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残念エルフ姫ってなんですか?! そんなの聞いてませんけど…… 【神世界転生譚】ユウナと不思議な世界  作者: Resetter
一章 : ミュルク村ってどんなとこ?

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21. 私の精神安定剤

前回のお話:王家風ミュルクサラダ、アル鶏の香草風味ムース仕立て、地芋の冷製スープ、牝鹿のロースト、穀粉麺のチーズソース掛け。

デザートは、白桃と野いちごのシャーベット

 

 リトちゃんが、お泊まりする事になって、ベッドの準備をしに、2人で2階に行ってる間。


 フリッカさんと、マリーカさんは、お話をしていたようでした。


 

 準備を終えて、階下に戻ろうと、階段を降りると……


 そのお話が……聞こえてしまいました。


 

 それは、楽しくお話していた……という感じでは全くなくて。


 とても真面目なお話でした。


 

 それは……


 マリーカさんが、私をここに連れてきてくれたんだという事。


 私を、生かしてくれたんだという事……。


 そういう内容でした。



 その事実を唐突に知ってしまった私は……


 色々な感情が入り交じってしまって、今の気持ちを上手く表現出来ません。


 

 ただ、涙だけは、どうしても止められないようでした。


 

 「ユウナ様……。」


 そんな私を見詰めるマリーカさんは、普段見せないような、とても困っているような顔をしていました。


 

 「ユウナちゃん。さっきの話、聞いてたよね?」


 「……うん。」


 

 「マリーカの事、どう思ってる?」


 「……どう……って……?」


 フリッカさんの質問が、何を意味しているのか、その時、直ぐには分かりませんでした。


 

 「フリッカ……それは……!」


 「いいから。」


 マリーカさんが、慌てたように何かを言おうとしましたが、フリッカさんが手で制しました。


 

 私は、言いたい事が全然纏まってはいませんでしたが、つっかえつっかえ話しました。


 「マリーカさんは……すごく素敵で……大好きで……

 ううん……。

 違う……。

 お母さんみたいに、思ってる……。

 マリーカさんも……

 そう思っててくれたらいいなって……ずっと……」


 頑張ったけれど、思ってる事を全部言えたとは全然思えませんでした。


 

 フリッカさんは、満足そうに、嬉しそうに

 「うんうん。」と頷き、

 マリーカさんに「ほら、ね?」と言いながら、目配せしました。


 

 「ユウナ様……!」


 マリーカさんは、私に駆け寄って――


 いつもとは違う感じ……少し力強く抱き締めてくれました。


 

 私はその時、マリーカさんが泣いているのを、初めて見ました。


 「ユウナ様……ユウナ様……」


 「うぁあぁぁぁー……! マ゙リ゙ーカさぁあぁぁぁー!」


 なぜだかは分かりませんが、私は号泣してしまい……


 

 「あらあら……。こりゃ、今日は二人にしてあげた方がいいかねぇ……。

 リト。また明日だね。今日は帰ろうか。」


 「うん。マリーカさん、ユウナちゃん。

 今日は、本当にありがとう。

 また明日、遊ぼうね。」


 フリッカさんとリトちゃんが帰っていった後も、私はしばらく泣き止めませんでした。


 

――――

――


 

 少し落ち着いた後。


 

 いつもの様に、マリーカさんと二人、お風呂に入りました。


 

 近頃、ずっと思ってました。


 このお風呂は、エルフの普通のお風呂、とマリーカさんは言っていました。


 

 でも、洗い場も浴槽も広くて、綺麗な花弁が浮かんでて、おしゃれでいい匂いで、気持ち良くて素敵なお風呂だなと、私は、そう感じていたのです。


 それはもちろんそうなのですが。


 

 でも、マリーカさんと一緒に……という事が、その素晴らしさをより一層強調していたんだなと、今日……改めて実感しました。


 「ユウナ様。随分と泣かれましたので、腫れてしまうといけません。

 今日はこちらで、お顔を……」


 と、マリーカさんは、泣きくれた私のアフターケアまでしてくれます。


 至れり尽くせりとは、マリーカさんの事だったんですね。


 

