過去と未来
何気ない時間で作った作品で作品を読んだ方の1人にとてもいい作品と言われたので載せてみました。続きは多分ない!
「ここはどこだろう...?」
僕は暗い一本道にいる。なぜかは分からない。
理由も分からない。
「確か...学校にいたはずだけど...」
僕は学校にいたはず。記憶を探る。
思い出すために。
「いじめを止めようとしてそのまま階段から...」
僕は普段は見て見ぬふりをする。
いじめを止めようとしない。
けど何故かその時だけは止めたかった。
理由は分からない。
僕が覚えているのはそこまでだった。
「階段から落ちて...ここは死の世界?僕は死んだのかな...進んで見れば何かわかるかな...」
僕は現状何がどうなってるのか分からない。
何があるかも分からない。
だけど、とりあえず進むことにした。
それが正解だと思った。
歩いてどれくらい経過したのだろうか...
先が見えない。けど、わかったことがある。
ここは死と生の境目だと。奥に進めば進むほど冷たくおぞましい空気で吐きそうになる。
けど僕は進みたかった。現実に戻っても何もいいことなんてないからだ。
僕は周りに流されて、自分の意見も言えず、いじめられ、人を信じれなくなった人間だ。そして、たった1人の友人をも自分が殺してしまったのだから。
「あれ...この香りは、懐かしい?」
そう考えていると、漂ってきたこの香り、とても懐かしくて、暖かい香りだった。
僕は急いだ。この香りを追いかけて。
そこにいるのはきっと...
「やっぱり君だったんだね。やっと会えた。」
そこに居たのは僕の友人であり、家族であり、唯一信用していた猫だった。言葉は分からなかったけど、いつもそばにいてくれたかけがえのない家族だった。
「やぁ、久しぶり。4年かな?5年かな?大きく成長したね。」
猫は語った。僕は最初驚いた。ここにいるのは本当に僕の家族だったのだろうか?と...
猫が喋るなんて考えられなかった。
「僕は君の猫だよ。間違いない。これだけは今も昔も譲る気は無いさ。」
そう友人が言った。まるで心を読んでるかのようだった。
けど、本物だ。僕は確信した。僕の家族だ。そうわかった途端全身から力が抜けたのがわかった。怖かった恐怖はもうなかった。
「全く...君は昔から落ち着きがないんだから...そこは変わらなくて安心してる僕がいるんだけどね。ところで君は死んだのかな?ここは死者の国の行く途中なんだけど...」
友人は教えてくれた。
「僕にも分からない。気づいたらここにいたんだ。」
僕はそう答えた。
友人はなるほどと答えて、それから教えてくれた。
「君は死と生の狭間にいるんだよ。今ならまだ帰れる。反対の道に進んだ方がいいよ。君にはまだ早いからね。」
そう戻れば生の世界へ帰れる...それは分かっていた。けど何故僕がここにいるのか、それだけは分からなかった。
そう考えていると友人は語った。
「死者の国へ来るってことは君は僕に対してなにか未練でもあるんじゃないのかな?それか本当に死んだのか...でも、それは無いだろうね戻り道があるんだから。」
未練...僕は考えた。友人に対しての未練はある。一緒に行けば離れることは無い...けど僕はまだ死にたくなかった。なぜかは分からない。けど死にたくなかった。友人とは最後になるかもしれない。だから僕は言うことにした。全てを。
「聞いてくれる?僕はずっと謝りたかったんだ。君が死んだ時、僕を庇ったから君は死んだって。僕を庇わなかったら生きてたんだって。だから謝りたかったんだ。君の人生を、君の未来を奪ってごめんって...ずっとずっと思ってたんだ。」
僕は語る。今までのこと、思っていたこと、起きたこと全てを。友人はただ静かに聞いてくれる。泣きながら言葉になっていないとわかっている。けど、僕は話し続けた。僕が話し終わった時友人は口を開いた。
