世界不思議発見
前回のお話:うんうんうんうん
「えぇっ?!わたしも行くのぉ?!」
ブロックルさんの鍛冶工房でお話した後、お家に帰ってから。ご飯の用意をしながら、ブロックルさんに言われた事をリトに話したら、何だかすごくびっくりしていました。
「うん。ブロックルさんが一緒にって」
「あの……怖い感じの人だよね……?」
あー……。
リトは男の人が苦手だったかも。
ダーインさんとかにも全然慣れない感じで……。
でもスヴィーウルさんは平気そうだったんだけどな。
うーん。
「えー?怖い……かなぁ?なんかずんぐりしてて、ちょっと可愛くない?」
「え、え?か……かわ……かわいい?ユウナ……ウソでしょ?あ、あの人……は、迫力がすごいというか、威圧感というか……こ、怖いと思うけどな……。いや……でも、ユウナなら……おっきくなったナイの事も、可愛いとか言ってたし……」
リトは、なんだかだんだん声が小さくなっていってました。
「そうそう!ナイだよ!」
でも、そのリトの言葉に、聞き逃せない名前がありました。
実は……私がスヴァルトに来てからしばらくして、ある"お知らせ"があったのです。
あれは、お母さんが旅に出てすぐのこと……
――
その日。
朝の訓練の後のお風呂上がりに、縁側でぼーっとお庭の桜を見ていました。
エメはその日もとても元気で、
「キュッキュイ!キュイー!」
と、ぶんぶん槍を振るようなアクションをしていました。
多分、ゲイル部隊の訓練についてきてたから、エメも練習してるんだろうな(笑)それとも私の真似かな?
でも、突いたりは出来ないみたいなんですよね(笑)
しばらくそうしてエメはぶんぶんぶんぶんしてたんですけど……
急にピタッと止まったんです。
桜の樹の前で。
「ん?エメ?どうしたの?」
「キュッ……キューイッ!」
私が話しかけてもこっちを見ませんでした。
エメは桜の樹の方を見てて……
すると額の宝石が赤く光り出して……
その光が、桜の樹に当たった瞬間、桜の樹から緑の小さな光が出てきて……
ふよふよと漂うように、近づいてきました。
「キミ、キミ」
そして、小さな子供みたいな声が。
「えっ?」
「ユウナ?ユウナ?」
「え、そ……そうだけど……」
小さな緑の光は、そのままふよふよと、こっちにどんどん近づいてきました。
「むらさき、むさらき」
「紫?」
「うんうんうんうん」
「つの、つの」
紫……角……?え……もしかして……
「ナイ?!ナイのこと?!」
ちょっとびっくりして、少し声が大きくなってしまいました。
「ユウナ?!どうしたの?ナイ帰ってきたの?!」
部屋で訓練疲れを癒してたはずのリトが私の声に反応して、こっちにきました。
「え、いや……えっと……んと、なんか、エメが光ったら、桜から光が出て……」
私はあんまり上手に説明出来ませんでした。
「えぇ……?どういう……え?それ……妖精?!」
リトは、ふよふよした光を見て驚きました。
よかった。私も驚いたもん。普通驚くよね?
「はぇー。これが妖精さんなんだぁー。初めて見たぁー。世界不思議発見だねぇー。こんにちは、妖精さん。お名前はなんていうの?」
姿は全然わかんなくて、小さな緑の光の粒みたいな感じだけど、どんな名前なんだろ?
「そうだよ、だよ」
妖精さん、ソウっていうんだぁ。
子供みたいな声だし、似合ってるなぁ。
「ソウっていうの?可愛いね!よろしくね!」
「えっ?えっ?」
あ、そうだ。肝心なこと聞かないと。
多分教えに来てくれたんだよね。
それとも、エメが呼んでたのかな……?
「それで、ナイ……紫の子が、どうしたの?」
「むらさき、むらさき」
「フェアランド、フェアランド」
「えっ?!ナイ、フェアランドにいるの?無事なんだね?」
ナイにフェアランドに旅に行きたいって言ったことあるから、そっちに行っちゃった?!
でも、あんな強い竜と戦った後に……そんな行き方もわかんないようなところに行けるのかな……?
「うんうんうんうん」
「帰って……これるの?」
ナイ、今どうなってるのかな……何してるんだろう……。
どこに住んでたとかも、分からないって言ってたけど、フェアランドが故郷だったのかな……?
帰巣本能っていうんだっけ?そんな感じかな……?
「ねてる、ねてる」
「寝てる……もしかして、動けないのかな……」
ナイ、じっとすると元気出るって言ってたけど、寝てるわけじゃなかった。
ナイはいつもあんまり動かずにじっとしてたけど、寝なくていいって言ってたし……。
やっぱりあの後、なんかあったんだ……。
「ユウナ、ユウナ」
「うん?なぁに?」
「マザー、マザー」
「マザー?」
マザーって、お母さんのことじゃないよね?今頃アルヴ国に向かってるはずだし。
この子のお母さんかなぁ?
「きなさいって、きなさいって」
「フェアランドに、私が行けばいいの?」
「うんうんうんうん」
「ナイは、大丈夫なんだよね?」
「うんうんうんうん」
「よかったぁー!わかった!フェアランド、行くよ!絶対行く!」
フェアランド。
リトとも行きたいねって何回も話してたけど。
占い師さんにも行けって言われたけど。
ナイがいるなら、絶対行かないと。
ナイはあの時、私のために頑張ってくれた。
今、私が無事で生きてるのは、ナイのおかげだし、今度は私が迎えに行ってあげないと!
「まってるね、ね」
私はいつの間にか拳を握りしめていました。
妖精さんの声のする方を向いたら、緑の小さな光の粒は、桜の樹の近くにいました。
「あ、うん!絶対行くね!ありがとう!」
「キュッ!キュイッ!」
エメの赤い宝石が光って、桜の樹を照らすと……
小さな緑の光は、消えていました。
その日私は、フェアランド行きへの決意を改めて固めたのでした。
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