いくら泥棒が相手でも
「ほんとに泥棒だったんだ」
「初めて見た。怖かった」
オウとフカが足止めしている間にハカセが警察に通報したことでパトカーが駆けつけて泥棒があえなく逮捕された様子を見たルイネとエンファが、怖がりながらもどこか興奮した感じで言いました。
二人共、本物の泥棒を見たのも初めてだし、それが捕まるところを見たのも初めてだったからです。
アニマタウンはとても平和な街で悪い人もほとんどいないけど、全然いないというわけでもありません。こうして泥棒が出ることもたまにはあります。
まさにその『たまに』に遭遇してしまったわけです。
「この度はご協力まことに感謝します」
おまわりさんの一人がミコナの家に来て、ハカセにそうお礼を言いました。オウとフカが泥棒の足止めをしていたことに感謝しているのです。
おまわりさんもハカセのことはよく知っているので、オウとフカを見た時にも少し驚いただけで、すぐにハカセの発明品だと気付いて気を取り直すことが出来ました。
一方、泥棒の方は、どこかよそから来たのかもしれません。ハカセのことも知らなかったのでしょう。だからオウとフカに驚いて慌ててしまった。
悪いことをしてるから邪魔をされて焦ってしまったのもあるかもしれません。
「どうしてあんなことするんだろうね……」
ミコナは悲しそうに言います。
「そうだね……」
彼女の肩を抱いたハカセが相槌を打ちました。
ママは亡くなっても、それでもその事実を受け止めて幸せに生きていた二人には泥棒の気持ちなんて分かりません。わざと他人を悲しませようとする人の気持なんて。
だけどその上で、ミコナはフカが泥棒に噛み付こうとしたのを止めました。だって、フカのとても鋭い牙で噛み付かれたら大変な怪我をしてしまうのが分かったから。
いくら泥棒が相手でも自分の発明品が大怪我させたらハカセにも迷惑がかかってしまいます。
ミコナはそれを心配したのでした。