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48. 決闘……だと思ってたのに。

前回のお話: リトぉー!

 

 リーグ王子は、決闘だ!と宣言すると、つかつかとゲイル隊の訓練場へと入って行きました。


 私たちも、仕方なく後を追います。


「ユウナ……。決闘って……大丈夫なの?」


 リトは、とても不安そうな顔をしていました。


 ミュルク村では、こんな事無かったので、当然かも知れません。


「うーん。スヴァルト族ではよくある事みたい。命の取り合いみたいなのじゃないから、大丈夫だよ!」


「スヴァルト族は相変わらずだねぇ……。取引で揉めるといつもそうだったよ。嫌な思い出だ……。」


 スヴィーウルさんは、何か思い出したのか、頭を抱えていました。


 いつかお母さんが言っていた、『考え方がだいぶ違うから、国交が自由ではない』という話は、こんな所も一因なのかも知れませんね。


「さあ、ユウナよ!得物はどうするのだ!」


 いち早く訓練場の中央に立ち、仁王立ちする王子は、大きな斧を地面に突き立てていました。


 王子……パワーファイターだったんですね……。


 顔には似合わないですが、言動には……合ってる気がしますね。


 確か、脳筋っていうんですよね。

 漫画で読んだ気がします。


 それは、良いのですが。


 あれ……当たったら、私、真っ二つに別れちゃいそうですね。


 命懸けになる予定じゃなかったんですけど……。


 おかしいな?


 まぁいいです。


 とにかく頑張って避けないと!


 ここはやはり、やわらか格闘術の出番ですね!


「私は、コレでいいです!」


 拳を握って、前に出します。


 正直、槍術はまだ慣れて無いので、はっきり言って、避けきる自信が無いです!


 剣とかなら、それなりに慣れてはいますが……


 ダーインスレイヴだと、切れ味が良過ぎて危ないので……。


「……聞いた通り、素手なのだな。まぁ良い。」


 リーグ王子は、グワッと斧を振り上げて、頭上に構えた。


 私も、遠間で半身に構える。


 そして、少しだけ目を閉じて、身体に意識を巡らせる。


 うん。

 さっきまで身体をしっかり動かしていたので、ウォーミングアップはバッチリです!


「では、参るぞ!!」


 掛け声と共に、巨大な斧を抱えているとは思えないスピードの踏み込みから、鋭い一閃が放たれ――


 さっきまで私が立っていた地面が轟音を上げて大きく抉れ飛んでいった。怖っ。


「む、避けたか!」


「そりゃ避けますよ?!」


 何を言ってるんですかね?避けないわけないじゃないですか。


 王子の右手方向へ避けざま、足払いを仕掛け……たのですが、王子の足は、根が張っているように動きませんでした。むー。


「甘いッ!」


 またしても斧が襲いかかってくる。


 速くはありますが、見えないスピードでは無いので、王子の背後から首に飛びつき、落としに掛かった。


「ぐっ……な゙……!ごんな゙っ……!」

 

 王子は、斧を取り落とし、私の腕を外そうと掴み掛かってきた。


 腕を潰されたくは無いので、パッと手を離して背中から飛び降りると、膝裏に蹴りを放つ。


 バランスを崩した王子の正面に回り込むと、全体重を掛けてマウントポジションを取る。


 さらに、首筋目掛けて手刀を打ち下ろして――寸止めした。


「ふぅ~……。どうですか?」


「……う、うむ。そうだな。」


 王子は、何故か目を閉じました。


 そして、


「……良い感触だ。」


 と、しみじみ……といった感じで呟きます。


「……へっ?」


「この……柔らかさの中にある弾力と、手に吸い付く様な滑らかな触り心地……。

 ううむ……。余の思った通りだな。

 これは、まさに傾国に価するものと言えるぞ……。」


「……あっ!」


 何を言っているのかと思ったら、私の太腿……内股をさすっていたのです……。


「い……いやああぁぁぁぁぁ!!!!!」


 ――


「うぅぅぅ……男の人嫌い……。」


「ユウナ……。ま、ま、まぁ、ほら、勝ったんだし?!もう、来ないんじゃないかな?ね、ね?」


 あの後、リトが言うには、私は全力で王子の顎先に掌打を叩き込んでしまったようでした。


 気が付いた時には、王子は私の下でノビていたので、多分本当だと思います。


「うぅぅぅ……。あんなの決闘じゃないよぅ……。あの人……痴漢だよぅ……。」


「ああっ……ほら、そんなに泣かないで?ね?

 ……あ、そうだ!

 お風呂!お風呂一緒に入ろ?ユウナ、お風呂、好きだよね?ね?お風呂で綺麗にしたら、ね?大丈夫だから!」


「……入る。」


 リトは、落ち込む私を、家に帰る間中ずっと、一生懸命慰めてくれました。


 スヴィーウルさんは、私達のちょっと後ろを、無言でとぼとぼ歩いていたように思います。


 ――


「マリーカさん!」


「リトちゃん!スヴィーウルも!」


 家に帰ると、お母さんは庭に花壇を作っていました。


 リトと、スヴィーウルさんを見て、その作業を止めて驚き、そして安心したような、喜んでいるような、そんな顔をしていました。


 そうなんです。


 とても喜ばしい日のはずなんです。


 あの王子が来なかったら、ものすごく素晴らしい日になったはずでした。


 私だって、すごく嬉しかったのに。


「……ただいま。」


 そんな気持ちのまま出した声は、自分でもびっくりするくらいに、暗かったのです。


「ユウナ?何かあったの?」


 また、お母さんに心配をさせてしまいました。


 お母さんは、優しい声で聞いてくれます。


「うん……。あのね……」


 お母さんに、変な王子の事を話しました。


 いつまでもこんな風じゃダメだって、分かってるけど……


「そう……。大変だったわね……。」


 と、抱き締めて撫でてくれるお母さんに、つい、甘えてしまうのでした。


 前世の私は、あまり多くの人と関わる事がありませんでした。


 小さい頃から病院に居る事が多くて、遊びに行ける身体でもなかったので、友達もいませんでした。


 深く関わるのは、家族だけ。


 でも、家族は優しかったし、そこには特に不満はありませんでした。


 この世界に来てからは、動ける身体になって、色々な体験が出来るようになりました。


 それは、とても楽しい事。


 まだ……たった2年くらいですが、日々の密度が濃い感じです。


 でも、色々出来るという事は、その分失敗や、嫌な事も増えるという事なんですね。



 強い心を……と、思ってるはずなのに、すぐには中々上手くいかないみたいです。


お読みいただけまして、ありがとうございました!

今回のお話はいかがでしたか?


並行連載作品がある都合上、不定期連載となっている現状です。ぜひページ左上にございますブックマーク機能をご活用ください!


また、連載のモチベーション維持向上に直結いたしますので、すぐ下にあります☆☆☆☆☆や、リアクションもお願いいたします!


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