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残念エルフ姫ってなんですか?! そんなの聞いてませんけど…… 【神世界転生譚】ユウナと不思議な世界  作者: Resetter
五章 : スヴァルト暮らし

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100. 空の彼方に



 問題の? お茶会は、お茶もお菓子も軽食も、全部全部美味しかったです。


 なんだか、リーズ王子がちょっとイライラしてたりしてましたけど、リトもいたし、ミーミルさんともちょっとお話したりして、なんとか乗り切ったのです!



 そして。


 「探検、行けなかったけど……美味しかったね!」


 「うん。そうだね……。でも、王子……あんなに無視しちゃってよかったの?」



 お城からの帰り道。


 リトと話しながら、夕暮れの中を歩きます。和風の街並みが朱に染まって、とても風情がある感じです。


 アルヴヘイムは、四季みたいなのがなくて、年中春のような秋のような過ごしやすい温度なんですけど、こういう風景はなんだか秋っぽさを感じますね!


 探検は行けなかったけど、また行けばいいし、まぁよかった? のかなー?


 

 

 エメたちも、お庭で遊んだり美味しいものをもらっていたみたいで、わりと満足したみたいですしね。


 エメ、今はムクの上でスヤスヤしています。いつもはやんちゃだし、こんなのもかわいいですね!



 「ん? 王子? なんかイライラしてたし、あんまり話したくなかったんだよねー」


 「うーん……それだとユウナ、またお茶会誘われるんじゃない?」



 「んー……リーグ王子じゃなかったら、お茶もお菓子も美味しいし、行ってもいいかなぁって思わなくもないけどぉ……でも、ムクたちがたいくつになっちゃうしね! 探検いかないとだよ!」


 「そっかー……王子、しつこく来ないといいね……」



 リトはそう言って、小さい息をふっと落として、夕陽に照らされて薄紫みたいになった髪を揺らしながら、振り返って……そして茜空に視線を送りました。



 「王子は~……無視してればいいし! それより、ミーミルさんは大丈夫そうだったけど、アーナは……」


 「あー、アーナ姫……ずいぶんヒドイ感じだったもんね。ユウナの妹だなんて信じられないよ……」



 「レーナ王妃の影響なんだろうねー。ちょっとだけ実物見たけどさ、ホントにひどかったよー!」


 「ああ、護衛の仕事の時だよね。……でも、ほんとにアーナ姫が来て、しかもユウナに会っちゃうなんて……これからどうなっちゃうんだろね……」


 リトは、視線をさらに上に向けながら、言葉を空に溶かしていきました。


 

 「うーん……。でも、ミーミルさんがアーナのこともなんとかしてくれるみたいなこと言ってたし……」


 そんなリトに、少し見惚れながらも、会話を続けます。


 

 「戦争回避のためには、アーナ姫とお世話係のひとの口を塞ぐ必要がある、だっけ……。ミーミルさん、信じて大丈夫なのかな……?」


 「うーん……。さすがに……スヴァルト国内で変なことはできないと思うよ? それに……アーナもこの国に、今いるわけだし……3人ともお城住まいになるって話だったしね……」



 「そっか……そうだよね……。だいじょうぶ、だよね……」


 なんだかリトの祈るような声色は、空に溶けたはずなのに、私の心の奥に住み着いてしまったかのようでした。



 「……うん。ごめんね、ユウナ。変なこと言って。……あ、そうだ。さっきわりと食べちゃったけど、今日の晩御飯……どうしよっか?」


 「あー、そうだねー。まだそんなにお腹空いてな……え? あれ……」


 リトにつられた感じで、空を見ながら話していたのですが……今日の空……何か変で……?



 「ん? どうしたの?」


 私が空を見上げたまま固まっていたら、リトもその方向を見て――


 「え、あれって……?! もしかして……」


 と、驚きの声をあげました。



 空の一部、トゥレイア山の方向――そのあたりに、細長い光がゆらゆらと――そしてゆっくりと、茜を白く切り分けながら、どこかへ伸びていっているようでした。


 あんなの、いままでなかった。


 まだまだ小さな光の筋という感じだけど、あれがきっと光の橋だ!



 「ね、リト! ブロックルさんのとこ、行こう!」


 「う、うん……!」




――――

――



 私たちは、家に帰らずにそのままブロックルさんの工房に向かいました。


 時計はないので、正確な時間はわかりませんが、あんまり遅いと迷惑だと思うので、まだお仕事していそうな時間までにと急いだのです。


 みんなには工房の玄関あたりで待っていてもらって、私はいつもの窓側へまわりました。



 ――コンコンッ……ゴッ!


 やっぱりまだ作業中のようで、音がしていました。



 「あ、ブロックルさん……」


 いつもなら待つんですけど、今日も緊急事態です! ごめんなさい、ブロックルさん……邪魔をしたいわけじゃないんです……!



 「……ん? ああ、嬢ちゃんか。どうした、またなんかあったのか?」


 「ユウナ様。お声がけとは珍しいですね」


 どうやらブロックルさんは、剣の柄をつける作業中のようでした。ナッビさんもお手伝いなのか、何かを運んでいたみたいです。



 「あ、えっと、そ、空にっ……」


 「あぁん? なんだ、そんなに慌てて……。まぁ……もうじき終わる。入ってこい」


 ブロックルさんは、顔も上げずにそう言いました。

 


 「あ、はい」


 私は玄関にまわりました。



 

――――

――




 お仕事が終わったブロックルさんたちに、空に見えたものの話をしました。



 「ふむ、そうか……」


 全部話し終えると、ブロックルさんは、そうかとだけ言って、静かに立ち上がりました。



 「外へいくぞ」


 「あ、はい」



 

 外は、もう夕陽も沈みきり、星々や月が顔を出していました。


 「……おお、あれか。ふむ。あれなら、もうすぐ繋がるだろう」



 「つながる?」


 「ああ。7日もすれば橋も架かるだろうよ。行くなら急ぐこった。いつ消えるかも定かではないからな……」


 

 「え?! そうなんですか?! リト、どうする?」


 「急がないとなら、すぐ準備しよ。明日から向かえば……ムクとロラならだいぶ早く着けるんじゃないかな?」


 「あ、うん。そうだよね! じゃあ帰ったらすぐに準備して、明日はみんなに挨拶して……」


 すごく急だったけど……あ、でも、ブロックルさんに話を聞いてから4か月くらい経ってるし、全然すぐじゃないのかな。


 とにかくすぐ行かないと、ですね!



 

 「ああ、そうだ。ルクは置いていけ。おそらく通れんからな」


 「えっ?! と、通れない?!」



 「ああ、試したことはないが、特に普通のルクは無理だろうな。神力……精力操作が必要だ」


 「えっ……じゃあ、私……通れない……?」


 私、精力……ないわけじゃないらしいけど、循環してないから全く使えないんですけど?!

 


 「そこはリト嬢に何とかしてもらえ」


 「え」



 「それでどうにかなるんですか……?」


 リトが、くるりとブロックルさんを見ていました。あんなにしっかりとブロックルさんを見るリト、ものすごく珍しいな……。


 いつも怖がって目線をそらしがちだったから、もしかしたら初めてかもしれないですね。



 「ああ。リト嬢なら出来るだろうよ」


 「わかりました。……ユウナ。行こう!」


 リトは、リトの瞳は、いつもの可愛らしい感じじゃなくって、すごく力強くて――かっこよかった。


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