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黒い何かが
サンギータとヴァドヤについては、<娘と母親>という以上に、<同じ男性に捨てられた者同士>と言った方がいいのかもしれませんね。だから二人で支え合って生きていくことになるんでしょう。
だけどどういう生き方であっても、当人が心穏やかにいられるならそれは他の人があれこれ言うべきことじゃないですね。
そんなサンギータの様子を確かめながらティーさんは一緒に帰って、そしていつもの分かれ道で彼女を見送りました。その表情が穏やかだったらヴァドヤも穏やかにいられてることも分かります。ヴァドヤに何かあればサンギータの様子にも表れますから。
だけど今日も大丈夫そうなのは確かめられましたし、あとはミコナと一緒に帰るだけ。
と思ったら今度は、
「きゃっ!?」
ミコナが悲鳴を上げました。彼女の目の前を黒い何かがよぎったからです。そして、
「なんでやね~ん!」
遠ざかっていくティーさんの声。
カラスでした。今度はカラスがティーさんを攫って行ったのです。




