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もっと甘えてくれていいのに

忌々しそうにオウを見上げるフカでしたけど、だからといって追いかけて襲いかかるようなこともしませんでした。

単純に興を削がれたというのもありながらも、同時に、ミコナに、

『噛んじゃダメ！』

と言われた時につい噛むのをやめてしまったことも影響してるのかもしれません。

フカ自身にもなぜか分からない。ただなんとなく、やめてしまった。

「クソッ…！　なんでだよ……！」

イライラした感じで尻尾を揺らしつつ呟きました。

ただ、あの時に自分を見たミコナの悲しそうな顔を思い出すと、すごくザワザワした気持ちになるのも事実。

決して好き好んで見たいとは思わないタイプのそれ。

「うるせぇ…！　オレはオレだ……！」

なにが『うるさい』のかは分かりませんがまたそう呟いて、フカはプイとそっぽを向きました。

一方、ミコナ達も、こんな騒動があってはさすがに子供達だけで遊んでいるわけにもいかず、ルイネとエンファのお母さんやお父さんがそれぞれ迎えに来て、家に帰ることに。

「じゃあ、またね」

「ばいばい」

二人は名残惜しそうに手を振りながら、でも、ウル達と友達になれたことには満足しながら、帰っていきました。また遊ぶことを約束して。

「いやはや、いきなり大事件でんな。ミコナはん、大丈夫でっか？」

ティーさんが尻尾をぐるぐる回しながら聞いてきます。

「うん。大丈夫だよ。それより、ティーさん達も大丈夫？」

逆に自分達を気遣ってくれるミコナに、

「ほんま、いい子でんなあ……」

ティーさんはしみじみ言って、

「まったくだよ。もっと甘えてくれていいのに」

ウルも苦笑い。

そしてガーは、黙ったままミコナの指に顔をスリスリと寄せました。甘えているというよりは、ミコナを慰めようとしてる感じで。

自分に優しくしてくれる彼女のことを、ガーなりに気遣ってくれてるようでした。