……」 首を極めて……
「……ッ!」 膝裏を蹴り……
倒れる勢いで……
「……なにしてるのっ!!」
くるりと一回転させて……
バァン! 「……カッ!」
「リト! 大丈夫?!」
「う……ユ……ユウナぁ〜! ごめん……わたし……怖くてぇ〜……! うぅぅぅ〜!」
リトはぼろぼろと泣きながら、崩れ落ちるように座り込みました。
「リト〜!! 無事でよかったぁー!」
ガバッとリトを抱きしめました。
「……ってぇ……ちきしょうが!」
ガバッと最初に転ばせた男が立ち上がりました。
そうだった。1人は足払いで転ばせただけだった。
男は、剣を持ち上げて上段に振りかぶりました。
「死ねぇ――ッコッ!?」……ドサッ
パッとリトから離れて、男の懐に潜り込みながら、顎先に掌底の一撃。
男はどこかの王子様のように、大の字でした。
振りかぶるだなんて隙だらけですね。
「キュイッ! キュッ!」
「あ、エメ! リトの場所分かってたんだね。ありがとう。」
エメが走り寄ってきたので、撫でました。
エメは撫でられると部屋をくるくる回って、シュッシュッっと前足でシャドーボクシングをしてました。
なんだか、いつもの感じのエメですね。
少し気分が落ち着きます。
冷静でいないといけないので、助かりますね。
「リト。私、皆を助けてくるから、エメとここにいて? ロープ、あるよね? その2人は縛っとけばいいと思うから!」
「えっ?! わ、わたしもいくよ……!」
「あ、危ないから……。外、すごいんだよ……。あ! そうだ、ロラは?」
「あ……ロラ……外だ……!」
ああ、リトの事ばっかりに集中しちゃってた!
状況を冷静に……状況を冷静に……
判断は素早く……
お母さんの教え……
よし!
「私、見てくるから、リトはその2人縛っといてね!」
「えっ……あっ?!」
バッと、再び外に出ると、
「このヒルドル! 貴様ら如き相手にもならん! どんどん来い!」
ヒルドルさんの声がしました。
「うおぉぉ!」「一気にかかれぇ!」「手ェ貸せ!」
「3人じゃ無理だ!」「ぎゃあああ……ッ!」
人集りが出来ている所が、ヒルドルさんのいる所ですね。
ヒルドルさんは強いから心配はいらないとして……
ロラ……ロラ……
近くにいるはずだよね……
「おら、大人しくしろ!」
「キュアー! キュアーッ!」
建物の裏側から声がしました。
音の聞こえ方的に、左を向いてる感じだから……
建物右側から回り込んで……
「キュアー! キュアーッ!」
――ビュッ!
「クッソ! 暴れん――ぐべぇっ?!」 ボゴォ!
ロラの手網を無理矢理引っ張っている男がいたので、棒でお腹の右側を打ち付けておきました。
「ウグゥエ……おぅ……ッ…………」
バタンバタンゴロンゴロンしていましたが、眠ったみたいですね。
「ロラ、大丈夫? リトのところ行こ?」
「キュアッ!」
ロラを連れて、リトのいた建物に入ります。
「リト! ロラいたよ!」
「キュアーッ!」
「……ユウナ! ありがとう! ロラ……よかった……」
リトは、ロラに抱きついて喜んでいました。
「ううん。大丈夫! それより、縛れた?」
「えっと、手が……震えちゃって……無理で……」
リトは、さっき抱きしめた時も、カタカタ震えていました。
今も、顔色が悪いです。
リトは男の人苦手なのに……
囲まれて……
怖かったよね……
「大丈夫だよ! 私やるね! いつも狩りでやってたから得意なんだ!」
くるくるっと手足を縛って……
柱にも……っと……
よし!
「じゃあ、隠れててね?」
「あ、ユウナ……」
パッと一瞬リトを抱きしめて……
そうしてまた、戦場へと向かいます。
皆を助けないと……!
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