表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残念エルフ姫ってなんですか?! そんなの聞いてませんけど…… 【神世界転生譚】ユウナと不思議な世界  作者: Resetter
六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/103

102. 頼みごとをされてしまいました。



 「たしか、こっちのほうって言ってたよねぇ」


 背の低い(やぶ)をかき分けながら、リトに()いてみると。


 

 「うん。方向的にはあってると思うし、川があるなら……ちょっとずれても、分かるんじゃないかな……」


 同じように藪をかき分けながら、ちょっと眉間(みけん)にシワをよせていました。そんな顔もかわいいですね!




 と。


 なぜ私たちがこんな藪をかき分けてるかというと。


 

 

 野宿した翌日。


 私たちは、さらに歩を進めて。トゥレイア山から二つ目の村まで到着しました。



 そこで、交換品を出して、お泊りの交渉をしようとしたんですけど。

 


 宿泊所の管理の女性に話しかけたところ。

 

 「え? 王都からきた? アルヴ族だよね?」


 「あ、はい。移住してきて……」


 

 「へぇ。それがこんなところにいるだなんて。旅人してるのかい?」


 「あ、いえ、職業的旅人ではないんですけどぉ……。普段は軍で訓練させてもらってたり、って感じですかね?」


 「軍だって?! ってことは、戦えるのかい?!」

 


 「え? あ、はい。まぁ……そう、ですかね……?」


 「だったら交易品はいらないから、頼みがあるんだよ!」


 

 という、流れになってしまい。


 その依頼を受けることを条件に、泊めてもらったわけですねぇ。


 

 で、朝から山じゃなくて川を目指すことになっちゃったわけです。


 ちょっとしたタイムロスではあるんですけど、しかたないですよね。



 

 「で、変な声ってなんだろね? リトは何だと思う?」


 今回頼まれた件。


 川の近くで怪しげな、恐ろしい声? が聞こえて、その件を王都に相談するかどうかとか、村中で話し合っていた最中だったらしいのです。


 

 「うーん……。この前みたいに人魚さんでもいるのかな?」


 リトの顎に指を当てながら考える仕草、かわいくて好き!

 


 そういえば、大きな河での人魚さん事件、あったなぁ。メルちゃん。本名は……メルストロム……? だっけ。


 「あー……。メルちゃんだったら戦う必要はないね。そうだったらその方がいいなぁー」


 「ユウナ、仲良くなってたもんね」


 「そうそう。だから話せばだいじょうぶだと思うー」

 


 

 「うん。そんな感じだといいけど……。でも、この辺りまでの哨戒(しょうかい)任務って減ってるんだよね?」


 「あー。そんな感じのこと、カーラさんが言ってたねー。でも、もうヒルドルさんたちも元気になったとは思うけど……」


 人手不足とかで、お泊りの哨戒任務の出動回数が減ったとかなんとか。


 

 そういえば、私が訓練に参加するようになってからって、あんまりお泊りの任務行ってなさそうだったもんなぁ。


 ほぼ毎日訓練に参加出来てたし。たぶん、時々あるお休みの日が、みんなお泊り任務だったんだろうなぁ。

 


 私たちは軍属ってわけでもないから、哨戒任務もお手伝いだし、お泊りなんて全く――


 「――あ。なんか聞こえる……」

 


 「え? ほんと?」


 「キュッ!」


 かわいい目を丸くしたリトの胸元から、ひょっこりエメが顔を出してました。音に気が付いたのかな。



 「キュイッ!」

 

 「あ、ちょっと?! エメ!?」


 またエメがにょきっと出て、てしっと着地したかと思ったら……。


 颯爽とかっこよく走っていってしまいました! 張り切ってるみたいですね?


 

 「どうしようユウナ?! エメがいっちゃった……」


 「あー。この前の感じと同じだったら平気だと思うけどぉー……。追っかけよっか」


 エメは、カンがいいのか、耳がいいのか。メルちゃんにもすぐ気づいてたみたいだし、リトのピンチも教えてくれたし……今回も何か発見したのかもですね。


 

 そんなわけで。


 「いこ、リト!」


 「あ、ちょっと、速いよー!」



 全力でエメの後を追って走り出した私を、リトが低空を飛びながら追ってきてました。


 やっぱり、リトってすごい! 飛んでるエルフって見たことないもんね。




 背の低い藪を飛び越えたりすり抜けたり。平地を走るよりは少し障害物競走だったけど。前世では運動なんて見てるだけだったし、こーゆーのも結構楽しいんですよね!




 「キュイッ!」


 エメが走って行った方にしばらく進むと、エメが止まっていました。私もそっと急停止します。


 「エメ、どうしたの? なにか見つけたの?」



 「キュッ! キュイ!」


 なんだかエメは、いつもより小さめの声で鳴いていました。


 と、いうことは……

 

 「……はぁ……はぁ、ユ、ユウナ……」


 「リト。しー」


 すぐに追いついてきたリトに人差し指を口元に当てて、"しー"のポーズ。リトも察してくれたみたいで、すっと静かに地面に降りました。


 

 「なにか……わかったの……?」


 そんなリトは、おそるおそるといった感じ。


 

 「エメが警戒してるみたいだから、なにかいると思う」


 「警戒ってことは、この前の人魚さんじゃないんだね……」


 「うん。この藪の先、たぶん川原だと思う。……そこに何かいそう」


 水の流れる微かな音が聞こえてきます。と、いうことは、怪しい声が聞こえたのってこのあたりかも。



 「キュイッ!」


 「うん。見てみるね」


 そろーっと音を立てないように……四つん這いで藪の下からひょこっと顔を出すと。



 え? あれって、クマさんだ……。けど……様子がおかしい……?


 この前リトがやっつけたクマさんよりも小さいんですけど、なんと言うか……よだれをダラダラ垂らしてて、舌もベローっと垂れてて……何よりも、目が……どろりと濁ってて……溶けてる?


 しかも、他にも狼が2頭……?


 争ってる感じでもなくって、ぼーっとしてるみたい。



 その狼も、クマさんと同じように、やっぱり様子がおかしいみたいでした。


 近くには襲われてるひととかいなくってよかったけど……と、思っていたら。


 

 風が、吹きました。緩やかな風。すこし、甘いような匂いが辺りに漂ったような気が。


 アレ……? まさか……こ……れ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