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残念エルフ姫ってなんですか?! そんなの聞いてませんけど…… 【神世界転生譚】ユウナと不思議な世界  作者: Resetter
三章 : 運命の分かれ道

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34. 逃走劇

前回のお話:結構ピンチ

 

 マリーカは状況を再び整理する。


 前後は兵士で挟まれていて、左右は建物。


 前方の兵士は2名が少し前に出てはいるが、各々の距離は等間隔。計10名。


 後方の兵士は、中央を少し下げて湾曲した隊列で、計10名。前後20名に挟まれた形だ。


 一騎当千の猛者でも無ければ、全てを倒し切る事は不可能だろう。


 マリーカも、エルフの中では優秀ではあるが、直接的な戦闘力に特化している訳では無い。


 戦えば、多勢に無勢だ。敗北は時間の問題といえよう。


 更にいえば、不殺(ころさず)に勝利しなくてはいけないという事が、その実現の可能性を著しく下げている。


 左右の建物は、高さ6~7mといったところか。


 一足飛びに跳び越えるには、少々高い。


 普通ならば、屋根に飛び付いて掴まる事すら難しいだろう。


 建物脇に樹でも生えていてくれたならば話は変わってくるのだが……


 残念ながら、反対側にしか生えていないようだ。


 結論として、マリーカに取れる策は、逃走一択だ。


 問題は、どの様にしてその策を実現するかだ。


 マリーカは、その小さな頭の中で、シミュレーションをひたすら繰り返した。


 兵士達は、無表情だが警戒の姿勢を取ったまま動かないマリーカを、遂に追い詰めたと余裕の表情を浮かべながら、ジリジリとその包囲網を狭めていく。


 そして――


「掛かれ!」


 門番の男の号令と共に、20名が一斉にマリーカに襲いかかった。


 だが、マリーカは、それを待っていた。


 先行していた2名を躱しながら、詠唱を開始する。


「水よ、火よ、風よ。そして光よ! 我が言葉(ことのは)に応え、その力を示せ!」


「「ぐあぁっ!!」」「おのれぇっ!」「目がぁ! 目がぁー!」


 マリーカは、閃光を放ち、目眩しをすると同時に、濃霧を創り出した。


 更に……


「星よ! 我が言葉に応え、その楔を解き放て!」


 重力を操り、一気に追手の頭上を跳び越えた。


 そして、


「水よ、土よ! 我が言葉に応え、その力を示せ!」


 と、兵士達の足元に深さ1m程の穴を創り出し、泥濘(ぬかるみ)で埋めつくした。


「くそぉっ! 逃げたぞ! 追え! 追えぇー!」


「駄目です! 足を取られて動けません!」


「誰か動ける者はおらんのか!」


「無理です!」


 兵士達は、腰まで泥濘に浸かり、大混乱に陥った。


 眩んだ目が何とか視力を取り戻したところで、辺りは濃霧に包まれて、互いの位置すら目視出来ない。


 門番の男は、再び叫ぶ。


「ええい! まずは霧をなんとかしろ!」


「はい!

 ……風よ! 大いなる風よ! 天より吹き荒ぶ風よ! 我が願いの言葉に応え、その偉大なる力を貸し与え給え!」


 それに応えた言法の比較的得意な兵士が、風を起こして霧を飛ばそうと試みるも、マリーカの創り出した霧は中々晴れてはいかなかった。


 ――


「はぁ……はぁ……はっ……ユ……ユウナ……は、速いよ……!」


 リトは、全力でユウナについて行こうと走っているが、肉体的に鍛える事ばかりしていたユウナには、流石に引き離されそうになっていた。


 もう少しで、ヴァルの宿泊地には差し掛かろうというところではあるが、集合地点はナイの居る場所だ。


 まだ少し距離がある。


「もう少しだから、頑張って!」


「はぁ……はぁ……う、うん。」


 リトも、決して身体能力が低い訳では無いのだが、ほぼ全力疾走で30分以上は厳しかったようだ。


 そこでふと、リトは考えついた。


 イメージだけで任意の現象を起こす、新たな力"象言法(インセイズ)"。


 それを上手く使えばいいのだ、と。


 一度、ピタリと立ち止まり、少し呼吸を整えて、瞑目(めいもく)し、集中する。


 すると、ふわりと浮き上がり……


 目を見開くと、ビュッと低空を這うように飛んだ。


 そして、一瞬でそれに気付かず先行して走っていたユウナに並んだ。


 それを見たユウナは、飛び上がりそうな勢いで驚いた。


「えぇえぇ?! な、なにそれ?! リト、飛んでる!?」


「うん。出来た。」


「そ……そっか。出来たんだぁ。すごいね!」


 そうして、宿泊地を通過しようという時。


「おい! お前等!」


 前方に、多数の人影があった。


 それらは、行く手を阻む様にして、道を塞いでいるようだった。


 その中の一人が、叫んでいる。


「止まれ! お前等、ミュルクの者だったな! どちらかが、ユウナじゃあないのか!」


 尚も速度を落とさないユウナたちは、直ぐにそれらの人影が武装した兵士たちだと認識した。


 兵士は10名程で、弓や剣を構えている。


「何かご用ですか? 私、急いでるんですけど!」


 ユウナは、速度を落とさぬままに、大声で答えた。


「やはりお前か! 前王妃ルーナの産んだという欠陥品ユウナ! 王妃レーナ様より、粛清せよとの御達だ!

 その命、貰い受ける! 潔く冥土ニヴルヘイムに旅立つがいい!」


 それを聞いたユウナは、ザッと急停止した。


 つられてリトも空中で静止する。


 そしてユウナは、大声で


「私が旅したいのは、フェアランドなんですけど!?」


 と、叫んだ。


「ちょ、ちょっと、ユウナ?! 行先言っちゃったら、不味くない?!」


「あ、そっか。」


 だがその言葉は、どうやら兵士達のプライドを傷付けたようだった。


「ふざけた事を!」「なめやがって!」

「俺がそっ首掻き切ってやる!」


 などと、口々に怒声を上げながら、襲いかからんと走り出して来ていた。


 そして弓を持つ者は、ギリギリと引き絞り狙いを定めている。


「ユウナ!」


 リトは、ユウナを後ろから抱きかかえると、少し上空へ飛び上がった。


「わぁー! リトすごい!」


「ちょっと! 今はそんな場合じゃないよ?! 逃げなきゃ!」


 それを見た兵士達は一瞬動揺をみせるも、弓による射撃に切り替える。


「と、飛べるだとォ?! チッ……! 弓射て! 弓!」


 ――ビュッ、ビュッ!


「拡!」

 ――ガィン! キンッ!


 空中に向け、矢を射掛けられるも、ユウナはそれを防ぐ。


 "天才鍛冶師ダーインの最高傑作"とダーインが自負していただけはあり、ユウナの持つダーインスレイヴの性能は、常軌を逸しているのだ。


 ユウナが矢の雨を防いだその隙に、リトはナイの居る方角へと飛んだ。


「な、なんだあの武器は?! 形が変わったぞ?!」

「逃げたぞ! 追え! 追えー!」


 空中を高速で飛びながら、リトはユウナに語り掛けた。


「ユウナ……。絶対護るから!」


「リト……。ありがとう。お母さん、大丈夫かな?」


「マリーカさんも、多分襲われたんだね……。でも、マリーカさんは、強いから大丈夫だよ。

 わたし達は、先ずはナイと合流しなきゃ!」


「そうだね……。逃げるにしても、戦うにしても、先ずは合流だね!」


 ユウナとリト、そしてマリーカ。

 戦うも逃げるも、命懸けとなった。

 それぞれは逃走を選び、そして合流を目指す。


 お互いの無事を信じて。

お読みいただけまして、ありがとうございました!

今回のお話はいかがでしたか?


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また、連載のモチベーション維持向上に直結いたしますので、すぐ下にあります☆☆☆☆☆や、リアクションもお願いいたします!


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