私はヴァドヤ
そうしてティーさんの言葉にサンギータの体から力が抜けていた時、ガーとヴァドヤはリビングでさめさめと泣いた後でようやく落ち着いて、ホッとしていました。
両手でガーを包むようにしつつ、泣きはらした目でヴァドヤがようやく口を開きます。
「私はヴァドヤ……あなたは、ガーって言うの……?」
問い掛けられて、ガーも、
「うん……僕は、ガーだよ……」
と口にしました。
そのとても頼りなげな細い声に、ヴァドヤはむしろ安心します。自分より弱々しいガーの様子に、精神が安定したのです。自分より弱そうな相手を見ることで。
そしてヴァドヤは語り始めます。
「私ね……あの人のことが好きだったの……あの人、最初はすごく優しかったんだよ……でも、私があの人を受け入れたら急に態度が変わって。命令とかするようになって……私、怖いのもあったけど、あの人のこと好きだったから……言うこと聞かなくちゃって思って……そしたらまたきっと優しい彼に戻ってくれると思って……
なのに、彼、子供ができたら家にも帰ってこなくなって……女の子だったのがダメだったみたい……私が男の子を生めなかったのがダメだったみたい……だけど、今度は男の子を生むって、生めるって、頑張って男の子を生もうって思ったんだ……だけど彼は帰ってこない……帰ってこないんだよ……
私、もう、どうしたらいいか分かんない……」
言いながらヴァドヤは、また涙をこぼし始めました。彼女には本当にどうしていいか分からないみたいです。分からないから、こうして怖い娘に怯えながら、一人で震えてるしかできなかった。
「ヴァドヤ……」
そんな彼女を、ガーはそっと撫でてくれたのでした。




