夜空に橋が架かるまで
前回のお話:宇宙人……じゃなかった
ブロックルさんの鍛冶工房で、なんだか大変な感じの……この世界のお話を聞いた後、しっかりお礼を言って我が家に帰りました。
ブロックルさんは、最後に言ってました。
『エルフは総じて狭い世界に生きている。それは閉じ込められているからだ』って。
私には、なんだか難しい話でした。
うーん。狭い世界かぁ……
火の星から来たブロックルさんにしてみたら、一つの場所にずっといるだけのエルフたちは、そう見えるのかな。
確かに私も、森から出た時……同じようなこと思ったかも。
でも、私はまだまだエルフの世界の事だって、全然知りませんからね。
訓練もですけど、そういうお勉強も頑張らないとですね。
そういえば、前世のお兄ちゃん……
勉強は嫌いだー苦手だーとか言ってたけど、妙な事にはやたら詳しかったなぁ。刀とか。
お兄ちゃん、スヴァルトのお城見たら、すごく喜びそう。
うーん。私も何か興味を持てるもの、探してみようかな?
なんて、色々考えながらの帰路でした。
そして今。
晩御飯を美味しくいただいた後に、リトとエメとお散歩をしています。
「キュッキュイー!キュッ!キュー!」
エメはなんだか上機嫌みたいですね。
そして今日も、夜空は綺麗です。
万華鏡みたいな満天の星空に浮かぶ、大きな月と、小さな月。
あの大きな月に、神族たちが住んでるんですね……。
なんだかすごく不自然な話だなぁ。びっくりですよね。
神族かぁ……。
あの気持ちの悪い神様も、あそこにいるのかなぁ?
それとも、火の神様みたいに、自分の星があるのかなぁ?
「ねぇ、ユウナ。」
「ん?なぁに?」
星空を見て考え事をしていたら、リトが口を開きました。
「トゥレイア山って、あっちの方かな?」
そう言って、リトは夜空を指差します。
「えっとねー……確か、もうちょっとこっちかな?」
と、お母さんと一緒に越えてきた大きな山があった方を指差します。
「そっか……。光の橋、出てないね。」
「そうだねー。綺麗な星空だけど、橋?みたいなのは無いね。」
「ねぇユウナ。」
「うん?」
「これから、どうするの?いつ橋が架かるか、分からないんだよね……。」
「あ!それなんだけどね?そろそろ実戦でも……と思って!明日ヒルドルさんに、哨戒任務に連れてってもらえないか頼んでみようかなぁって!」
「えぇっ?!そうなの?!」
「うん。ほら、みんな訓練の後って、街の外とか行ってるみたいだし。お世話になってるからお手伝いにもなるし。」
「……じゃあ、わたしもいく。」
そう言ったリトは、なんだかすごく真剣な顔をしていました。
「うん!一緒に頑張ろうね!」
私は、リトの手をキュッと握りました。
いつもだったら、リトはわりと照れくさそうにするんですが、今日は……少し違うみたいでした。
――
翌日。
「よし!本日の訓練終了!」
「「「はっ!」」」
ヒルドルさんの号令で、訓練は終了です。
いつもだったら、ここでみんなに挨拶して帰るのですが……
「ヒルドルさーん!」
「ん?どうした、ユウナ殿。」
「あの、私とリトも哨戒任務のお手伝い、させてください!これから行くんですよね?」
今日はヒルドルさんを呼び止めて、お願いをしました。
したのですが……
「な、なんだと?いや……うーん。ユウナ殿は亡命者とはいえ、賓客扱いとなっていてなぁ……。リト殿も、正式な旅人だし……」
ヒルドルさんはものすごく複雑な表情です。
そしてなんだかあんまりいい返事じゃないみたいでした。
ちょっとショックです。
「えぇー?!ダメですかぁ?!みなさんにはお世話になりっぱなしだし、それに実戦ももっと学びたいし……」
「い、いや……ダメというか……」
「わ、わたしからも!お、お願いします!」
どうも旗色が悪い私。そしてそこにリトも参戦です。
「む、リト殿……。ふーむ。リト殿は……槍はまだまだだが、言法は得意なんだったな?」
「あ、はい。言法……というか、象言法という異能ですけど……。普通の言法より色々出来ます。」
リトは、キリッとした顔をしました。
なんだろう。今まであまり見た事がない表情ですね。
とても可愛いです。
「うーむ……。二人とも戦力としては申し分はないのだが……」
そうそう!リトはすごいんですよ!
私だって狩りなら慣れてるんです!
「……だったら!」
私がまたお願いしようとしたところに、ザッと足音がしました。
「たーいちょー!いいじゃないですかぁ。連れてってあげれば。」
「ロタさん!」
ロタさんが援護しにきてくれました!
「いや……ロタ、しかしだな。」
「我々だって、そうして強くなってきたんじゃないですか。二人ともアルヴ族だけど、我々にも引けを取らない気持ちがあるじゃないですか。こうして毎日訓練に欠かさず来て。立派なもんじゃないですか。肌の色は違いますけど、魂の色は我々と同じじゃないですか。……どっかの王子とは大違いですよ。」
ロタさん……。そんなふうに思ってくれてたんですね。
なんだか嬉しいなぁ。
「こら……ロタ。それは……」
「おっと。王子は余計なことでしたね。まぁとにかく隊長。最初は慣れてもらうって事で、見学って形でも、ね?」
うん。どっかの王子様って、アレですよね?多分。
いらない話ですね。いらないです。
「うーむ。まぁ我が国としても、二人のような戦力は中々おらん。そうだな。許可しよう。」
「え!?いいんですか?!」
「ああ。無茶だけは、絶対にしてくれるなよ?やる気があるのは分かるが、ユウナ殿は危なっかしいからな。」
「わーい!やったー!ありがとうございます!やったね、リトぉ!」
「うん!」
私はリトとギュッと抱き合いながら、ぴょんぴょんと喜び合いました。
「では、ロタ。二人をルク小屋に案内してやれ。」
「はっ!お任せを!」
ロタさんは、ビシッと姿勢を正したあと、こちらに視線を向けると……
パチンとウインクをしました。素敵な人ですね!
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