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顔馴染みにさえ
以前の彼女は、それこそ警察官に心配されて呼び止められることさえありました。迷子とか家出とかを心配されたんです。実際にはただの買い物なのに。
それで一部の警察官とは顔馴染みにさえなってしまいました。
それぐらい彼女の様子が普通じゃなかったんでしょう。
だけどそれも今はサンギータとの関係が改善し、さらにティーさんがこうして一緒に出掛けてくれることもあって、マシにはなっていました。マシにはね。
それでもやっぱり怯えているようにも見えてしまいます。
「やれやれ……」
サンギータはそんな母親の様子に呆れつつも、怒っているような感じではありません。 怒ったところで仕方がないのは分かっているからです。ヴァドヤのそれは、ヴァドヤ自身でもどうにもならない心の傷、いわば<PTSD>に近いものでしょうから。
だから本当は病院で専門的な対処をしてもらった方がいいんでしょうけど、ヴァドヤ自身がそれを強く拒むので、行けていないんです。




