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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

顔が良い奴が勝負に勝つとは限らない(百合? 片想い。女子高生)

作者: 飛鳥井 作太


「愛してるゲームしようよ」

 湖南こなみが、出し抜けに言い出した。

 昼休み。期末テスト前の気怠い初夏のこと。

「はあ? 嫌だよ」

 萬場ばんばが、単語帳から顔を上げて言った。

 英語部部室の隅。そこが、湖南と萬場の定位置だ。

 長机の方にも部員が何人かいるが、彼女たちはいつもこのすみっこだ。

「あ、また負けるからだ?」

「あ?」

 最近湖南がハマっている『愛してる』ゲーム。

 愛してると告白する一連の流れで、照れたり笑ったりした方が負けという、アレだ。

「まあねえ、三十戦中二十九敗だもんねぇ。ごめんね、私の顔が良いばっかりに」

「うそぶっこくな! こっちは二勝しとるわボケ!」

 湖南の、ばっしばしに長い睫毛や黒目がちな瞳に見つめられると、恋愛感情など無くとも吸い込まれて夢中になってしまいそうだった。

 バランスよく弧を描く朱い唇も、サラサラの黒髪も、何もかもが整っている。

 そんな美人に見つめられ、口説かれ、愛していると囁かれれば、うっかり照れてしまうのも無理からぬもの。

 だが、萬場的にはそこが気に食わない。

 美形が美形を使う、そんなのは狡い。

 それが、萬場の言い分だ。

「じゃ、もう一戦やってみる?」

「望むところじゃ!」

 故に今日も今日とて、出来る限りのイケ顔イケボを作り、気合充分、勝負を受けるのだ。

「……今日も綺麗な黒髪だね。前髪、少し切ったでしょう? いいね。綺麗な瞳がよく見える。さ、その瞳でこちらをよく見て?」

「そっちこそ、悪戯っぽい笑顔が子猫みたいね。にゃんと一つ鳴いてみて? 頭をひと撫でしてあげましょう」


「「愛してる」」



 そんな二人を、少し離れたところから先輩二人が眺めていた。

「……あれ、何?」

「ああ、あれ?」

 小声で、ひそひそ、内緒話だ。

「素直に告白出来ない阿呆が、告白のイメトレの為に始めたごっこ遊びよ」

「へー」

「片や本気の『愛してる』だからね。あの美しい顔も相まって、まー、そりゃ、言われた方は照れちゃうよね」

「でも、遊びって思われてるんだよね。何か、試合に勝って勝負に負けてる感じしない?」

「そこは言ってやんなさんな」


 果たして、今日の勝敗は。


 END.


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