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ゼフィとの暮らし

マリリエンヌ目線です

 ゼフィと暮らすようになって数ヶ月が過ぎようとしていた。



 分身の薬を飲んで3日後、マリリエンヌは無事元の姿に戻ることができた。

 ただそれはそれで問題が生じた。

 誰もが心を奪われるほど可憐で美しい顔と特徴的な銀髪はいずれ誰かの目に留まり、話が広がって行くだろう。

 そこでゼフィがヴェールを貸してくれた。

「これで顔を隠しときな。髪は束ねて纏めておけば見えないだろう」

 それ以来、マリリエンヌのことを知らない人に会う時には必ずヴェールを被った。



 魔女であるゼフィの仕事の多くは人々の悩みを聞くことだった。

 眠れないと言えば心が落ち着くお茶を煎じ、胃腸が悪いと言えば胃腸に良いものを煎じる。

 殆どは草木や花、野菜を調合したものだった。


 この家に住んで初めて知ったのは、家の裏庭が見事なまでの花畑だったことだ。そして花畑の横には畑があり様々な植物が植えられている。


 王都で見るような完璧に人によって作られた庭園も素晴らしいが、ほぼ人の手が入らずそれぞれの植物が競うように咲き乱れ自生するこの花畑もマリリエンヌはとても好きだ。


 そしてゼフィが何かを調合するとき、これらの花はマリリエンヌによって摘まれるのだった。


「イエローローズの花びらを5枚に、菜の花の花びらと茎を1本分、それにミントとローズマリーを持ってきておくれ」

「ニンニク1つにオリーブ10個と木苺の実を5粒、ラベンダーに、プルメリアの花びらを3枚だ」

 そうやって言われた通りのものをゼフィに持っていくと、それにワインを混ぜたり、油を数滴落としたり…と複雑に調合し目的のものが出来上がる。


 ただ時々さすが魔女と言われるだけあると思うものを調合することもある。

「ティートリーに、ローズマリー、ミントと、蛙一匹にコウモリ一匹、鳩の目玉1つだ」

 目的も効用も調合も様々だ。


 蛙、コウモリ、クモ、カラス、ニワトリにヘビ…。生きてるものから死んで乾燥されたものまである。

 生きてるものを飼育するのもマリリエンヌの仕事だった。



 ある日、男性が2人屋敷に飛び込んできた。

「ゼフィ!ゼフィ!いるかい?」

「なんだい、どうした?」

「流行り病だ!村の者が次々倒れるんだ、助けてくれ!」

 ゼフィはどんな症状か、何人ほどか等いくつか質問すると

「とりあえず今はこれだけだから持っていきな。

 スプーンに2杯ずつ飲ませるんだ。

 急いでたくさん作るから、出来たら持って行くよ」

「すまない、ありがとう!」

 男達はゼフィに渡された液体の瓶を大事そうに抱えて走って行った。


「マリー!忙しくなるよ」

「はい!」

 ゼフィはマリリエンヌに矢次早に指示を出した。

「パープルローズの花びら10枚、ベラドンナにローズマリー、ミントに、ラベンダー、ブラウンマッシュルーム5個に、菜の花、木苺の実20粒。あ!プルメリアの花びら5枚!

「蛙3匹に、蜂は…そうだね30匹ほど。ヘビ2匹に、コウモリ1羽、カラスの目玉を4つ、鳩の内臓もだ!急ぐんだよ!」


 マリリエンヌの記憶力は抜群だった。…ここに来て自分でも初めて知ったのだが。

 言われたものを集めゼフィに渡すと、大きなかまどに置かれた大きな鍋に、彼女しかわからない順番で呪文を唱えながら次々放り込む。そして何かわからない液体もドバドバ流し込む。

 そうやって、ものすごい匂いをさせながら数時間煮込む。


 その間、マリリエンヌはもう一度同じものを集めさせられた。

 そして、もう一つのかまどで同じ作業が行われた。


「念の為、多めに作っておいたほうが良さそうだ。」

 鍋を混ぜ続ける作業をマリリエンヌも手伝う。

 煮詰める作業が終わると少し冷やし、それらを漉して出来上がりだ。


「ドルチェ!ドルチェ!」

 ゼフィは彼を呼び、出来上がった薬を村に届けるよう命じた。


 ドルチェはゼフィの御者であり、庭仕事やその他諸々なんでも手伝う。

 裏の花畑の向こう側にある小屋に住んでいる。

 マリリエンヌと同じ住み込みの使用人だ。

 年齢はずいぶん上のようにも見えるが、案外若いのかもしれない。

 片目が潰れている。

 初めは無口でとっつきにくかったが、一緒に働くうちに、黙って重い荷物を持ってくれたり、マリリエンヌが時間を忘れて花畑で作業しているとそっとお茶を持ってきてくれたりする。

 今では言葉は特に交わさないが、マリリエンヌも彼を信頼している。




 翌日、マリリエンヌはゼフィに買い出しを頼まれた。

 この度、蛙や蜂やコウモリ、ヘビなど乾燥のものをたくさん使ったので王都の町へ買い出しに行ってほしいと言われたのだ。


 これまで数回、ゼフィと一緒に買い出しに行ったことはあるが、一人で行くのは初めてだ。

 しかも王都。


「大丈夫だ、ドルチェもいるし。ヴェールもあるし、ルビーのネックレスはしてるんだろ。それなら何も問題ない。

 あたしはもう一回、薬を作っておこうと思うんだ。」

 そう言われて、ドルチェが一緒なら、とマリリエンヌは町へとでかけた。


ゼフィの調合は完全に創作です。


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