60. お掃除?あ。そういう……?
前回のお話:クマさん……!
――ギィン!!
激しく金属を打ち付ける音。
「我が名は風斬槍のヒルドル!!賊どもになど遅れはとらぬ!!総員!!既に乱戦だ!!同士討ちに注意せよ!!」
そして響くヒルドルさんの怒声……
「「おおっ!!」」
ゲイル部隊の皆の声……
「はっ……。野郎ども!!3人1組で掛かれば楽勝よ!!殺れぇーい!!」
何故か襲い来るスヴァルト族……
突然の出来事は、現実感が薄くて……
思考が止まりそうになりました……
……が。
「キュアッ!クェッ!キュアー!!」
ムクの声で、正気を取り戻せました。
「はっ?!ムク。リトは?!」
――ダッ!ギィン!!
「はっはー!ぼーっとしてんなよ?お、お前さんいいツラしてんなぁ。こりゃ楽しめそうだぁー」
咄嗟に槍型にしていたダーインスレイヴで、剣撃を防ぎました。
スヴァルト族の男のようでした。
顔は整っているはずなんですが、嫌な顔つきです。
「……う、なんなんですか!急に襲ってくるなんて!」
違う!そんなことより、リトを助けないと!
「へへへ……やりがいありそ――グボォアッ」……ドサッ
剣を受け止めていた槍を、くるりと反転させて、襲ってきた賊の鳩尾を石突で打ち伏せました。
ああ、もう!どうしてこんな事に……
――
少し話を遡ります。
ヴィヨンを倒した後、私たちは、巡回路の進路を変更しました。
廃村の跡地を、今は時々休憩などに利用する施設としている場所があるそうで、私とリトが初参加という事もあり、施設の点検がてら休憩に向かう事になったのでした。
場所も現在地からは遠くないそうで、うってつけらしいのです。
「最近様子を見てなかったからねぇ。草だらけだったりして。休憩になるのかねぇ。はははっ。」
ロタさんはそんな事を言って笑っていました。
「私は全然疲れてないので、草刈り頑張りますよ!」
「わ、わたしも、草刈りします。」
「お!頼もしい2人だな!アタシらは鍛えるのは好きだし得意なんだけどさ。そーゆー地味な事は苦手でさぁー。はははっ!期待してるよ!あ、でも、リトちゃん。あんな力使って、大丈夫なのかい?疲れたのなら、休憩はしとくれよ?」
「あ、はい。ありがとうございます。」
リトは、真剣な顔でありながらも、少し微笑みながらロタさんに答えていました。
リトもこの2ヶ月で、すっかりロタさんに慣れたみたいですね!
それから……30分くらいでしょうか。
広大な草緑の海の中に、ぽつりぽつりと建物が見えました。
石と木で造られた、少し和風の建物です。
時代劇とかの、庶民の家みたいな。
板葺き屋根というんですかね?
小屋みたいな感じです。
建物の数自体は、パッと数えられないくらいたくさんあるので、確かに村感はありますね!
一つ一つの建物の間隔が広くなっているところが道だったんでしょうね。
その道は、建物入口に面しているようです。
少し離れた場所には、柵の名残りみたいな杭が、その村を囲うように立っているようでした。
廃村内の道の真ん中辺りに到着したところで、ヒルドルさんの号令。
「よし!到着だ!では各自、先ずは1人1軒、内部の点検だ。散開!」
「「「はっ!」」」
私もとりあえず近くの建物をと思い、向かう事にします。
「リト!無理しないでね?また後で!」
「うん。ありがとう。また後でね。」
リトは反対側の建物を選んだようでした。
ロラをゆっくり進ませていました。
さてさて。
私も点検しますよ!
というか、しばらく来てないらしいので、どちらかというと掃除なのかもですね。
建物の周りは、そこまで草だらけという事もないみたいです。
そんなわけで、中をお掃除ですね!
「エメは、ムクと一緒に待っててね?私、お掃除しなきゃだからね。」
「キュッ?キュイッ!」
エメは何だか首を傾げた後に、いい感じの返事をしました。
ほんとに分かってるのかなぁ。
エメ、結構やんちゃだから、お掃除どころか汚し屋さんなんだよね。
ムクから降りると、意気込んで建物の引き戸を開けました。
「はぇー。中はこうなんだぁー。」
建物内部は、まずは土間になっていて、板張りの床になってる広めの部屋があり、その奥にも板戸があります。
やっぱり和風って感じですね。時代劇の家。
あの奥、どうやらもう1つ部屋があるようですね。
――カタン
「ん?」
奥の部屋から微かな音がしました。
なんだろう……?風の音……?
うーん。でも、外……あまり風強くないような。
あ!なんか動物でも住み着いちゃってる?!
でも、あんまり動いてないようで、足音は聞こえません。
ずいぶん大人しい動物ですね。
ナマケモノみたいな感じなんですかね?
それとも寝てるのかな。
住み着いた動物が何であれ、後でヒルドルさんに報告ですね!
――ガラッ
引き戸を開けると……
「くっ……くそぉっ!」
「えっ?!」
ブンっと棒のようなものでいきなり殴りかかられました。
が、スイッと避けます!
「な……っ!スヴァルト軍めっ!……風よ、大いなる風よ……我が言の葉に答え……」
「えっ……ちょ……アルヴ族?え、なんで……?」
あ、違う!攻撃されてる真っ最中だった!
――タッと駆け寄り……
クンッ……っと体勢を崩して……
ダァン!!
「ぐぅ……っ」
「ふう……。」
とりあえず全然意味が分からなかったけど、隙だらけで助かりました。
投げ飛ばしたら気を失ったみたいですね。
危ないところでした。
急に殴りかかってくるなんて、ひどい人もいたもんです。
うーん。
それにしても……動物でも住み着いてるのかと思ったら、アルヴ族とは……。
そりゃ動物には違いないかもですが。
ん?まさか……追手なんですかね……?
うーん?でも、スヴァルト軍が〜とか言ってたような?
うーん。わかりませんね!
とりあえず〜……えーっとぉ……
ゴソゴソとバッグを漁ります。
あ、あった。
色々便利なので、ロープとかバッグに入れてあるのです。
お母さんと違って、私は現地で作ったり出来ませんからね!
ヤルンのバッグはたくさん入るからありがたいですね。
備えあれば憂いなしというやつですね!
と、いうことで、捕まえたアルヴ族を後ろ手に縛って、柱に括り付けておきました。
言法も使えないように、口にも布を巻いて……
よし!これなら目を覚ましても安心安全ですね。
後でなんだったのか、ちゃんと聞かないとですねぇ。
私別に恨まれるようなことは……
「敵襲だ!!総員!!応戦せよ!!」
え?!ヒルドルさん?!
えぇー……?!な、なにが起こっているのでしょうか……
ありがとうございました!今回はいかがでしたか?
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