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ハカセを狙って

お手伝いさんは、リビングから出る時、外にいたフカにも、丁寧にお辞儀をして帰ってきました。


「なんだあいつ……?」


フカが怪訝そうに言います。家の人に挨拶するのは普通のことのはずですけど、だけど、お手伝いさんのそれは、どこか違ってる感じがしたのでしょう。


その一方、リビングの中では、お手伝いさんが帰ってミコナとハカセとウル達だけになると、


「やっぱり、他の人がいる前だとちょっと緊張するね」


ウルが声を上げました。続いてティーさんも。


「せやな。あのお手伝いさんはいい人そうやけど、いうても普通の人やさかい、やっぱりワイらのことはちょっと怖いかもしれんし」


するとミコナは言います。


「ああ、でも、あのお手伝いさんだったら大丈夫だと思うよ。お父さんのこともずっと前からよく知ってるみたいだし」


それを聞いたオウが、


「なに!? するとあやつはハカセを狙っているのか……!?」


少し芝居がかった大袈裟な感じで羽を広げながら。


でもミコナは、


「違う違う、そういうんじゃなくてさ、ママとお父さんの学校の後輩の人で、ママのファンだった人なんだって。だけどママが亡くなったって聞いて、それでお手伝いさんに応募してくれたんだ」


と説明します。それには、オウも、


「なんと!? 初耳だぞ!?」


やっぱりママの記憶が一部あるみたいで、そんな言い方をします。


するとミコナはさらに、


「知らなくて当然だと思う。学校にいた時は話し掛けることもできなかったそうだから。いつも遠くから見てて、憧れてたんだって」


付け足して説明を。


「なるほど。道理で覚えがないわけだ」


ウルも納得したように頷きました。


そしてティーさんは、


「せやけど、だからいうてお手伝いさんとしてくるとか、半端な気持ちやないんちゃうやろか。生きてるうちにちゃんとお話ししときたかったやろうなあ」


なんだかしんみりした感じで言ったのでした。



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