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残念エルフ姫ってなんですか?! そんなの聞いてませんけど…… 【神世界転生譚】ユウナと不思議な世界  作者: Resetter
一章 : ミュルク村ってどんなとこ?

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14. 大失敗しました。

前回のあらすじ:鹿すごく速い




 「いっ……たぁ……!」


 不意に強い衝撃を受けて、わけも分からず吹き飛ばされて……


 私は……地面に転がったまま、動けないでいた。


――ブルルルゥ……!


 全身が痺れて自由の効かなくなった身体で、必死になんとか見上げると……


 猪らしき獣が、前脚をカッカと地面に打ち付けながら、私を見下ろしていた。


 ……怖い!


 た、た、食べる気なのかな?!

 た、た、多分美味しくないよ?!


 恐怖で震えて叫びそうになったけれど、獣は見下ろしたまま、距離を保って近付いては来ない。


 自分の身体の状態を確認してみると、強い衝撃を受けて、身体が麻痺したみたいにはなっちゃったけど、防具のおかげで、骨が折れたりはしていないようだった。

 

 防具ってすごい!




 でも、どうしよう……。


 そろそろ、立てそうだけど……

 多分、走っても、獣の方が速いだろうし……。


 武器も、何も持ってない。

 当然、魔法も使えない。


 確かに、防具はすごく頑丈だったけど……。


 体当りの衝撃を全部無くすのは無理みたいだし……。


 うう……どうしよう……。


 暗闇の中、ギラりと眼だけが光る、黒い塊に睨まれてる。


 ただただすごく……心細い。



 

 「ユウナ!」


 ナイの声がした。


 と、ほぼ同時に――


――ブシャーー!!


 と、目の前の猪は、血飛沫を上げていた。


 

 私には一瞬過ぎて、何が起こったのか分からなかった。


 「ユウナ! 大丈夫か!」


 「ナイ……ありがとう! 大丈夫だよ……! ナイのおかげだよぅ!」


 私はがばっとナイに抱きつく。


 少し先行してウルさんと一緒に鹿を追っていたはずのナイが、異変に気が付いて戻って来てくれた。


 そうして私はことなきを得た。


 もちろん、ハーナルさんたちが作ってくれた防具も、生命を護ってくれた。


 やっぱり、装備って大事なんだなぁ。


 


 「ユウナ、乗れ。」


 「うん。」


 遅れてしまった私は、ナイに乗せてもらって、仕手場に向かった。


 私って、なんにも出来ないんだなぁ……。



 

――――

――

 


 


 「ま、ユウナちゃんは、体力作りからだな!」


 「はい……。ごめんなさい。」


 ウルさんに全くついていけなくて、別の獣に襲われてしまった私は、帰り道はお説教タイムだった。


 お説教……

 といっても、お小言という感じでもなくて、怒鳴られたりもなかったけど……。



 

 狩の収穫としては上々で、鹿が二頭、さっきの猪が一頭、村の全員で分けても、二週間分にはなるみたい。


 やっぱり、ウルさん達はすごいんだなぁ……。


 「まぁ、ソリンよりは随分増しだがな。ソリンが初めての時は……」


 「ちょ……?! ウルさん!? その話はいいじゃないっすか?!」


 「はっはっはっ!」


 多分、ウルさんは、気を使ってくれたんだと思う。


 失敗した私をあまり怒らずに、むしろ心配してくれたし……。


 なんだか、余計に申し訳ない気持ちになった。


 手伝える、とまでは思ってなかったけれど、危ない目に遭うとまでもは思ってなかった。


 生まれ変わってから今まで、どこか夢見心地だったかも知れない。浮かれ過ぎていたというか。


 走れるようになってたし、村はほのぼのしてるし、マリーカさんも、村の皆も、優しいし。


 本当は、当然……そればっかりじゃないのに。


 そういう所を、あまりちゃんと考えてなかった気がする。


 

 ここは、病院のベッドの上じゃないんだ。


 皆、生活に命懸けなんだ。


 ちゃんと自覚しなきゃ。


 前世の自分とも、そして世界も、今までとは全然違うってこと……。


 でないと、寿命が来る前に、また死んじゃうかも知れないんだ。


 もっとしっかり、考えなきゃ。


 

――――

――

 


 その日の夜。


 お風呂の時間。


 今日も、マリーカさんが優しく洗ってくれる。


 一日の疲れも、嫌な事も、汚れと一緒に洗い流されていくようで……。

 とても気持ちがいい……。


 嫌な事……というか。今日の大失敗。


 黙っていても、きっとそのうち伝わってしまうだろうと思って、早朝の出来事をマリーカさんに、ちゃんと話した。


 「マリーカさん。ごめんなさい。」


 「ユウナ様……。明日から、訓練をしましょうか。

 身体作りと、体術ですね。

 私も、王家の側仕えとして、体術の心得はありますので。」


 「いいの……?」


 「もちろんです。」


 「マリーカさん……ありがとう。」


 「いえ。生きる上で、失敗は付き物です。ユウナ様は、まだお生まれになったばかり。当然、失敗することもあるでしょう。それをどのように乗り越え成長するのか。僭越ながら、私はそれが大事かと思います。

 私に出来ることでしたら、何でもお手伝い致します。

 ……ですから、そのようなお顔をされないで下さい。」


 「マ゙リ゙ーガざぁーん……!!」


 マリーカさんの言葉に、私は涙をこらえることが出来なかった。


 マリーカさんは、そんな私を優しく抱き締めてくれた。


 柔らかくて、温かくて、いい匂いがして……


 すごく、すごく落ち着く……。

 


 マリーカさんは、きっと、三人目のお母さんだ。


 私にとっては、そう。


 血の繋がりはないけれど、そう。


 そう思って生きよう。


 そもそも、こんなに立派で素晴らしい人、中々いないんじゃないかと思う。


 この人のように、なれるかは分からないけれど、私も、今度こそちゃんと生きて大人になるんだ。


 だから、マリーカさんの言うように、失敗しても頑張ればいいんだ。


 前世では、何も出来ない身体だったから、色々とすぐに諦めていたと思う。


 だから、ちゃんと生きていけるように、頑張ろう。


 「さ、逆上せてしまいますから、そろそろ出ましょうか。」


 お風呂から出て、服を着せてもらって。

 


 その日……私は、マリーカさんと一緒に眠った。


 安心する……とてもいいにおいがした。

お読みいただけまして、ありがとうございました!

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