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そんな風に思えまんのや
ハカセも寝室に向かって、いよいよ静かになった家の中で、ウルとティーさんが、
「なんか、しっくりきたな」
「せやな。これが元々の姿やっちゅう感じがするわ」
「ああ、不思議だけど僕もそう思う」
「もしかしたらワイら、昔っから家族やったんかもしれんな」
「そうだな。亡くなった人の魂が帰って来るっていうのも、強い心残りがある人が帰ってくるというだけでそれ以前の人達は帰ってこないわけで、その魂はどうなったんだろうって思うと、心残りがなくなったから昔の記憶は全部忘れてまた新しく生まれてくるということかもしれない」
「せやせや、ワイもそんな気がしとる。けど、忘れててもどっかに引っかかるもんが残ってて、こうやって出逢おうたらそこが呼び覚まされてもうて、一緒におらんと収まりが悪いんかもしれへん。何の根拠もあらしまへんけど、そんな風に思えまんのや」




