58. ムクとロラ
前回のお話:ロタさぁーん!
ゲイル部隊の訓練場は、軍施設らしく、部隊の皆さんの住む建物と、騎乗用ルクの住む建物があります。
スヴァルトの軍用のルクは、王都東の農業地区で育てられ、ある程度訓練も積んでから、各部隊に振り分けられるそうです。
ミュルク村ではスロールさんのルク牧場で、たまにお手伝いしてましたが、スロールさんのところのルクたちは、人懐っこい子が多かったと思います。
実は、リトがスロールさんから譲ってもらった金色のルクと、銀色のルク。
金色はルル、銀色はシルという名前なんですが。
あの子たちは、お母さんの長旅に、二羽とも連れて行ってもらったのです。
だから、今うちにはエメしかいなくてですね。
こうしてルクをお借りするわけですね!
「キュキュッ?」
なぜだかエメが不自然そうに首を傾げながらこちらを見ています。
エメは小さいから、乗らないから大丈夫だよ?
「さぁさぁ、ユウナ姫様。こちらの5羽の中から好きな子お選びくださいね〜」
ロタさんはすっごく上機嫌な感じで、からかってきました。
「もう!ロタさーん!姫とかやめてくださいよーもー」
「あっははははっ!リトちゃんも選んじゃってよ!」
「あっ、はい。ありがとうございます!」
なんだか、ロタさんは姉御肌って感じで、ちょっとハーナルさんを思い出すなぁ。
あっ!ハーナルさんといえば!
「リト!防具って持ってきてる?あと、武器も!」
リトがハーナルさんに作ってもらった防具と、ダーインさんに作ってもらった武器。
防具は、水色とベージュの胸当てと、白いローブなんだよね。
リトにはすっごい似合ってて、可愛いんだぁ。
武器は、細剣から弓になるやつ。
ロッドにするのかなーって思ってたけど、言法の威力は上がらないらしくて。
軽くてアルヴっぽいのにしたみたい。
ダーインスレイヴと同じ素材はなくて、二段変化が限界だったってダーインさんが言ってたけど、そもそも変化する武器っていうのがすごすぎるよね!
「うん。あるよ!」
「そっか!じゃあ大丈夫だね!ルク、どの子がいいかなぁ」
うーん。
順番に見ていこうかな。
えっとー。
厩舎はとても広いのですが、奥側の5羽が、まだ乗り手が決まってない子たちのようです。
黄色の子、黄色の子、少し緑っぽい子……
あ、水色が入ってる子もいるなぁ。
最後の子は〜……
「お、ユウナちゃん。ソイツは中々気難しいぞ〜?」
「え?そうなんですか?」
「そうなんだよ。幻獣の血を引いてる種なんだけどね。他の種より強靭だから、軍用には向いてるんだけどさ。懐きにくくてねぇ……って……?!えぇ?」
洗いたてのシーツとか新雪みたいに、真っ白な子でした。
「クエッ!クゥー!」
その真っ白な子は撫でて欲しそうに頭を近付けてきました。
なので、撫でてあげます。
とても人懐っこい子ですね!
可愛いなぁー!
「すごい可愛い子じゃないですかー!この子にします!」
「あ、そ、そう。そうね。リトちゃんは?」
「あ、わたしはこの子で!」
リトは水色の子を選んでました。
うん。リトにはよく似合ってるね!
「よし、じゃあ鞍を着けて、外に出して、一旦繋いでおいて。で、宿舎で着替えて出発だ!」
「「はい!」」
――――
ゲイル部隊の宿舎も、やっぱり和風建築でした。
王城ほどの入り組んだ造りではないですが、内部は木造ですが、外壁は下の方はしっかり石組みしてあります。
その一角に、なんとシャワールームが!
なんでも、ブロックルさんが広めたらしいです。
ほんとに何でも作っちゃうんですね。すごいです!
と、言っても今は急いでいるので使えませんが……。
私たちは、集合時間が迫っているので、早速のお着替えなんです。
訓練着から、ハーナルさんの防具に着替えます。
あ、そういえば!
「ロタさん。あの白い子ってなんて名前なんですか?」
「あ、わたしの水色のルクも、名前はあるんですか?」
「あー。乗り手が決まってなかったから、まだ無いねぇ。」
「えー?そうなんですか?」
「そうだねぇ。ウチの隊だとパートナー制だしねぇ。乗り手がしっかり愛着持てるようにって方針なんだよ。」
「なるほどー。そうなんですね。」
確かに、仲良しな方がいいよね。
うーん。でも、あの子……なんて呼んだらいいんだろ。
「ま、そんなわけで、好きに付けたらいいんじゃない?」
「「えっ!?」」
ちょっとびっくりして、リトとハモってしまいました。
「でもでも、私たちゲイル部隊に入ったわけじゃ……」
「まぁそうだけどさ。特にユウナちゃんが選んだルクは、多分誰も乗らないし、いいんじゃない?哨戒の手伝いってのも、今回だけってわけでもないんでしょ?」
それは……そうだけど。
でも、いつか空に光の橋が架かったら……
それに、槍術をちゃんと覚えたら他の隊にだって行きたいし……
いいのかなぁ。
「なになに?二人して難しい顔しちゃってさ!大丈夫さ。しっかり仕事をこなしたら、もらえるもんなんだよ。」
「「えっ?」」
あ、またリトとハモってしまいました。
顔を見合わせます。
「え、じゃあどんな名前にしよっか?」
「うーん。ユウナはどうするの?」
「えーっと、白いからぁ……無垢……ムクにしよ!」
「ムク?そっかー。ルクだし合ってる感じだね。わたしはどうしよう……。」
「リトの子は……なんか水色とか少し緑っぽかったり紫っぽく見えたり……なんかオーロラみたいだよね!」
「オーロラ?」
「うん!実物は……見たことないんだけどねー。空にね、綺麗な光のカーテンみたいなのがゆらゆらして……すごく綺麗なんだって!」
「そうなんだ……。オーロラ……。じゃあ、ロラにする!」
「ロラ!可愛い名前だね!」
私たちは、ついつい二人で笑い合っていたのですが……
「あっははは!仲良しなのはいいけど、早くしないと遅れるぞー?」
「「あっ!」」
急いで準備して、ムクとロラのところへ走りました。
――――
フルプレートアーマーに身を包んだ、ゲイル部隊の皆さん。
「整列!」
ルクに騎乗し、槍を持ち、ヒルドルさんの号令で皆整列します。
「ようし!全員揃ったな!」
「「「「はっ!」」」」
なんだか、こういうのは初めてで、ちょっと緊張ですね。
「今日も通常哨戒だ!だが、新人が二名だ!警戒は怠るな!」
「「「「はっ!」」」」
皆さんキビキビ動いてて、とってもかっこいいですね!
哨戒任務、いよいよ出発です!
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