18. 村の裁き
前回のあらすじ:噂のモンスターが……
嵐を巻き起こしたモンスターが我が家から去って、お昼過ぎ。
またしても訪問者がありました。
――コンコンコン
「はーい。」
ノックの音に、扉を開けると……
そこに居たのは老女エルフでした。
誰ですかね?
「マリーカや……。おや? 違ったかね。では、貴女がユウナ様ですかな?」
「あ、はい。ユウナです。」
「これはこれは。実に可愛らしいお方じゃて。
私は、イアールンと申しましてな。ヴィズの母、この村の長老ですなぁ。」
えっ? ヴィズって……村長さんだよね? その、お母さん。
一体幾つなんでしょうか……。
ちょっと聞くのが怖いので、聞かないですけど……
「イアールンさん、お世話になってます。」
とにかくご挨拶です。バッとお辞儀をしました。
「おお、おお、これはこれは、ご丁寧に……。
これは、マリーカの教えが良いということですかなぁ……。」
イアールンさんは、くしゃっと笑いました。
「イアールン様。わざわざお越しくださったのですか。」
マリーカさんが、2階から降りて来て、驚いていました。
「ほっほっ。マリーカや。息災のようじゃな。」
「ええ。お陰様で……。どうぞ、お入りください。」
マリーカさんにエスコートをされながら、イアールンさんが、椅子に座りました。
私はその間に、マリーカさんに教えてもらったように、ハーブティーの調合に取り掛かります。
調合は何十種類とあるのですが、ほんのり甘い抹茶ミルクの様な味がするものにします。
大人から子供まで楽しめる味で、アルヴ族の定番らしいのです。
とはいえ、お湯は沸かせないので、花や葉を用意するだけなんですけど……。
「ユウナ様、ありがとうございます。後は私がやりますので、あちらでお待ち下さい。」
イアールンさんを座らせたマリーカさんがキッチンにやってきて、お湯を沸かし始めました。
私は言われた通りに、テーブルに着きます。
「お待たせしました。」
マリーカさんが、お茶を入れたポットをトレイに乗せてこちらにきます。
今日のコップは、少しゴツゴツとした黒い湯呑みの様なものでした。
濃い緑と、相性が良いんですよね。
「どうぞ。」
「あぁ、すまないねぇ。」
「いえ、ユウナ様が御用意くださいました。」
「おやおや。それは良い冥土の土産が出来ましたなぁ。ほっほっ。」
……笑えません。
なんと言っていいのかも分かりません(汗)
私が困っているのを察してくれたのか、マリーカさんが話を進めてくれました。
「それで、イアールン様。わざわざお越しくださった御用向きは……?」
イアールンさんは、ゆっくりと湯呑みを口につけ、ゆっくりと傾けていました。
「……おぉ、これは大変美味ですなぁ。
ふーむ……。やはりマリーカの教えは良いようじゃて。
うむ……。今日、参ったのはな……ヴェルからマリーカと、ユウナ様に対して裁きの申し立てがあってのう。
その報せついでにユウナ様にお会いしておこうとなぁ。」
「そうですか。刻限は?」
「夕刻手前じゃな。」
――――
――
村の裁きは、村の中央、村長の家の裏側で行うようでした。
そこには、この村では珍しく、石造りの祠のような物がありました。
公園とかの藤棚くらいの大きさかな?
中央には、祭壇みたいなものもあります。
結構立派な造りで、白っぽい石に苔むして、何だか神秘的な雰囲気です。
私は、今まで近付いた事がありませんでした。
村の人達も、あまり近付かないそうです。
「ユウナちゃん……。」
「あ、リトちゃん! どうしたの?」
「……私も、裁きなんだって……。」
なんとびっくり。
リトちゃんまで呼ばれてたみたいです。
リトちゃんは、なんだか少し青い顔をしていました。
「そっかー。何かね、マリーカさんがね、本当のことを言えばいいだけだって言ってたよ! だから、大丈夫だよ!」
「……そうかな?」
「そうだよ!」
リトちゃんの手をキュッと握り締めると、リトちゃんも「ふふっ」 と笑って、握り返してくれました。
可愛いなぁ~~リトちゃん!
水色の髪や瞳も、すごく可愛い!
「けっ……何だよ。無能と鳥フンがっ……!」
そんな時に、ヴィンダーくんが文句をこぼしながら現れました。
その背後には、ヴェルさんも居ました。
その表情は、果し合いに向かうガンマンのようです。
岩と砂の大地に沈む夕陽をバックにして、砂埃と枯れ草が舞い転がっていそうです。
ここは森なんですけどね。
「フンッ……! アンタ達、後悔させてやるからね……! 無能と色付きの分際で……!
で、マリーカと化物はどうしたのよ? 居ないじゃない! 裁きと聞いて、逃げたのかしらね!」
ヴェルさんは、私達を目の敵といった風に責め立てて来ました。すごい圧です。
何やらすごく憎悪を感じます。
リトちゃんの、私の手を握る力がグッと強くなりました。
「マリーカさんとナイは、村長さんとお話してますから、もうすぐ来ると思いますよ?」
私はマリーカさんのように、極力冷静に言葉を返しました。
「フンッ……! さっさとこればいいものを……。
ヒッ……!!」
その時、すっとナイが私の背後に現れました。
それを見たヴェルさんは、短く悲鳴を上げました。
そして、無言で後退りしていきました。
「ユウナ。待たせたか。」
「あ、ナイ。お話終わったの?」
「終わった。マリーカも、もう来る。」
「ナイ、こんにちは。」
「ああ。リト。」
リトちゃんも、ナイにずいぶん慣れたようで、頭を撫でていました。
ナイも、少し目を細めて、嬉しそうです。
「皆揃っておるな。お待たせしたかの。」
村長さんが到着したようです。
その後からマリーカさんも歩いて来ています。
「ユウナ様、リトちゃん。大丈夫でしたか?」
「「うん!」」
「そうですか。」
そう言って、マリーカさんは、微笑みました。
その優しい笑顔に、すごく安心感を覚えます。
何だか勇気が出た気がします。
そして、いよいよ裁きが始まるのでした……
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