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残念エルフ姫ってなんですか?! そんなの聞いてませんけど…… 【神世界転生譚】ユウナと不思議な世界  作者: Resetter
三章 : 運命の分かれ道

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37. 暴威のファーヴニル

前回のお話:全員集合!

 

 マリーカは、ユウナと国外逃亡の道を選ぶ事に決めた。


 だが……


「リトちゃん。」


「は、はい。」


「あなたは、村に帰れるわ。

 送ってはあげられないけれど……いいかしら?」


 マリーカとしては、突然の事態にリトを巻き込む事は本意では無い。


 今回のヴァルの地への旅は、リトの樹拝(じゅはい)が主な目的であり、こんな事態は想定していなかった。


 このまま巻き込んでしまえば、フリッカに申し訳が立たないのだ。


「えっ……や、わ、わたしも! わたしも行く!

 ユウナと……約束したから……!」


「でも……フリッカには何も言ってないでしょう?」


 マリーカもフリッカも、リトがユウナと旅に出るつもりだったのは知っている。


 だが、これは旅では無いのだ。


 突然降って湧いたユウナの危機なのだ。


 その危機から逃れるという話なのだ。


「うっ……」


「リトちゃんが来てくれるまで、スヴァルトで待つわ。

 リトちゃんまで逃亡者になる事はないの。旅人として、ユウナを助けてあげて?」


「うっ……うぅ……わ、わかり……ました……。

 手続きと準備をしたら、すぐ行きます。」


「フリッカや、村の皆に伝言お願いね。事の顛末と、今後、気を付ける様に、と。」


「は、はい! ……ユウナ。」


「えっ……あぁ……リト。」


「ユウナ、わたしもすぐ行くからね? 絶対、逃げ切って!」


 バッと両手を拡げて、リトはユウナを抱き締めた。


 ユウナは、その温もりを感じて、辛うじて返事をする。


「う……うん。」


「じゃあ、わたし、行くね。」


 リトは、言うなり村へと急いだ。文字通り、空を飛んで。


「ユウナ、さ、立って。私達もいきましょう。」


「あ、うん……。」


 ユウナは、話の内容にショックを受けている様で、茫然自失といった様子である。


 しかし、いつまでもここに居る訳にもいかない。


 後続の追手が来るには、おそらく一時間くらいはあるだろう距離ではあるが……。


 ふと、マリーカがヴァルの地方向に視線を移した。


 その瞬間、視界に掠めた一条の細い光。


「ユウナ!!」


 ――ブシュッ!!


「お……お母さん!!?」


 マリーカは、咄嗟にユウナを庇う。


 飛来した物は、一本の矢だった。


 マリーカの背……右肩甲骨辺りに突き刺さっている。


「お母さん!! お母さん?! 大丈夫?!」


「ユウナ。大丈夫よ。これくらいなら……治せるから。」


 マリーカは、少し引き()った笑顔を作る。


 ユウナは、顔面蒼白となり、腰に着けたバックに手を突っ込んだ。


「水薬……水薬……!」


「おーおー。惜しかったなぁ。庇っちまうとはよぉ。さすが筆頭補佐官ってかぁ〜? やるなァ。」


 街道から悠々と姿を現した一人の男。


 小馬鹿にするかのように、拍手をしながら近付いてくる。


「……ファーヴニル副長?!」


「マリーカぁ……。お前は生け捕りなんだよ。邪魔すんじゃねぇよ。大人しく退いてろよ。直ぐにそのガキ……

 って、二歳児じゃあねぇのか? 随分デケェな。ま、何でもいいさ。始末する事にゃ変わりはねぇ。」


 ずいっと、ナイが射線を塞ぐ様に立ちはだかる。


「敵か。」


「なんだぁ? 化物が何でこんなとこにいるんだぁ?

 ん〜? お前が、コレやったのか?」


 ファーヴニルは、血溜まりを親指で指し示した。


「そうだ。お前も、そうしてやる。」


「ナイ! ファーヴニル副長は、普通のエルフではないわ! 竜の血を飲んだという噂で……」


「くははは! うーわーさぁー? くはははははっ! 噂なら、良いなァー!!」


 ――グギョッ!!ボゴォッ!!


 奇妙な音を立てて、ファーヴニルの腕……脚……胴……そして顔までもが、ボコボコと膨らみ、その形を変えていく。


 ――ザッ……ガギィッ!!


 ナイは、その隙にファーヴニルに噛み付いていた。


「なーんだよ。せっかちな奴だな! くははは! もう終わるよ!」


 ――グオォアアァァ!!!


 勝ち誇ったかのような台詞を吐いて、天を切り裂くかのような咆哮を上げるファーヴニル。


 その姿は――竜。


 今のナイよりは一回り程小さいが、まさしく竜の姿に変貌を遂げていた。


「え……な、なにあれ……?」

「噂は……本当だったのね。」


「くははは! ま、化物が居たんじゃあな。他の奴らじゃあ無理だろうなぁ。レーナ王妃様々だぜぇ。こーんな獲物にありつけるたぁよ! 近頃はめっきり出番も減ってたからなぁ。くははは! ありがてぇこったぜ!」


 茶の混じった様な黒い竜は、獰猛に禍々しく、その瞳は赤々と怪しく輝いているようだ。


 首筋にナイの牙が掛かっていても、硬い鱗で肉までは届いていないのか、気にする素振りすらない。


「さぁて。じゃあ、ユウナとやらを始末するとしますかね!」


 ――ヒュオォォ……!! ゴバァッ!!!


 大きく息を吸い込んだファーヴニルは、ピタリと動きを止め、次の瞬間炎を吐き出した。


「水よ! 我が言葉に応え、その力を示せ!」


 咄嗟にマリーカは、水をドーム状に展開する。


 ナイは、牙が刺さらないとみると、前脚で竜の口を塞ぎに掛かった。


 そして、


「マリーカ、ユウナ。逃げろ! ここは、ナイが通さない。」


 と、ユウナたちに告げた。


「えっ……そんな?!」


「だめよ、ユウナ! ナイが敵わなければ、どうしようもないわ。逃げるしかないの! 走って!」


「ナイ……! ナイーー!!」


 ユウナは、マリーカに引き摺られる様に森の中へ消えていく。


「チッ……化物が……。邪魔しやがって……。

 オラァ!! 退けよォ!!」


 ――ザシュッ!! ズバッ!!


「ナイは、どかない。敵は、通さない。」


「クソがッ!! 何なんだ、てめぇはよ!! 化物のクセによ!! なんのつもりだってんだ!!」


 二匹の……まさに怪物とでもいえる者共は、噛み付き合い、殴り合い、その牙を爪を、お互いの身体に突き立てあった。


 その戦いの音、そして怒声は、王館までにも響いたという。

お読みいただけまして、ありがとうございました!

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また、連載のモチベーション維持向上に直結いたしますので、すぐ下にあります☆☆☆☆☆や、リアクションもお願いいたします!


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