55. フェアランドへの道
ブロックルさんに、リトを連れてくるように言われた翌日。
早朝。
今日も、いつものようにゲイル隊の皆さんに混ざって、私とリトは、訓練に励んでいます。
その様子を、少し離れたところから、エメが見守って?いてくれます。
エメは、時々私の動きに合わせるように、
「キュッ!」
とか言ってる時があります。
たまに……いえ、結構やんちゃだけど、可愛いですね!
「はぁ……はぁ……ユ……ユウナ……!」
「ん?なぁに?」
隣で槍を振るうリトが、吐息混じりに話しかけてきました。
「なんで……はぁ……そんな……平気そうなの……?」
リトはちょっと苦しそうでした。
そりゃ訓練初めて……二ヶ月くらい?かな?それくらいの時間だし仕方ないと思います。
むしろ、肉体派なスヴァルトのゲイル隊の訓練についてきてるだけでも十分すごいと思うけどなぁ?
私が訓練始めて二ヶ月くらいの頃は、もっと出来なかったような?
「んー……私は慣れてるからねー。あ、ほら!リトはさぁ、鳥さんのお世話、すごく慣れてたり、薬草見つけたりするの上手だったよね?」
「……はぁ……はぁ……ま……毎日やってたから……」
「私は二年間だったけど、午前中の訓練と、慣れて来たら早朝の狩りも増やしたりして、ずっと身体ばっかり鍛えてたからね!多分、スヴァルトのひとたちと同じような感じだったんだと思う。リトはさ、午前中はずっとお仕事頑張ってしてたでしょ?私はーその時間をーこうやってぇー」
くるくると槍を頭上て振り回し、回転の勢いをつけて――
そのままの勢いで、地面に少し斜めに突き立てて――
「よっ……と」
――ブワッ!
「わ……!すご……!」
槍の反動を利用して空高く跳び上がり、そのままくるくると六回転宙返りをして――
ザッ!っと着地です!
「こーんなことばっかりしてたんだ!」
ふふふー。リトも驚きの表情です!
いっつもリトには象言法の異能で、すごいところばっかり見せられてるし、私だってたまにはやれるところ見せないとです!
うん。やっぱり槍を使うと、いつもよりかなり高く跳べますね!
「こら、ユウナ殿。急に派手な動きをしては皆が驚く。」
「はーい。ごめんなさい。」
ヒルドルさんに叱らてしまいました。うっかりですね。
私も二ヶ月経って、槍の扱いそのものや、やわらか武器術への落とし込みが、少しずつまとまってきてるように思います!
「いや、しかし……ユウナ殿の身体能力には驚かされるばかりだな。たった二ヶ月で、そこまで操るとは。」
「えー。ほんとですかー?嬉しいなぁ。でも、まだまだヒルドルさんには槍では全然……」
「いやいや、槍術の訓練に実戦にと、私が何年費やしたと……。200年だぞ?200年。まだまだ負けられるか。全く。」
「わっ……」
ヒルドルさんは、私の頭をガシガシと撫でました。
なんだろう、部活とかやった事なかったけど、頼れる先輩とかコーチって、あんな感じなのかな?
なんというか、サバサバとして爽やかで、お母さんとは違ったカッコ良さがあるなぁ。
それから終了の時間まで、リトと二人並んで、黙々と槍を振るいました。
――
「ゲイル隊の皆さん!今日もお疲れ様でした!ありがとうございました!」
「……ありがとう……ございました!」
リトと二人で、挨拶をして帰路につきます。
「キュッ!キュイー!」
あ、エメも挨拶みたいにお辞儀をしていますね。おりこうさん!
「おー!こちらこそ!お疲れ様!」
「お疲れ様!また明日な!」
「おつかれ!気をつけて帰れよ!」
ゲイル隊の皆さんは、気持ちのいい挨拶を返してくれます。皆爽やかな笑顔だなぁ。
やっぱり訓練はいいですね!少しずつ出来る事も増えるし、皆親切だし!
私はミュルク村でも、お母さんがずっと訓練してくれたってこともあるけど、動く身体を手に入れて、それを精一杯動かしながら、新しい事を次々に出来るようになっていくのが、すごく……すごく好きな時間だなって思います。
「はーい!また明日ー!」
私はゲイル隊の皆にぶんぶんと手を振り、帰路につくのです。
が……
訓練所の門を出て、自宅方面の道に出ると……
「ふっ……。ユウナ。今日も一段と麗しいな。」
ああああ……出ました……!
リーグ王子です……!
銀の長髪をそよ風にたなびかせ、壁に少しもたれながら、褐色肌の整ったその笑顔から、白い歯をキラリと輝かせています……。
「……」
私は、無言ですたすた歩きます。
リトも疲れているので、やはり無言でとぼとぼ歩きます。
「ユウナよ。そろそろ、どうだ?一度、余とゆっくりお茶会でも……」
「……」
「……ユウナよ。聞こえておるのであろう?」
「……」
「どうした。疲れておるのか?珍しい事もあるものだ。」
「……」
「うむ、それはいかんな。どうだ、疲れておるのなら、少し休憩していかぬか。景色が綺麗なところがあってな。」
「……」
「おい、ユウナ。余は話しておるぞ?」
ああああああああああああああああ!!
しっつこい!!しつこいよー!!もー!!
今日は帰ってお風呂入ったら、お昼ご飯食べてブロックルさんのところ行くのー!!邪魔しないでよもー!!なんなのぉー!!
「ユウナよ。余は紳士的?にしておるだろう?暴れるのは良くないと言っておったのはお前であろう……」
リーグ王子は、すっとその手を私の顎に……
「いやぁ!触らないで!!」
――ガッ!!ドサッ……
「キュキュキュッ!」
何やらエメが口元を押さえるようにして声を出していました。笑ってるのかな?
そうして、私とリトとエメは、帰路につく事が出来ました。
え?リーグ王子?どちらさまでしょうか。知りませんよ?多分知らない人ですね。
――――
――
――コンコンコン
「ブロックルさーん!」
移民街の一角、太くて立派な煙突のある、白い壁と瓦屋根の木造建築。
あまり日本では見た事ない感じの建物だけど、和風なんだよね。
私がよく見学してた窓は、ガラス窓みたいな感じの窓だけど。
ガラス……ではないのかも。透明だけど、すごく丈夫そうだったし。
「おう、嬢ちゃんか。入れ。」
中からブロックルさんの、渋い感じの声がしました。
リトが、キュッと袖を掴んできたので、手を繋ぎます。
リトの顔を見て微笑むと、少し不安そうな笑顔を返してくれます。
「はーい!お邪魔しまーす!」
「あ……お邪魔します……。」
そうして、扉を開け二人で中に入りま……
「キュッ!キュイッ!」
あ、エメもついてきてたんだった。
さあ!私とリトとエメで、ブロックルさんの鍛冶場訪問です!
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