呪いの人形
皆さんは「呪いの人形」の存在を信じますか?
私は信じざるを得ない事件に出会いました。
それをこれからお話しましょう。
私は霊能者の見習いです。高名な霊能者の先生の元で修行中でした。
そんなある日、先生のところにある大富豪の老人が訪れました。
先生はその富豪の老人が訪れるのを予期していたようで、何も尋ねずに奥の間に通しました。
老人は紫色の布に包まれた箱を持っていました。
箱は木製で、高さが30センチほどありました。
「中身は人形ですね」
先生は老人を見て言いました。老人も先生の力を聞き及んでいるのか、その問いに驚くでもなく、小さく頷くと、
「その通りです。この人形に私は悩まされています。何とかして頂けないかと思いましてな」
「箱から出さなくてもその人形の強烈な波動がわかります。何故貴方はそれほどの魔性を吸っている人形をお持ちなのです?」
先生は箱を見つめたままで尋ねました。老人も箱を見据えて、
「何度も手放そうとしたのですが、どうしたことか、私のところに舞い戻って来るのです」
「なるほど。相当な業を背負った人形のようですな。それに貴方の守護霊が動揺されています」
「何と? それほど危険なものですか?」
先生は老人を見て、
「このまま持ち続ければいつかは貴方の命を吸い取る事になりましょう。私が何とか致します」
「ありがとうございます」
先生は人形を預かる事にし、老人は帰りました。
「これは私の術の間に置く。持って行っておいてくれ」
「は、はい」
私は2人の会話ですっかり萎縮してしまっていて、その箱を手にするのが怖かったが、そんな事は言えないので、震えながらその箱を持ちました。
「?」
私も霊能者の端くれです。しかし、この箱からは何にも感じ取れません。
不思議に思いながら、その箱を「術の間」に運びました。
最初はそんなつもりはなかったのですが、何となく中身を見たくなり、箱の蓋を取りました。
「こ、これは・・・」
私は驚愕しました。箱の中に入っていた人形に見覚えがありました。
先生の居室の押し入れの中にたくさん同じものが並んでいたのを思い出したのです。
「確かに呪いの人形ね」
私は溜息を吐き、蓋を戻しました。
私は理由を言わず、先生のところを辞めました。
皆さん、どうですか? 確かに「呪いの人形」はあるのです。