47. もっとおかしい王子様は、感動の再開の邪魔でしかない。
前回のお話:嫌ですけど。
スヴァルトの王都は、森の中という訳ではないので、ミュルク村より光が強いです。
でも、朝日を浴びながら流す汗は、何だかとても爽やかに感じました。
早朝から始まる訓練というのも、とても良いものですね。
この時間帯は、ミュルク村では狩りに充てていた時間ですが、しばらくは……こうした武器術の訓練の時間になるんだろうな。
「ゲイル隊の皆さん!今日はありがとうございました!明日からもよろしくお願いします!」
「ああ、またな!」「良い刺激になったよ!」「帰り道は分かるか?」
「あはは!道は大丈夫ですよー!真っ直ぐ行って左です!」
「アタシらは哨戒に出るからさ、迷ったら誰かに聞くんだぞ?」
「はーい!」
朝の訓練が終わって、皆さんに挨拶をして、訓練場を出ます。
ゲイル隊の皆さんは、良い人ばかりです。
槍の事もそうですが、色々と教えてくれるのです。
この国の事とか、この辺りの事とか――
「おい!ユウナ!」
訓練場を出た所で、大声で呼ばれました。
ちょっとびっくりしました。
まだこの街に知り合いは多くないのですが……。
でも……この声は聞き覚えがあります。
「えーっと、王子様……まだ何かご用ですか?」
「さっきは話の途中であっただろう!お前が忙しいというから待っていたのでは無いか!」
待ってた……?え?嘘?2時間も??
……王子様って、暇なんですかね?お仕事とか無いのかな?
「話の途中……??」
そうでしたっけ?途中……だったかなぁ?
えぇ〜〜……??どうしよう?わかんない。
アレ??結婚は嫌って、言ったよね??
何の話の途中なんだろう……??
他に何か話してたかなぁ……??ん〜〜…………。
「お前は、余に嫁げ!!」
「……えっ?!それですか?!嫌って言いましたよね??」
その話、まだ続いてたんですかー。知らなかったです……。
「だから、何故だ!!何故嫌などと言うのだ!!」
「いや、何故って……私、旅人になるとお話したと思うのですが……?」
「そんなもの止めて、余に嫁げば良いだろうが!」
どうしよう、ちょっと何言われてるのか分からなくなって来ました……。
「早く、はいと言え!大目に見て、うんでも許そう!さあ!」
どういう二択なんでしょうか……。実質一択な気がするのですが……??
えぇー……??こういう時って、どうしたらいいんだろう。
嫌って、言ったのに……。
私は、もうわけが分からなくなって、王子を投げ飛ばしたくなっていました。
ちょうど、そんな時でした。
金色のルクに跨る水色の髪の少女が、街の門をくぐり抜けるのが見えました。
「リト……だ……。リト……!リトぉー!!」
気付いたら、全力で走り出していました。
私の声に気付いて、キョロキョロしていたリトも私を見付けたみたいでした。
「えっ……ユウナ?!ユウナ!」
リトは、ルクから降りると、両手を広げました。
私は、そこに目掛けて飛びつきます。
「リトぉー!!会いたかったよぉぉぉ……。無事で良かったぁぁぁぁ……!!」
リトの……匂いと温もりを精一杯噛み締めます。
「ユウナこそだよぅ……。無事で……本当に……良かったよぅ……ううぅうぅ……。」
リトは、泣きながら耳にキスをしてくれました。
「あっ……。」
リトが、そんな事をしてくれたのは初めてだったので、少し驚きました。
でも、とても……嬉しい。
「……嫌だった?」
「ううん……。ちょっと驚いた、だけ。私も、していい……?」
「うん……。いっぱい……して?」
私も、お母さんとしかした事無かったのですが、許可が出たので、たくさんしました。
なんというか、すごく……満たされるような感覚がありました。
「ユ……ユウナちゃん、リトちゃん。な、なんというか、本当に仲良しだねぇ……。」
「あ。スヴィーウルさん!?」
「やぁ。無事で何よりだよー。本当にさ……。
例の話を聞いた村の皆は、そりゃもうカンカンだったよ。色々物資持って来たからさ、後で説明するね。マリーカさんは何処かな?」
「あ、うん!スヴィーウルさんも来てくれたんだね!ありがとう!お母さんも無事だから!案内するね!」
少し名残惜しいけれど、リトから身体を離して、二人を新居まで案内しま――
「な……な……な……お……ま……ゆ……ユウナ!!」
行く手を阻む様に、王子様が立ち塞がっていました。
こちらを指差し、ぷるぷるとしながら。
聞き取りにくいですが、どうやらまた呼ばれたみたいです。
「あの。もう家に帰りますので、通してもらえますか?」
「そやつは、何なのだ!」
リーグ王子は、リトを指差していました。
リトが気になるのでしょうか?渡しませんよ。
「何って、リトです。私の、大事な人です。」
「ユウナ……。」
リトをちらっと見たら、頬を赤く染めていま……耳まで真っ赤でした。……可愛いなぁー。
早くお家に帰って、たくさんお話したいなぁ!
「だ……大事……だとう?!女であろうが!!」
「そうですけど……??」
どこからどう見てもリトは可愛い女の子ですけど?
うーん……。
リーグ王子って、朝からずっと怒ってますけど、本当に何なんですかね?
「くっ……!かくなる上は……決闘だ!!決闘で決めるぞ!!」
「えぇー……決めるって、何をですか?」
「決まっておろうが!ユウナが、余に嫁ぐかどうかだ!」
嫌だって言ってるのに……。全然聞いてくれない。
どうやらやるしかないようですね。
「……いいですよ。」
「え?え?ユウナ、嫁ぐって何?あの人、誰?!」
リトは、キョロキョロしながら小声で聞いてきました。
状況が分からないようです。
そりゃそうですよね。私もよく分かっていませんから。
「リーグ様。この国の王子だって。」
「はぇー……。王子……様?に、求婚されてるの?」
「もう断ったのに。なんかそうみたい。」
「えぇー?王子様に求婚って、ユウナちゃん凄いねぇ!」
スヴィーウルさんも、驚きの声を上げていました。
凄いかどうかは知りませんが、私もすごく驚いています。
「ふん。やるとなれば、余は手加減などはせぬぞ!」
「はい。大丈夫です。私も、ただでやられるつもりはありませんから!」
「よし。ならば、訓練場に戻るぞ。ついて参れ!」
スヴァルトの流儀というやつですね。
プロポーズまでこうなんですねぇ……。
何だか、すごい気がしてきました。
っと!感心している場合じゃありませんね。
これは、絶対に負けられない戦いでした。
うーん……。どうしようかな。
お読みいただけまして、ありがとうございました!
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