これまでの環境をなるべく維持する必要が
ミコナはとても恵まれています。それは事実です。ルリアに愛され、ハカセに愛され、カリナに愛され、そして今、ウルに、ティーさんに、ガーに、オウに、フカに愛されている。
だからこそミコナは穏やかでいられるんです。タムテルの家庭に育ったら、サンギータの家庭に育ったら、彼女は今の彼女ではなかったでしょう。
そういうものなんです。子供の側の資質だけでどんな人間に育つか決まってしまうわけじゃない。
『朱に交われば赤くなる』
どうしてそんな言葉が生まれたと思いますか? 状況によって人が変わってしまうということが昔から分かっていたからじゃないんですか?
ミコナだって今の自分じゃいられない境遇に置かれれば、きっと変わってしまうでしょう。
タムテルやサンギータが変わったのと同じく。
無論、人間の本質の部分はそう簡単に変わってしまうわけじゃないので、タムテルがクラスでみんなと明るくおしゃべりができるようにはまだなってませんし、サンギータも<デスメタル女子小学生>として今も活動しています。だけど同時に、確かに以前とは違ってる。
タムテルは母親に何か言われても聞き流すようになっているし、サンギータは母親のヴァドヤと一緒に食事をするようになって攻撃的な態度も収まった。だから以前よりは確実に状況はよくなっています。
ミコナの家庭のようにはなれなくても、マシにはなってるんです。
となれば、ミコナが今のミコナでいられるためには、これまでの環境をなるべく維持する必要がある。でも同時に、ハカセの仕事の締め切りが迫っているという事実もある。
その辺りでどうバランスを取るかが必要なんでしょうね。




