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あの家庭は完全じゃない
だから、カリナは言います。
「いえ、もう大丈夫です。先輩のことは好きだけど、ミコナさんのことも大好きだし。先輩がご主人様のことをどうして好きになったのかも、傍で見ていて納得できました。私は先輩が大切にしている家庭を大切にしたいです」
そんな彼女にオウは、語りかけます。
「だったらもう、ためらう必要はないと思うぞ。お前も、あの家庭の一員なんだ。お前がいなけりゃあの家庭は完全じゃない。それを分かってやれ。
お前が別に家庭を持っていたら話は別だが、そうじゃないんだろう?」
それに対してカリナは、視線を伏せて、
「でも、私には……」
ためらいます。するとオウは言うんです。
「猫のことだろう? それなら心配要らん。お前が大切にしてる猫なら、俺達にとっても大切なんだ。そういうのもなしでこんな話はせん。それも込みで言ってるんだ」




