そういう気持ちを
ウルがそう思ったとおり、ミコナはすごく<いい子>でした。むしろ、いい子すぎるくらいに。
ウルはそれを察してしまったのです。
だから今度はウルが尋ねます。
「ミコナちゃんの話を聞きたいな。何か辛いこととかなかった?」
「え? 私? う〜ん、パパも優しいしみんなも親切にしてくれるから、別に辛いこととかなかったかなあ」
応えたミコナの表情を、ウルは、よく見ます。でも、嘘を吐いてる表情じゃないのが分かって、ホッとする。だけど、その後で、
「でもね、ママがいなくて寂しかったのはホントだよ。パパがいてくれたから大丈夫だっただけでさ」
少しだけ寂しそうな表情のミコナに、
「そうや! そういう気持ちをちゃんと口にせなあきませんで!」
ティーさんが声を。だけどその声が大きすぎて、
「んん……」
ガーがもそもそと身をよじってしまって。さすがにうるさかったらしくて。
「しー……!」
「しー……っ!」
ミコナとウルが指を手に当ててティーさんを見ます。
「おっととと、こら失敬」
ティーさんが慌てて自分の手で口をふさぎます。
だけど、ティーさんの言うことも一理ある。辛い気持ちや寂しい気持ちは、無理に抑え込むといつか爆発してしまうことがあるのも確か。だからミコナのママは、気持ちを素直に表に出す人でした。
そして同時に、パパやミコナの気持ちを受け止めてくれる人でした。
自分ばかりが素直になるんじゃなく。
だからミコナはママのことが大好きでした。ちゃんと自分を見てくれるから。
もちろんパパも。
そんなママとパパの娘だったから、ミコナも鷹揚でいられるというのも確か。
ウルは言います。
「ティーさんの言うとおりだよ。寂しかったら寂しいって言ってほしい。辛かったら辛いって言ってほしい。僕達はそのために来たんだ。
ミコナちゃん、これからは僕達がいるよ。僕達も君の気持ちを受け止めるよ」
彼のその言葉に、
「……うん、よろしくね」
ミコナの目が潤んでいたのでした。