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42. 変わった生き物

前回のお話:山の麓に着いた!

 

 謎の包囲網に意識を集中してしばらくの間、その動きには全く変化がありませんでした。


 目的も不明です。


 ただ遠巻きに囲まれているという感じでした。


「さ、ユウナ。準備出来たわよ。」


「はーい!」


 今日もお母さんのご飯はとっても美味しそう!


 器を受け取り、さあ食べよう!


 そう思った時でした。

 その包囲網の一角が崩れたのは。


「あっ! お母さん――!」


 と、言いかけた時には、既にその気配は、私の隣に居て……


 ――クンクン


 と、器の中の匂いを一生懸命嗅いでいました。


「キュッキュィ! キュイッ!」


 見た事の無い生き物でした。


 エメラルドグリーンの身体は、ぼんやりと光っていて、額には紅い宝石? 宝石……なのかなぁ?


 何で額に宝石が付いてるんだろう?

 角……ではないよねぇ?


「キュッキュイー!」


 そのエメラルドグリーンの生き物は、器を前に何かを一生懸命訴え掛けていました。


「あ、欲しいのかな? お腹空いてる?

 お母さん。この子……なんだろ?

 何の生き物かな? ご飯あげても大丈夫かなぁ?」


「それは幻獣ね。カーバンクルと呼ばれる幻獣……。

 滅多に姿を見る事も無いし、普通は懐きもしないのだけど……こんなに近付いて来るだなんて……」


「そうなんだ……。お母さんの料理って、やっぱりすごいね。」


 人馴れしない生き物を手懐ける料理とは……。


 さすがお母さんです。


 ――ガサッ


「あ、またきた。」


 包囲網は徐々に崩れて、次々に茂みから姿を現した謎の生き物達。


 それは変わった感じの動物……といった感じでした。


 それを見たお母さんは順番に名前を教えてくれるのですが……。


「ラタトスクに……、アクリスに……、ユニコーンに……、獬豸?! あ、あれは……ト……トロル!? ユウナ!」


 お母さんは、人型に近いずんぐりした生き物を見て、とても驚いていました。


 でも、そのトロル? からは攻撃の意思は感じられません。


「お母さん、皆ご飯食べたいみたい。なんだろ? 料理の匂いが気になって様子を見てたみたい。」


「え?」


 そこから先は大変でした。


「お母さーん! シチューは大丈夫そう!」


「こっちも、もういいわ!」


 とにかく、皆よく食べるんです。


 私も、頑張って手伝いました。


「グガガ……!」


 トロルという種族が一番たくさんいました。


 そして、一番たくさん食べます。


 今も空になった器を見せて、催促しています。


 大食いの赤ちゃんがいるなら、多分こんな感じですね。


「えぇ〜? もっと食べるのぉ~?!」


 何だろう。


 アルバイトってした事無かったけど、レストランとかだとこんな感じだったのかな?


 作って運んで忙しい忙しいです。


 その日は、そんな感じの賑やかな夜でした。


 ――


 翌朝。


「キュッキュッキュイィー!」


 カーバンクルだけは何故かまだ居ました。


 昨日あんなに食べていたのに、お腹空いてるんですかね?


 私たちは旅の途中なので、朝起きてすぐにご飯というわけではないのですが……。


「朝ご飯なら、まだだよ?」


「キュッ?! キュイー……」


 その事を伝えると、なんだかしょげていました。


 なんというか、つぶらな瞳で可愛らしいのですが、ご飯は無いのです。ごめんね?


 夜営用にお母さんが作った穴を埋めて、出発しようかという時。


 カッカッと蹄の音がしました。ユニコーンです。


 ユニコーンは、私達の前に来ると、スっとしゃがみました。


 クイクイと顔を振って、乗れと言っているようです。


「乗っていいの?」


「ブルル……」


 コクコクと頷くユニコーン。


 サイズとしては、あまり大きくないんだけど、 二人も乗って大丈夫なのかな?


「お母さん、どうしよう?」


「せっかくの機会ね。乗りましょうか。」


 私達がユニコーンに跨ると、カーバンクルも

「キュイッ!」

 と言ってユニコーンの頭の上に乗りました。


 ついて来る気なんですかね?


 まぁ、お友達同士みたいだし、迷わず帰れるのかな?


「じゃあユニコーンさん。あっちの方にお願いね!」


「ブルル!」


 すくっと立ち上がり駆け出すユニコーンは、山道なのに揺れも無くて、ふわりとした乗り心地でした。


 ――


 ユニコーンに運ばれて、あっという間に山の反対側に着きました。


 ちょうどお昼くらいだったので、ユニコーンとついでにカーバンクルにもご飯をあげたのです。


 ご飯を食べたユニコーンは、満足そうに嘶いて山に帰って行きました。


 が……


「キュイッ! キュー……キュイ!」


 なぜか、カーバンクルは山に帰りませんでした。


「お母さん、どうしよう。家も無いのに、飼えないよね……。」


「家……は、良いのだけど……。こんな珍しい幻獣を連れて行くのは……スヴァルトで、どんな目に遭うか分からないわね。中には幻獣を捕まえようとする者もいるでしょうし……」


「キュッキュッキュイキュイー!」


 悩む私達とは対照的に、当のカーバンクルは、なんだかやたらと張り切っている様子なのです。


 歩き出してもついて来ちゃうし。


 もう飼うしかないみたいです。


「ねぇ、お母さん。やっぱりついて来ちゃうね。」


「……仕方ないわね。連れて行きましょうか。

 それにしても、この懐き様……本当にカーバンクルなのかしら?似た別の何かかしらねぇ……?」


 お母さんは、ため息混じりにブツブツと悩んでいた様でしたが、結局カーバンクルは連れて行く事になりました。


「あ、名前決めないと。どんなのが良いかな?」


「ユウナが決めて良いわよ?」


「んー……。」


 そういえば、ペットに名前ってつけた事ないかも。


 どうしようかなぁー。


「じゃあ、エメで!」


「キュッ? キュイー!」


 エメラルドグリーンだから、エメ。


 単純だけど、気に入ってくれたみたい。


 エメは嬉しそうに肩に飛び乗ってきた。


 ユニコーンのおかげで山越えはすごく早くて楽だったし、王都まであと少し。頑張ろう!

お読みいただけまして、ありがとうございました!

今回のお話はいかがでしたか?


並行連載作品がある都合上、不定期連載となっている現状です。ぜひページ左上にございますブックマーク機能をご活用ください!


また、連載のモチベーション維持向上に直結いたしますので、すぐ下にあります☆☆☆☆☆や、リアクションもお願いいたします!


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