偶然と言えば
だけど、すごく大儲けができるわけじゃなくても、ミコナと二人でこの家に住んで、お手伝いさんを雇って、さらに発明のための研究に使えるお金を用意できる程度には収入はあるので、困ることもありません。
そんなミコナとハカセの家の庭の手入れを、お手伝いさんが丁寧にします。
でも、その時、ビュウっと風が吹いて、お手伝いさんの帽子が飛ばされてしまいます。
「あ……っ!?」
ハッとなって手で押さえようとしたけど、間に合いません。だけど、宙を舞う帽子めがけて何かが奔り、バシッとそれを空中で捉えました。
フカでした。フカが屋根の上から見張りをしていて目撃、駆けつけてくれたのです。
「あ……ありがとうございます……」
思いがけないそれに、お手伝いさんも驚きながらお礼を言いました。
「……気を付けろ……」
フカはそれだけを言って、やっぱり不愛想な様子で口にくわえた帽子を渡します。
『これって……』
この時、お手伝いさんの頭に蘇るものがありました。これと同じような光景を見たことがあったのです。
それは、ミコナのママがまだ高校生だった頃、新入生だったお手伝いさんがスカーフを着けなおそうとした時に急に風が吹いて飛ばされてしまったのです。
すると、そこにたまたま通りがかったミコナのママが、
「おっと!」
咄嗟に手を伸ばして空中でキャッチ。
「気を付けてね」
呆気に取られてるお手伝いさんにそれだけを言ってスカーフを渡して、そのまま立ち去ってしまったことが。
「先輩……」
背中を向けて屋根の上に戻っていくフカを見送りながら、お手伝いさんは思わず呟きました。
偶然と言えばただの偶然なんでしょう。でも、この時のお手伝いさんには思い出されてしまったのです。




