この辺りのどれかだな
「ふん。じゃあ、この辺りのどれかだな」
ガーの気配を辿って進んでいるうちにそれが背後からになったことで、オウはだいたいの当たりをつけました。候補は五軒。そのうちのどれかにガーがいます。
なので、さらに絞り込むため、ウルと距離を取り、それぞれが感じるガーの気配を探ります。
これにより候補は三軒まで絞り込めました。こうしてさらに同じことを何度も繰り返すことで、精度を上げていくのです。ガーが、人間の力では壊せないかぷせるあにまるだからこそ、それをしていられる時間的余裕があるというのもあってのことですが。
一方、ヴァドヤと一緒にいたガーも、気配が二つ、この家の周りを行ったり来たりしているのが感じられて、自分のいる場所を特定するためにそうしているのだと悟りました。
『どうしよう……どうしよう……』
ヴァドヤのしたことが良くないことだというのはガーにも分かります。だけど自分は彼女に対して怒ってない。だから今回は大目に見てほしいと思う。でもきっと、オウなら、
『何を言ってる!? こいつのしたことはまぎれもない犯罪だ! 一罰百戒! 罪は罰せられなければ範は示せない!!』
とでも言って、警察に突き出そうとするでしょう。オウの言いたいことも分かる。でも、攫われた自分が許してるのにそこまでするのも納得できない。
ガーはそう感じるのです。
世の中の人は、ガーの考えを、『平和ボケ』『お花畑』と罵るでしょう。確かに、そういう形で法を犯したことが許されてしまうのはよくないことでしょう。
けれど、ガーには分からないんです。この女の人は自分が良くないことをしたと分かってる。分かってて謝ってる。警察が逮捕して裁判にかけられるのは、
『あなたは悪いことをしたんです』
って、分からせるためにするっていうのもあるんじゃないか? だとしたら、もう悪いことをしたと分かってるこの人をこれ以上責める必要もないんじゃないかと思えて仕方なかったのでした。




