全てはここから始まる異世界転生
雨が降っている。
こんな日は、不思議と気分も落ち込んで嫌なことばかりが思い出されてしまう。
理不尽なクレームをつける客とくだらない事でネチネチと怒る上司。
やりたくもない仕事を続けるのも楽ではなかった。
僕はこんなつまらない現実に嫌気が差していた。
出来る事ならお金持ちの家に生まれ変って、優しい幼馴染が居て、誰からも愛される。
そんな人生を歩んでみたかった。
別に今の人生だって楽しかった時もあったがそんなのは何年も前に通り過ぎてしまった思い出だ。
今思えばあの時に死ねたら一番幸せだっただろうにと思う。
一番の不幸は高校の頃から付き合っていた恋人が三年前に突然音信不通になり、失踪してしまった事だ。
事件なのか、事故なのか。何もわからないまま...ただ彼女は居なくなってしまった。
それ以来僕は、誰かと付き合うこともなく生きてきた。
唯一の心の拠り所だった爺さんも、去年天寿を全うした。
幼い頃に両親が事故で亡くなってから、僕の面倒を見てくれていた爺さんだったから、今や僕は天涯孤独の身になってしまった。
大好きだった爺さんは笑顔でこの世を去っていったが、その日から三日三晩泣き続けた記憶がある。
何もかも失った現実に嫌気が差していたんだ。
好きな物ばかり無くなって、嫌なことばかりのこの世界になんで生まれ来たんだって何度も思った。
それでもなんとか頑張って生きてきた。
けど今や働く気力すら無くなって遂に今日、仕事をやめてしまった。
...ふと小さな頃を思い出した。
無邪気に笑って自分の輝かしい未来に夢を馳せていた頃だ。
「僕は、将来もっとキラキラした世界に生きていると思ってたんだけどな・・・」
僕には小さな頃からの夢があった。
ありきたりな男の子の夢かもしれないが、戦隊ヒーローみたいな正義の味方になりたかったのだ。
弱きを助け、強きを挫く、そんなヒーローの姿に憧れていた。
「まぁ・・・今更ヒーローになんてなれやしないからな・・・」
少年のような心のままなら今からでもなれたのだろうか。
なんて思いそうぼやきながらも歩きなれた道をただひたすら歩いていく。
しばらく歩いていると前から走ってくる何かとぶつかった、いやぶつかってきた。
ぼーっとしていたので何がぶつかってきたのかが分かるまで少しかかってしまった。
いや、本当なら分からないままのが良かったのかもしれなかった。
ぶつかってきたソレはマスクにサングラスにニット帽、不審者三種の神器を身に着けた男だった。
今時こんな不審者ですなんて、自分から言うような恰好するような奴がいるのかよ。
なんて呑気に思って居る場合なんかじゃなかった。
腹部に痛烈な痛みが走り、全身から冷や汗が出る。
あまりの痛さに立っていることなどできず、その場に倒れこむ。
腹部にナイフが刺さっていた。
息をするだけでも痛い。
何をしても痛い。
もちろん横たわって、もがくことしかできないのだが。
「うっぐぅううぅううう・・・なん・・・だよ・・・
そうだ・・・救・・救急車・・・」
咄嗟の判断にしてはよく出来た判断だと思う。
だがどういう事かカバンがない・・・
いや理解こそしているがもうあまりの悲運に理解したくなかった。
既に刺した男は立ち去り、周りに人の気配などなく、もはや自分でどうにかするしかない状況なのだが。
「なんだ・・・強盗・・・かよ・・・
ついてねぇ・・・なぁ・・・」
瞼が重い。体がだるくて仕方がない。
恐らくこのまま死ぬんだろうと思った。
もう時間も恐らくないんだろうが明日のニュースには僕の事が流れるのかなぁとか馬鹿な事を考えたり、だけど大好きだった爺さんの元に行けるのが少しだけ嬉しく感じた。
少しだけ寂しかったのは死ぬ間際には走馬灯が見えるだとか三途の川だとか。
そういったものが見れなかった事だなと思う。
最後なんだから幸せな気分になる走馬灯位流してくれよ・・・
なんて思いながら、目を閉じた・・・
初投稿です。読みづらい文章でしたらすみませんがこれからもお付き合い頂けると嬉しいです。
風呂場で思いついた設定を元に書き出してみましたが中々、小説を書くのは難しいですね。
これからよろしくお願いします。ブックマークも是非お願いします。