ルリアもヴァドヤのようになっていても
何か大変な事が起こった時、取り乱したりする人がいると逆に気持ちが落ち着いてしまったりする事がありますよね。つまりそういうことなんでしょう。
ヴァドヤの様子にハッとさせられたことで、逆にガーは冷静になれた。
加えて、オロオロする彼女の姿が自分に重なってしまったというのもあるかもしれません。
だからつい、
「大丈夫……?」
と声をかけてしまった。その本気で相手を気遣い労る言葉に、ヴァドヤは、
「うう…! うぅ~っ!!」
もう言葉にもならずに呻くだけでした。そんなヴァドヤの頭をガーがそっと撫でます。それがまたたまらなくてヴァドヤは声をつまらせます。
そんな風に優しく声を掛けてもらえたことなんていつぶりだったか思い出せません。知り合ったばかりの頃は優しかった夫も、実際に付き合い始めた頃にはもう優しくなくなっていて、サンギータを妊娠した時も周りの誰も優しくしてくれなくて、彼女の心は押し潰されそうでした。いえ、もう実際に押し潰されていたのでしょう。だから正気じゃなかった。だからガーを連れてきてしまった。
なのにそのガーに優しくされて、ヴァドヤの心はそれこそもうめちゃくちゃになってしまいました。
この時、実はガーの方も、ヴァドヤの姿が他人事とは思えなかったのです。ガーは、ルリアの魂の一部、人格の一部、それはつまりガーこそがルリアの表の人格であったとしても、おかしくなかったということでもあります。
何か歯車が狂っていれば、ルリアもヴァドヤのようになっていても何もおかしくなかったでしょう。それが分かるから、ガーになったことで余計に実感できるから、そうせずにはいられなかったのです。