 ひんやりとした、薬草の抽出液。


 それを優しく丹念に塗り込んでくれます。


 

 火照りが……すうっと消えていく感覚が……とても気持ち良くて……。


 この薬は、アルヴ水薬(ポーション)というそうです。


 アルヴ族に伝わる秘伝の水薬で、塗れば傷、飲めば病気に効くという、万能薬みたいです。


 リトちゃんと採りに行った薬草で、マリーカさんが作ってくれました。


 材料自体はシンプルで、私も、作り方は教えてもらいましたが、私では作れなさそうでした。


 

 「ありがとう……。」


 「いえ。大事なユウナ様のお顔に、もしもの事があってはいけませんから。」


 マリーカさんは、私の前の家族と同じくらい……


 私の事を気にかけて、お世話をしてくれます。


 

 それは、王家の使用人としてではなく、その立場を投げ打ってでも、私を救い……育てようとしてくれたという……愛情、なのでしょうか。


 

 「ねぇ、マリーカさん。」


 「はい。」


 

 「マリーカさんは、なんで私を助けてくれたの?」


 「……そうですね。端的に言ってしまえば、自分自身と重ねている部分が、あったかも知れませんね。」


 

 「えっ? 私が、マリーカさんに似てるって事?」


 「ふふ。」


 マリーカさんは柔らかく微笑みながら、私の頬を優しく撫でました。


 その仕草が、とても美しくて……少しドキッとします。


 

 「私の異能は……お世話に特化したものなのです。

 それを希望の樹から授かった15歳のあの日に、王館にお仕えする事が決まりました。

 今から200年以上前の話ですが……。」


 に、にひゃく……!


 そうだ、マリーカさん256歳だから……


 「それは、大変名誉な事です。ミュルク村では、村を挙げての祝宴まで催されました。

 そうして、私は送り出され王館へと勤めに出ました。

 ……それから、少し時が経ち、私が王家直属になった頃でした。

 ミュルク地方に、竜族が飛来したのです。

 ミュルク村は半壊し、その時に私の両親も亡くなったそうです。

 私は王館で、後にその報せを受けただけ……。

 竜族は、英雄ユーナリオン様がその生命を懸けて撃退せしめた、被害は極小だった、と。

 両親とは特別に仲が良かったという事もありませんでしたが……

 一緒に過ごした時間も短いものでしたが……

 その亡骸すら見れなかったのは、少し悔やまれました。」


 マリーカさん、ご両親……そんなに早くに……


 私は……私が先だったから……


 

 ユーナリオン……今の私の名前の基になった人。


 どんな人なんだろう……?


 分かんないけど、強い人だったんだろうな。


 「……私は、親子の愛というものを、あまり知らないのです。

 だからでしょうかね。生まれ持った能力で、その愛を……

 いえ、生命までをも奪われようとしていたユウナ様を……

 放っておけなかったのだと思います。」


 「マリーカさん……。」


 マリーカさんのお話に、私では、言葉が見つかりませんでした。


 

 「さ、長くなりました。逆上せてしまいますから、出ましょうか。」


 

――――

――


 


 その日も、マリーカさんと一緒に眠りにつきました。


 

 不思議な事に、マリーカさんは上衣をはだけたままだったので、どうしたのかと聞いたところ……


 私がいつでも吸えるようにしてあるのだ、と言っていました。


 

 マリーカさんには、やっぱり私は赤ちゃんに見えているみたいですね。


 でも、マリーカさんの柔らかい胸に包まれているのは、本当に安心出来るのです。


 別に赤ちゃんでもいいかなって思えるくらいには。


 

 マリーカさんは、私の母であり、先生であり、憧れであり、薬でもある。


 私が元気でいられるのは、この人の愛情のおかげだ。


 明日も、お手伝いしよう……


 

 そうして、私は意識をマリーカさんに預けるように手放した。


 安心感に包まれて。

お読みいただけまして、ありがとうございました!

今回のお話はいかがでしたか?


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また、連載のモチベーション維持向上に直結いたしますので、すぐ下にあります☆☆☆☆☆や、リアクションもお願いいたします!


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