「謝らないで。僕いつも見てたんだ。君は辛い人生を送ってきたと思うよ。君は周りに流され、自分を偽ってきて、友達が欲しいのに他人が怖くて、1人で抱え込んで、誰にも相談ができなくて自分をどんどん壊していく。そんな子だってわかってた。僕が最後の引き金になったのはびっくりしたけどね。けどね僕は、君を庇って後悔はしてないよ。むしろ、誇らしいよ。君を庇えた。救えた。だから、これからも生きて欲しい。諦めないで。辛いかもしれない。けど諦めないで生きて欲しいんだ。君はとても優しいって誰よりも僕は知ってるんだからね。
約束だよ。僕はまだ君の物語を最後まで聞いてないからね。だから、諦めないで。負けないで。君ならできる。そしていつか話そう。」
僕は友人と約束した。そして戻ることを決意した。最後に名前を...そう思った。けど名前が出てこなかった。
「僕に名前はもうないよ。君は生者、僕は死者。
関わっては行けない存在さ。けど、僕は待つよ。君の話を聞きたくなったからね。だから、楽しい話を楽しみに待ってるよ。」
もう悔いはない。次会うときはお土産を持っていかなきゃね。
僕はそう誓い、友人に別れを告げ戻った。
生の世界へ。
僕は目が覚めた...ずっと寝てた気分だ。
目が覚めると保健室で寝ていた。
横を見ると、1人寝ていた。その子はいじめられてた子だった。ずっと看病してくれてたのだろう。僕はそっと起こした。
彼女は起きた。
「さっきは...ありがとう!階段から落ちた時、庇ってくれて、けど君が落ちてそのまま目を覚まさなくて、心配して眠れませんでしたよ!」
さっき寝てたのは寝てるに入らなかったのだろうか...
僕は苦笑いしながら彼女にお礼を言った。
そして、
「君の名前を教えてくれないかな?そして僕の友達になって欲しい。」
人生2人目の友達ができる瞬間だった。なってくれるかは分からなかった。けどなってくれるそう確信していた。
彼女は少し照れながらも教えてくれた。
「私の名前はありあっていうの!素敵な名前でしょ?まぁ、呼び方が変だからいじめられるんだけどね...って、私は教えたんだから、君も教えてよ!」
ありあと名乗る女の子に怒られながらも、僕は名前を名乗った。
「僕の名前は楓って言うんだ。よろしくありあさん」
僕はそう言った。すると彼女は
「呼び捨てでいいよ!それよりも、もう放課後だし帰ろ!先生に怒られちゃうよ!」
僕は初めてできた友達と帰る。
楽しみで仕方なかった。
「君が看病してくれてたんだよね。ありがとう。お礼になるか分からないけど、昔話をひとつしてあげるよ。」
彼女は目を輝かせながら、僕が話すのを待っていた。これだけ期待されたら話しにくいのにと思いつつ僕は語った。
「これはね1人の友人とその友達話さ」
僕は語り出すと彼女はそっと手を握ってくれた。その意図は分からなかった。僕はその手をそっと握り返した。
僕はその時...初めて幸せと安心感を感じた。
その温もりを感じながら僕達は正門をでた。
この時の僕も彼女も付き合うなんて思ってもなかったと思う。
これは僕の昔話。本当にあった悲しくて切なくてどこか暖かい話。今も待ってる友人の話。
今を共にする彼女の話。
僕は今幸せだ。きっと君にも幸せが来るだろう。僕は祈ってるよ。
この日記を、読んでくれた君たちに幸せがあらんことを。
僕は書き終わった。
ちょうどその時、外から声が聞こえた。
「早く行かないと間に合わないよ!楓!」
「今向かうよ!」
僕は返事をして、支度をした。僕は部屋を出る前に日記を閉じ、急いで外へ向かった。
その1歩は未来への...幸せへの第1歩だと信じて...
前置きで書かないと言ったんですが、もしかしたら後日談を書くかもしれないです。それではまたお会いしましょう!