その時に滅んでしまえば
そんな余談が続きましたが、フカは、空から街を見下ろしていました。
何かを探すかのように。そう、フカは探していたんです。タムテルとその母親を。見付けられるとは思っていませんでしたけど、でも、探さずにはいられなかった。だけど、もし見付けたとしても、それからどうするかというのも考えてはいません。
タムテルの母親を叱り飛ばしてそれで解決するでしょうか? それであの母親は自分の過ちに気付いて行いを改めるでしょうか?
「……」
フカ自身、そんなビジョンはまったく見えていません。だけど、いても立ってもいられなかったのです。あの母親にタムテルというあの子が虐げられているかもしれないと思うと。
『だからといって何をするつもりなんだオレは……』
フカ自身、そんな風にも思います。そして、
『あの<石になった宇宙人>とやらは、なんでそんな人間を守ってやろうとか思ったんだ……?』
ルリアだった頃に何度か触れたことのあるその話を思い出し、考えます。
『目先の損得ばっかりで自分が何をしてるのかも省みようともしない人間ばっかりだったってのに、なんでそんな人間を守ってやろうなんて気になれたんだ……?』
もちろん、<石になった宇宙人>というのはただの物語で、本当に宇宙人が人間を救ったわけじゃありません。でもその一方で、あの大変な毒が世界中に広まって多くの人が病気に苦しんだというのは紛れもなく事実です。なのに当時の多くの人間達は、自分達がいい暮らしをしたいというだけの理由で毒を生み出してることを認めようともしなかった。
どうしてそんな人間達がたくさんいた時期に、人間は滅んでしまわなかったのか……?
その時に滅んでしまえば、タムテルのような子が生まれることもなかったのにと、考えてしまったのです。




