27. オシャレも大事
前回のお話:ヤルンのバックを手に入れた!
「ユウナ……ごめんね。わたし、あんまり喋れなくて……。」
リトは、旅人さんに話し掛けられて、上手く答えられなかった事……人見知りである事を気にしていました。
でも、人には得意不得意があると思います。
私も、いつもリトには言法で助けてもらっていたりします。
だから、お互い様というか。助け合いだと思うのです。
ミュルク村での一年間は、助け合いで出来ていたと言っても過言ではありません。
「んーん。大丈夫だよ! それより、お家のお土産、これで良かったかなぁ?」
「大丈夫だと思うよ? この村では採れない物だし。」
私たちは、ヤルンのバックを手に入れましたが、ちゃんと母たちにもお土産はあるのです。
食料品が中心なのですが……。
確かにミュルク村には無い物ではある……あるのですが、可愛いくないのです!
お土産というか、これでは買い出しな感じじゃないかと思うわけですよ!
そんな時、ふと目についた交易品。
「あ……リト! こっちも見ていい?」
「別にいいけど……一週間くらいは、旅人たちは居るよ?」
「でも、明日には無くなってるものとかあると思うから!」
二人がカバンを交換したハウスの二軒先には、雑貨や装飾品が置いてあるハウスがあった。
所狭しと置かれたそれらは、見ているだけでも楽しく感じられる品々だった。
リトにしてみても、ユウナがいなかった頃には必要な品以外を見に来た事は無く、それらを目にするのは初めてだった。
「わぁー! 首飾りだとか腕輪だとかいっぱいあるー!」
「そうだね。わたしも知らなかった……。」
「もー。リトは可愛いんだから、オシャレにした方がいいよー! せっかくのハーナルさんの防具も、あんまり使ってないし……。あ! これなんて、すごく似合いそう!」
ユウナが手に取ったのは、水色の小さな宝石がメインになっている、シンプルな銀色のネックレスだった。
「う……。確かに、防具の色合いにも合いそうだけど……。それ、どんな効果があるのかな。」
リトは、実用主義だった。
自らを飾り立てる事に全くといっていい程に、意味を感じていなかった。
それは、長年の出来事の積み重ねにより作り上げられた性格だ。故に、変わる事は中々に難しい。
しかし、旅人を目指す上に於いては、向いているともいえるだろう。
「効果……。ん〜……私は魅了されちゃうかなぁ?」
「えぇっ?! み……みりょ……魅了……?!」
ユウナの発言に、リトは少し顔を赤らめた。
この二人は、この一年というもの、ずっとこんな調子なのだ。
ユウナは、リトを本気で可愛いと思っている。
そして、それを事ある毎に口にする。
すると、リトは照れる。
それは傍から見れば、最早お家芸といえる程の定番のやり取りになっていた。
そして、そのやり取りを見ていた旅人は、その様子を面白く感じていたようだった。
「アッハッハッ! 面白い嬢ちゃん達だねぇ! グニパの宝飾、気に入ったのかい?」
「うん! すごく素敵!」
「お! 見る目があるじゃないの! でもね。これは見た目だけじゃあないのさ。ちゃんと効果はあるんだよ?」
「「えっ?!」」
旅人の言葉に、二人して驚きの声を上げる。
「どんなのですか?!」
目を丸くして問うユウナに、旅人は気分を良くしたようで、丁寧に説明を始めた。
「ふっふっふ……。じゃ、教えてあげようかね!
その今持ってる首飾りは、言法の威力調節が楽になる効果があるね。
で、こっちのは、走ったりしても疲れにくくなる。
これは、疲労回復が早くなるね。」
「これは……?」
ユウナが手にした指輪。
それは、薄い金色のリングに、青翠色の宝石があしらわれたものだった。
それはマリーカの髪と瞳の色に近いものだ。
「お! それはすごいよ? 嘘か誠か、一度だけ身を護ってくれる、守護のリングさ。」
「え……嘘なの?」
「いやぁー。着けた人は居たんだが、普通に怪我はするんだよね。」
「えぇー。」
「その時は指輪も壊れちゃったらしいし。まぁ、正直……あんまり人気は無いかな。アッハッハッ!
そっちの水色のお嬢ちゃんの言うようにさ、実用的なものの方が人気だねぇ。」
「ふーん。そっか……。でも、これがいいかな。
あと、これも。この二つください!」
ユウナは、守護のリングと、言法の首飾りを選んだ。
交換用の品物は、家に飾ろうかと思っていた鹿の角だ。
「まいどあり! 交換品は、鹿の角二本かい? こりゃ立派だねぇー。飾ってよし、加工素材によし、薬にもなる優れモンだねぇ!」
宝飾を手にしたユウナは、満足そうな顔をして、リトの方に向き直る。
「リト。はい、これ。」
ユウナは、スッとリトの首に手を回し、首飾りを着けた。
「えっ? これ、わたしにだったの?!」
「うん! 似合いそうだったから。やっぱり似合ってるよ! 可愛い!」
「そ……そんな……。こんなのもらうだなんて……なんか悪いよ……。」
「私がプレゼントしたかっただけだから気にしないで!」
ユウナは、満面の笑みだった。
対してリトは……
「うぅ……わたしもユウナに何かあげたいけど……もう交換品が無いよ……。」
と、非常に落ち込んだ様子だった。
「水色の……リトちゃんだっけ?」
「は……はい……。」
リトは、旅人に話し掛けられ、例の如く少し驚いてしまう。
だが、女性相手なので、幾分か表情に余裕が残っている。
「その話、ウチで選ぶなら、取り置きしておいてあげるけど、どうする?宝飾には宝飾がいいと思うけどねぇ。」
「あ……は……はい。じゃあ……これと、これを。」
「まいど! じゃ、待っててあげるから、またおいでよ。」
「は、はい。よろしくお願いします……。」
そうして、二人はグニパのハウスを後にした。
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